(2015年3月20日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
3月17日の総選挙投開票の前日にボディーガードに囲まれて東エルサレムに近い入植地ハルホマを訪問したイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相〔AFPBB News〕
激しい戦いとなったイスラエルの総選挙は、不人気な首相が連続3期目の任期を獲得するうえで不安を煽る政治がそれなりに奏功することを裏付けたように見える。だが、ベンヤミン・ネタニヤフ氏の勝利は大きな代償を伴う。
今回の勝利はすでに、明らかに焦土作戦の勝利だ。ネタニヤフ氏はこの作戦において、イスラエルと外国をつなぐ橋を次々と燃やし、極右の仲間を出し抜いてきた。
さらに、イスラエルがその領土を占領しているパレスチナ人と解決策を交渉するかもしれないという残された希望を打ち砕き、すでに疎外されているイスラエル国内の少数派アラブ人にイスラエル市民以下の存在という汚名を着せた。
選挙前の最後の世論調査でアイザック・ヘルツォグ氏率いる労働党主導の野党連合の後塵を拝していたネタニヤフ氏は、終盤戦で扇動的な戦いに着手。自身が率いる右派「リクード」党の支持基盤を刺激し、超国家主義者と宗教右派のライバルから票を吸い上げた。実に驚くべきパフォーマンスだった。
扇動的な戦い
ネタニヤフ氏は、3月3日に共和党が多数を占める米議会で行った挑発的な演説を選挙戦の柱に据えた。演説はバラク・オバマ米大統領を激怒させ、概ねイスラエルに好意的な民主党議員約60人のボイコットを招きながら、ネタニヤフ氏を称賛する共和党議員に対し、イランの核開発計画が核兵器を生まないことを目的とした微妙な核協議を阻止するよう呼びかけた。
共和党上院議員らは期待通りに、イランの最高指導者ハメネイ師に書簡を送り、オバマ大統領と行うどんな取引も「ペンの一筆で」覆せると断じた。