北陸新幹線、京都に危機感 開業1週間、観光競争が激化
東京-金沢を2時間台で直結する北陸新幹線が開業してから、21日で1週間を迎えた。北陸の旅行商品の申し込みが急増するなど滑り出しは好調のようで、東京都内の大学で北陸の志願者がさっそく増加した所もある。一方、観光や大学の学生確保に影響が出るとの懸念もあった京都では今のところ大きな影響はみられないものの、今後、競争が激化するのは必至だ。
東京―金沢は上越新幹線と特急で約4時間かかっていたが、2時間半に短縮。これを機に北陸が一気に注目を集め、JR東日本の冨田哲郎社長は「現在、年間500万人とされる首都圏と北陸の流動を倍にしたい」と意気込む。東京ではテレビに特集やCMが大量に流れ、沿線自治体の物産イベントや書店の特設コーナーもにぎわっている。
首都圏発の北陸旅行商品の4~6月の申込数は、JTB、日本旅行とも前年比5倍。北陸から東京方面も好調で、日本旅行の担当者は「金沢支店には『祖父母から孫まで三世代で北陸新幹線に乗りたい』という申し込みが多い。北陸の方は何十年も待ち望んだ新幹線で、高揚感が伝わってくる」とする。
開業後初の入学者を決める本年度の入試を見据え、昨夏の高校訪問数を例年から倍増させた東洋大(東京都文京区)では、富山、石川、福井の3県からの志願者数が740人と前年度の500人から大きく伸びたという。加藤建二入試部長は「高校生の視線が関西から少し東京に向いた」と話し、今後、高校への訪問を強化する構えだ。
一方の京都。「観光客を奪われかねない」と旅行業者などから不安の声も出ていたが、JTBなどによると、京都を含む今春の関西への旅行予約は、円安による国内旅行の好調やユニバーサル・スタジオ・ジャパン人気もあり、前年同時期に比べ1・5倍超という。
ただ危機感も強く、JR東海は京都の社寺や名所を取り上げる「そうだ 京都、行こう。」キャンペーンで、今春は従来のように1カ所だけではなく過去に人気があった6カ所の名所も合わせて紹介。子会社のJR東海ツアーズの東京支店は京都市に観光PRの場所提供を申し出た。
龍谷大の本年度の志願者数は前年度に比べ9%増。北陸3県出身の学部生数が1千人を超える立命館大も2%増で、北陸での高校訪問を強化した効果があった。立命館大入学センターの宮下明大次長は「延伸の影響は現時点ではないが、首都圏優位が進んでいかないように、来年度も早い時期から北陸の学生確保に注力する」と気を引き締める。
【 2015年03月22日 12時00分 】