坪倉さん、「ガラスバッジで1mSv 以下は安全」と勘違いしていませんか?
2015.2.10
放射線被ばくを学習する会
空間線量0.5〜0.6μSv/h 以下であれば、もう既に長期的な目標の年間追加1mSv 以下を達成している。誤解を恐れずもっと言えば、空間線量0.5〜0.6μSv/h であれば、長期的目標に照らし合わせてもそれ以上除染しなくて良いのでは? という主張がなしえます。
と述べています。0.6μSv/h と言えば年間約5.3mSv です。坪倉さんはとんだ勘違い?をしているようです。
1mSv の被ばくでも発がん率が増える
放射線被ばくに「安全な量」はありません。被ばく線量に比例してがんが増えます。昨年末に発表された環境省・専門家会議(長瀧会議)の「中間取りまとめ」も、これを認めています。
100mSv 以下では、放射線によってがんの発症が増加したとしても、他の要因による発がんの統計的変動に隠れてしまうために放射線による発がんリスクの増加を疫学的に証明することは難しい
などという意見もありますが、これは間違いです。
上の図は、CT に被ばくした約68 万人の子どもと、CT 被ばくしていない1,100 万人の子どもの発がん率とを比べたオーストラリアの研究結果です。CT 被ばくの回数が増えるごとに発がん率が大きくなっています。1回のCT で約4.5mSv 被ばくし発がん率が16%増えますから、1mSv 被ばくでは約3.5%増える計算になります。
100mSv 以下の医療被ばくでがんが増えるというデータは他にもたくさんあります。自然放射能が1mSv 増えると子どもの白血病が12%増えるというイギリスの報告もあります。「安全な被ばく量」はないのですから、被ばく線量はできるだけ低くしなければなりません。
被ばく線量は24 時間屋外にいる前提で計るもの
住民の被ばく線量の測定は、24 時間外にいる場合に受ける線量を計ることになっています。その場で人が受け得る最大の被ばく線量を測定しているわけです。その線量とは空間線量です。
実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則の規定に基づく線量限度等を定める告示
(外部放射線に係る線量等の算定)
第十一条 第三項第一号に規定する外部放射線に係る線量は実効線量とし・・・
2項一 外部被ばくによる実効線量は、一センチメートル線量当量とすること
(筆者注)一センチメートル線量当量とは、サーベイメーターで計る空間線量のことです。
サーベイメーター
リアルタイム線量計
サーベイメーターや、福島に設置されたリアルタイム線量計は、1センチメートル線量当量を表示するように設計されています。表示されたμSv/h 単位の数字を
24 時間×365 時間=8,760
倍すれば、その地点に1年間いたときの被ばく線量になります。だからこそ、サーベイメーターで計った空間線量をもとに年間被ばく線量を考えてきたのです。
政府の被ばく線量計算式は4割過小評価の違法行為
ところが政府は福島原発事故後、住民の被ばく線量を計算するのに、屋外にいるのは1日8時間だけ、屋内では放射線の6 割が遮蔽されるという仮定に基づいて被ばく線量を計算し始めました。この方式だと、
8時間×1+16時間×0.4=14.4時間
となり、被ばく量は
14.4時間/24時間=0.6
で、6 がけ。4 も過小評価されてしまいます。
私たちがベクレル、シーベルトって何?と戸惑っている間に、政府は原子炉規制法に違反して被ばく線量を4割も過小評価し始めたのです。福島県民健康調査でも、空間線量に0.6 をかけて外部被ばく線量を4 割過小評価しています。
ガラスバッジは5分の1に過小評価
ガラスバッジで線量を計ると、図のように空間線量の約5 分の1になると報告されています。
実に「8 割引」です。
ガラスバッジは被ばく作業に従事する作業者が前から来る放射線にどのくらい被ばくするかを計るためのものです。今の東日本のように地面全体が放射性物質で汚染されている状況では放射線は四方八方から来ます。ガラスバッジでは後ろから来る放射線は計れません。また、屋内にいれば、被ばく線量は少なくなります。ガラスバッジを屋内に置きっ放しにしている人が多いことも指摘されています。
空間線量1mSv が法定限度
「ガラスバッジで1mSv 以下なら安全」なのではありません。被ばく線量はできるだけ低く抑えなければなりません。原子炉規制法により、原発の管理区域の外側では空間線量1mSv を超えてはならないと規定されています(実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則の規定に基づく線量限度等を定める告示 第三条)。ガラスバッジで1mSv は空間線量で5mSv です。法定の被ばく限度を5 倍も引き上げることは違法行為です。
安倍首相は憲法の解釈を勝手に変えましたが、坪倉さん、勝手に法律を変えないでください。
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