日中韓外相会談が3年ぶりに開かれた。一時は途絶状態にあった日本と中韓の対話が、外相レベルを第一歩として前進したことを歓迎したい。

 もともとは07年から毎年開かれていた。それが、尖閣諸島の国有化問題で中国が反発して中断していた。流れを変えたのは昨秋の日中首脳会談である。

 以来、少しずつ各分野での対話も動き始めた。アジアの主要3国の交流が、政治指導者の対立で滞る異常事態は、ここらで打ち止めとしてもらいたい。

 今回の成果を踏まえ、3カ国首脳会談と日韓首脳会談の早期実現へとつなげ、対話ルートの完全正常化を図るべきだ。

 戦後70年を迎えた今年は歴史認識問題への対処が避けられない。会談後の共同報道発表文では「歴史を直視し、未来に向かう」との文言が盛り込まれた。

 歴史問題は本来、日本人自身が自国の歩みをどう考え、今後の鑑(かがみ)とするかが問われる問題である。とりわけ20世紀の侵略戦争、植民地支配という過去への反省は、決して踏み外してはならない戦後日本の礎である。

 この70年間積み上げた平和主義の蓄積こそ、日本が世界に誇るべき実績であり、今後のアジアと世界の安定・繁栄への貢献の道もその延長線上にある。安倍政権は、その歴史の重みを忘れるべきではない。

 一方、中韓も、3カ国で協力を進める場で過剰に歴史を持ち出すのは非生産的であり、そろそろ終止符を打つべきだ。中国の王毅(ワンイー)外相は歴史問題の発言に長時間を費やしたと伝えられるが、その執着ぶりは、関係進展のためというより、歴史を国際政治の具にしようとする不毛な意図が疑われる。

 東アジアを見れば、中国自身の行動に由来する現在進行中の問題が多くある。この四半世紀、軍事費をほぼ毎年2桁台の伸び率で拡大するのはなぜか。近海での強引な振る舞いと併せ、きちんと説明することが当然の責務であり、この3カ国でも率直に論じるべきテーマだ。

 日中韓の対話が滞った間に、これまで大きな存在感があった米国と、成長を続ける中国との間の溝は一層深まってきた感がある。日韓は、そのはざまで新たな秩序を探る立場にある。

 安全保障だけでなく、アジア域内の貿易、インフラ開発、災害・貧困対策など、日中韓が力を合わせるべき問題は幅広い。アジアを含む地球規模の安定と発展がなければ、3カ国の未来も危うい。その共通認識のもと、首脳レベルの政治対話を速やかに再開してもらいたい。