(英エコノミスト誌 2015年3月21日号)
イスラム国はまだテロを広めているが、その弱点が明らかになりつつある。
イラク・アンバル州で車の上に立って武器を掲げるイスラム過激派組織ISの戦闘員〔AFPBB News〕
イスラム国(IS)のジハード(聖戦)主義者たちが昨年6月にモスルを制圧し、イラク軍が逃走した時、ISは世界で最も危険なテロ組織になった。シリアとイラク北西部から拡張を始めたISは南へ向かって猛進し、もう少しでバグダッドを落とすところまで肉薄した。男性の捕虜をむごたらしい動画のなかで殺害し、女性の捕虜を奴隷にした。
ナイジェリアからリビア、アフガニスタンに至るまで、各地の過激派グループがISに忠誠を誓った。ISに心酔する者たちが、欧州の都市で罪のない市民を攻撃した。
3月18日にチュニジアで起きた観光客を狙った攻撃では、少なくとも19人が死亡した(ただし、現時点では犯人は明らかになっていない)。
ISの脅威から、これまでは考えられなかった同盟関係が生まれている。イラクでは、米国が空爆を実施する一方で、イランが地上戦を支援している。
カリフ制イスラム国家の復活を謳ったIS
本誌(英エコノミスト)の概説記事でも触れているように、ISは、母体であるアルカイダも含め、これまでのジハード主義組織とは異なる。敵の扱いの残酷さや、プロパガンダを広める能力は他に類を見ない。だが、他の過激派組織と一番異なるのは、カリフ制イスラム国家を復活させたと主張している点だ。
すべてのイスラム教徒を統治する単一国家の歴史はイスラム教の最初期にまでさかのぼり、このカリフ制はオスマン帝国崩壊後の1924年に近代トルコにより廃止された。そうした単一国家の復活は、彼らの目から見れば、繁栄していたアラブ社会の衰退の責任を負う外国人やアラブの支配者たちによる数十年間の「屈辱」を消し去ることを意味した。