政府が国家戦略特区の第2弾となる「地方創生特区」として、秋田県仙北市、仙台市、愛知県の3カ所を指定した。これで東京圏、関西圏などを加えた計9カ所の特区が生まれる。規制改革をさらに加速すべきだ。
国家戦略特区は、医療、雇用、農業などの分野で、既得権益に守られた「岩盤規制」を地域限定で緩和するしくみだ。
仙北市は、医療ツーリズムの一環として、外国人医師が日本人患者向けに診療所でも働けるようにする。無人飛行機(ドローン)の実証実験もする。
仙台市では、起業の受け皿となるNPO法人の設立手続きを簡単にできるようになる。愛知県は、自動車の自動走行の実証実験などをしやすくする。
政府が東北の2カ所を特区に選んだのは、東日本大震災からの復興を後押しするねらいもあったとみられる。特に仙台市は東北全体の活性化をけん引してほしい。
昨年の衆院解散のあおりで国家戦略特区法改正案は廃案になった。都市公園内での保育所設置を解禁するといった新たな改革の内容も加え、政府は今国会に法案を再提出する。
だが、その背後では、むしろ突き崩せなかった岩盤規制の存在が鮮明になった。その象徴が、農業への株式会社の参入だ。
農水省が農協改革に忙殺された面はあるにせよ、昨年1月に安倍晋三首相が今後2年で岩盤規制をすべて打破するとした約束との整合性を問われかねない事態だ。
地域限定の美容師を創設したり外国人美容師を解禁したりする案は見送られた。タクシー規制の緩和も断念に追い込まれた。
安倍政権の成長戦略にとって、規制改革は一丁目一番地ではなかったか。規制改革は民間の技術革新や競争を促し、潜在成長率を高める王道だ。
岩盤規制の改革は道半ばだ。首相は業界や族議員の抵抗にひるむことなく、強い決意で改革の先頭に立ち続けてほしい。