歴史認識や領土をめぐる対立は根深い。しかし、それが障害となって会談すらできないという異常な事態からは、ひとまず抜け出そうとしている。
約3年ぶりに3カ国の外相会談を開いた日本と中国、韓国の関係は、こんな状況といえるだろう。関係の修復にはなお遠いが、外相が一堂に会する枠組みが復活したことは成果といえる。
会談では「最も早期で都合のよい時期」に、3カ国の首脳会談の実現をめざすことで一致した。今年が戦後70年であることを考えると、首脳会談は夏までに開くことが望ましい。8月以降には歴史問題をめぐるさまざまな動きが想定されるからだ。
8月には安倍晋三首相が戦後70年の談話を発表する。9月3日には中国が「抗日戦争勝利」を祝う大式典を開く。中国は同時に、大がかりな軍事パレードも予定している。こうした節目では、それぞれのナショナリズムが刺激され、緊張が高まりかねない。
それは日本にとってはもちろん、内政の安定に努める中韓にも望ましくないはずだ。
だとすれば、夏までに首脳会談を開き、3カ国の緊張や不信感を少しでも和らげてから一連の行事を迎えるべきだ。歴史問題で安倍首相は慎重に対応し、積極的に地ならしに努めてもらいたい。中韓にも歩み寄りを促したい。
歴史問題をすぐに解決できる即効薬はない。日中、日韓、3カ国のいずれの外相会談でも、この問題が提起された。日本と中韓には領土の対立も横たわっている。
では、どうすればよいか。大事なことは、互いに恩恵を受けやすい経済や環境、テロ・サイバー対策などの協力を進め「歴史・領土」対立が関係全体に占める比重を減らしていくことだ。若者や文化の交流もその柱といえる。
その意味で、3カ国が今回まとめた共同文書はよい足場になる。日中韓自由貿易協定(FTA)の早期妥結や、防災、環境分野の協力をかかげた。テロ対策、アフリカ、中東政策をめぐる協議の再開や新設も決まった。
中国は韓国との個別の会談で、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加を促したという。中国には韓国を自分の側に引き寄せ、日米との間にくさびを打ちたい思惑もあるだろう。日中韓に合わせ、日米韓の政策の擦り合わせも重要だ。