日めくりプロ野球09年9月
【9月24日】1992年(平4) ヤクルト奇跡のVへ 荒木大輔1541日ぶりの復活!
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復活登板を果たした荒木。甲子園5度出場、ドラフト1位で入団も通算180試合登板、39勝49敗2セーブ
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【ヤクルト5−4広島】右手の震えが止まらなかった。それでもサインにうなずくと、白球を中指と人差し指の間にはさんだ。カウント2−3からの6球目。130キロのフォークボールが外角へ美しい軌道を描いてストンと落ちると、広島の4番江藤智三塁手のバットは空を切った。
興奮状態のスタジアム。歓喜とため息が入り混じった「ウォー」という観客の雄たけびは最高潮に達し、その中でマウンド上の背番号11、ヤクルト・荒木大輔投手はまだ震えが止まらない右腕で小さくガッツポーズを作った。「ゆっくり歩いてベンチに帰ろうと思ったのに」気がつくと荒木は新人投手のように全力疾走でベンチに戻っていた。
残り13試合で首位阪神と2ゲーム差。2位ヤクルトが1978年初優勝以来、15年ぶりの優勝を果たすには4位広島との試合を落とすわけにはいかなかった。1点ビハインドの7回2死一塁、右の江藤を迎え、野村克也監督は左腕の角盈男投手からセオリー通り右へスイッチすることを考えたが、「度胸試しをする場面じゃ本当はなかったが、そんな気持ちになったんだ。何かが変わるかと思って」とこの日軍登録されたばかりの荒木を起用した。
88年7月6日、大洋14回戦(神宮)で打者5人に投げただけでひじ痛を訴えて降板して以来、1541日ぶり。2度の手術、持病の腰痛からヘルニアを患っての復活登板は、1点もやれない、いきなりシビれる場面だった。「あんな場面で使ってもらって、手が震えて仕方がなかった。よくストライクが入ったと思って…。“ああ、帰ってこられたなぁ”と思いながら、マウンドに行った。人が経験しないようなことたくさんありましたから」。甲子園のアイドルとして活躍した早稲田実業時代、荒木は神宮球場のマウンドから全国へと巣立っていった。再スタートを切るには最高の場所だった。
極度の緊張と再び真剣勝負の場に戻ってこられた感激が交差しながらの6球。初めてバッテリーを組んだ古田敦也捕手は、登板前荒木に気持ちを伝えていた。「荒木さんの組み立てで投げてください。僕はしっかり捕るだけです」。試合の勝敗も大切だが、4年間苦しんできた右腕に思い切り悔いのないように投げてもらいたいという本心から出た言葉だった。
自分の意思で投げたフォークボールで相手の主砲を三振に仕留めた。その背中をヤクルトナイン全員が見ていた。球場の盛り上がり以上に、その堂々たる復活劇に燃えた。一番燃えたのは復活のボールを直接受けた男だった。
毎回安打を放ちながら決定打の出なかったヤクルトだが、7回裏1死一塁で3番の古田。「荒木さんが救世主と信じて打席に入った」4打席目、望月透通投手にカウント2−0と追い込まれながら、3球目の内角ストレートを叩いた打球は左翼スタンドへ一直線。起死回生の27号逆転2点本塁打が飛び出した。
8回から後を受けたストッパーの岡林洋一投手も荒木の気迫の投球が乗り移ったかのような渾身の投球。2回を無安打4三振で締めくくり、首位攻防戦を前に阪神との差を1・5に縮めた。
荒木復活の夜からヤクルトは勢いづいた。10月10日の甲子園まで、対阪神5連勝。終盤のデッドヒートを勝ち残り、優勝した。その試合で先発したのも荒木。残り10試合強のところで参戦した右腕は古田が言うとおりまさに救世主だった。
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