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【サタデープラス】インド版「忍者ハットリくん」逆輸入でござる

2015年2月7日15時0分  スポーツ報知

 80年代に放送された藤子不二雄(A)さんの代表作「忍者ハットリくん」が2006年からインドに進出し、爆発的な人気を呼んでいる。インドの子供たちは「ニンニン」と連呼しながら忍者ごっこに夢中だ。12年からは25年ぶりの新作も制作された。インド生まれの「NINJA HATTORI」は、物語の世界観やキャラクター設定は原作に忠実に作られ、クリケットや停電などインド人に親しみのあるエピソードを取り入れ、日本への逆輸入にも成功した。(有野 博幸)

 山を飛び、谷を越え、海も越えてインドに進出したハットリくん。06年から米バイアコム系列の子供向けケーブルテレビチャンネル「ニコロデオン インディア」で放送を開始すると大人気となり、今ではナンバーワン人気アニメとなっている。

 インド中の子供たちにはハットリくんの口癖の「ニンニン」が流行語となっている。そもそも縁もゆかりもないインドになぜ進出したのか? テレビ朝日総合編成局の水谷圭さん=写真=に聞いた。

 「日本国内では少子高齢化の影響でアニメ市場が縮小しています。業績を上げるには視聴者層を広げるか、市場を広げるしかない。そこで、15歳以下の人口が世界一の3・7億人、総人口でも2030年には中国を抜くと予想されるインドに注目しました。ご存じの通り、映画業界が盛んでエンターテインメントに理解のある国民性もあります」

 ではなぜ、これほどインド人に受け入れられたのか?

 「インドではアメリカのアニメに出てくるような筋骨隆々のスーパーヒーローはあまりウケません。国民性として、ハットリくんのように、さりげなく人助けをする日本人の奥ゆかしさに共感するようです。インドは大家族でお茶の間を囲む文化なので、ほのぼのとしたストーリーが好まれます」

 当初は1981~87年に日本国内で放送していた旧作を06年からヒンディー語など現地の言語に吹き替えて放送し、大ヒット。続編制作の要望が寄せられるようになった。10年からテレビ朝日のスタッフがインドを訪問し12年5月18日、インド版ハットリくん「NINJA HATTORI」がスタートした。作品を通じて、日本文化にも関心が高まっている。

 25年ぶりの新作を制作するにあたり、現地のスタッフからは「原作の世界観を大事にしてほしい」と強く要望された。というのも、ハットリくんは80年代の日本を舞台に、少年忍者と子供たちの交流を描いた物語。当時の子供たちの感覚と現在のインド人の志向が見事にマッチするという。

 「現在、日本の子供たちはゲームに夢中です。でも、インドの子供たちが欲しいのは自転車や腕時計なんです」と水谷さん。「純粋に子供たちに喜んでもらおう」とアニメ制作の原点に立ち返り、インド版はシナリオ、絵コンテを日本のテレビ朝日、シンエイ動画が手がけ、映像制作はインドの制作会社が請け負っている。かつて「巨人の星」がインド文化を積極的に取り入れてリメイクされたが、世界観が損なわれ、すぐ放送終了になった事例を反面教師とした。

 インド版では、キャラクター設定はそのままだが、現地で人気スポーツのクリケットや日常的に起きる停電などをエピソードに取り入れている。映像制作に関しても、80年代のようなセル画ではなくflashを使用したCGアニメーションだが、違和感なく見られるクオリティーを維持。街中にある看板の漢字が反転したり、食事の場面で箸の持ち方が違うなどのミスは日本のスタッフがチェックしている。

 13年5月からは日本国内にインド版が逆輸入され、アニメ専門チャンネル「アニマックス」で放送されている。今月は月曜・午後7時、3月7日からは土曜・朝7時半からの放送だ。昨年7月には日本語とヒンディー語が収録されたDVDが発売され、テレビ朝日の地上波でも放送されるなど、日本での評価も高い。

 アニメーターはインドでは花形の職業。新しい職種に関しては、身分制度「カースト制」が適用されず、誰もが希望できるという利点もある。これまでディズニーやドリームワークスなど米国企業の作品を手がけてきたアニメーターたちは「ハットリくんはインドの子供たちに大人気だから、やりがいがあります」と充実感にあふれている。

 インド版「忍者ハットリくん」について、杉並アニメーションミュージアムの鈴木伸一館長(81)は「キャラクターは藤子不二雄(A)さんが生み出したハットリくんそのもの。間違いない」と合格点を出した。

 鈴木館長は手塚治虫さん、赤塚不二夫さんら多くの漫画家が生活した「トキワ荘」で漫画を執筆し、その後はアニメーターとして活躍。「オバケのQ太郎」に登場する「ラーメン大好き小池さん」のモデルとなった人物だ。藤子・F・不二雄さん、藤子不二雄(A)さんの作品も制作に携わっている。オバQ以外の作品にも登場しており、「―ハットリくん」では先生役だ。

 80年代に自らも制作に携わったハットリくんが海外でも受け入れられている現状には「非常にうれしいこと」と歓迎。アニメ化に尽力した当時を振り返り、「ケムマキの弟子に猫の影千代がいるから、『ハットリくんにもいた方がいい』とアドバイスしたんですよ。それで誕生したのが、しし丸です」と裏話も明かした。

 日本アニメの完成度の高さについては「漫画家同士がしのぎを削り、編集者にしごかれて鍛えられているのが原点」と解説。「もっと世界に通用するアニメが登場してほしい」とメッセージを送った。実際にラーメンが好きなのか尋ねると「大好きです。麺類はうどん、そば、スパゲティも好きですよ」と笑った。

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