関西電力や九州電力など4社が、運転開始から40年前後となる原子力発電所5基の廃炉を決めた。東京電力福島第1原発の事故後、政府は原発の運転期間を原則40年と定めた。この決まりに基づいて運転を終える初の例となる。
どの原発を残し、どれをやめるのか。原発は選別の時代に入った。残す原発を国民の理解を得て使い続けるためにも、役割を終えた古い原発は確実に廃炉にしていくことが重要だ。
関電は美浜1、2号(福井県)、九電は玄海1号(佐賀県)の廃炉を決めた。中国電力の島根1号(島根県)、日本原子力発電の敦賀1号(福井県)の廃炉も決まった。この結果、日本の原発は48基から43基に減る。
運転期間が40年を超える原発は、新しい規制基準を満たせば一度に限って最長20年の延長が可能だ。ただ、それには安全性を高める工事に多額の投資が必要になる。対象となる5基は投資に見合う利益が得られないと判断した。
廃炉は完了までに20~30年かかる。廃炉を選ぶ電力会社は今後も出てくるだろう。これからは複数の原発で並行して作業を進める時代に入る。必要となる人材を育て、技術を共有する仕組みを整えることが大切だ。
対応を急がねばならない課題も多い。まず、原発を解体して撤去する際に出る放射性廃棄物の処分だ。原子炉の中核部分など比較的放射能レベルの高い廃棄物は解体の後、一定の深さの地中へ埋めることが適当とされている。
そのための規制基準は原子力規制委員会が策定に取りかかったところだ。処分場の確保もめどがたっていない。解体の後に残る使用済み核燃料を保管する場所も必要だ。これらに道筋をつけない限り廃炉は進まない。処分場選びは電力会社だけでは限界がある。国全体で対処にあたるべきだ。
自治体への支援のあり方も見直す時だ。原発が立地する地域では原発を中心とする産業構造ができあがっている。国からの交付金や固定資産税収入など、歳入に占める原発関連の比率が高い自治体も少なくない。
廃炉後に原発に依存しない地域づくりは本来、自治体が取り組むべき課題だ。しかし、産業構造を急速に変えるのは難しい。廃炉の影響を緩和し、新たな産業の育成や雇用をつくるための支援策も検討する必要があるだろう。