卸売市場の改革に向けた報告書を市場関係者や学者が今月まとめた。これを踏まえ政府は新たな市場整備計画をつくる。来年11月には東京・築地市場が移転し、豊洲新市場として開業する。流通の変化に追いついていない卸売市場を思い切って改革すべきだ。
産地からさまざまな食品を集め公正な価格を形成するのが、卸売市場の役割だ。その重要性は今も変わらない。
ただ、食品の取引では大規模なスーパーや外食産業が買い手として台頭し、産地との直接契約が増えた。食品流通量のうち卸売市場を経由する割合は2011年度時点で水産物が56%、食肉は9%に低下した。こうした変化に比べ卸売市場の改革は遅れている。
政府は市場再編などを促すために04年に卸売市場法を改正し、04年に86あった中央卸売市場は67に減った。ところが市場の取引額は03年度から12年度までに2割強も減少し、卸売市場を担う卸や仲卸会社の多くは赤字だ。
政府は10年にまとめた前回の整備計画で、全国の中央卸売市場を拠点市場と、それを補完する市場に役割を分けて再編を進めようとした。しかし今回の報告書が指摘しているように、整備計画が想定する市場間のネットワーク作りなどは進んでいない。
トラックなどの輸送網が整備され、中核市場に全国の食品が集まるようになった変化に合わせ、市場再編を大胆に進めるべきだ。
豊洲市場が強化する保冷施設なども重要だが、取引手法などの制度改革も欠かせない。卸売市場でせりや入札にかけられる食品の比率は年々低下している。食品の種類によってはネット取引による価格形成なども検討すべきだ。
04年の法改正は卸売手数料の設定を弾力化したが、現状はほぼ横並びのままだ。市場の魅力を取り戻すには取引コストの低減が欠かせない。卸売市場の管理運営も民間企業への委託などで合理化を進め、卸や仲卸の負担軽減につなげてもらいたい。