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 作家の三島由紀夫(1925~70)が、1964年の東京五輪を取材した際のノート1冊が見つかった。「決定版三島由紀夫全集」(新潮社刊)には未収録で、関係者以外には存在も知られていなかった。身体表現への情熱とともに、三島作品の華麗な文体や思想からは意外なほど「丹念な記録者」に徹していた様子がうかがわれる。

 90年代半ば、山梨県山中湖村が遺族から入手した未整理の資料にまぎれていた。2014年春ごろ、佐藤秀明・近畿大学教授らが確認、原文全体を刊行する翻刻作業を進めてきた。B5判大の市販ノートに黒油性フェルトペンで「Olympic」などと表書きがある。1964年10月10日から24日まで、開会式、ボクシング、重量挙げ、水泳、陸上競技、男子体操、女子バレーボール、閉会式などの様子が58ページにわたり克明に記録されている。イラストなども交えている。

 三島は毎日、報知、朝日各新聞の特派記者として五輪を取材。新聞に掲載された文章は全集に収録されたが、ノートには新聞で触れていない箇所もある。