ゆうちょ銀:貯金限度額1000万円の引き上げ検討開始

毎日新聞 2015年03月03日 18時48分(最終更新 03月03日 21時08分)

 ◇自民 かんぽ生命の保険加入限度額1300万円も

 自民党は3日、「郵政事業に関する特命委員会」の初会合を開き、ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の限度額引き上げに向けた検討を始めた。今国会中にも方向性をまとめる方針だ。利用者の利便性や収益力の向上を図る狙いだが、民間の金融機関からは「民業圧迫」との批判が根強く、実現のハードルは高そうだ。

 ゆうちょ銀行の貯金限度額は1000万円、かんぽ生命の保険加入限度額は1300万円だが、自民党は昨年末の衆院選で、限度額引き上げを検討すると公約している。今秋以降に計画する株式上場に向けて企業価値を高めるとともに、春の統一地方選や来夏の参院選をにらみ、集票力が期待できる郵政関連団体にアピールする思惑もあるとみられる。委員会では、出席議員から「地方の高齢者らは、限度額を超えた分を預ける金融機関がなくて困っている」などの意見が相次いだ。

 限度額引き上げには政令改正などの手続きが必要で、自民党は金融庁や総務省、銀行などから意見聴取して議論をまとめる。しかし、郵便局という潤沢なネットワークを持ち、政府の信用で補完されたゆうちょ銀行やかんぽ生命を優遇すれば、資金が民間金融機関からシフトしかねないため、銀行などは強く反対している。政府内でも、民営化が進展しない間の事業拡大には慎重論が根強く、競争条件などを十分に検討する見通しだ。【横山三加子】

 ◇日本郵政グループの上場計画

 持ち株会社の日本郵政と、傘下のゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の金融2社は、今秋以降、3社同時で東京証券取引所に上場することを計画している。1987年のNTTに匹敵する大型上場になる見通し。現在は政府が日本郵政株を全額保有しており、新規事業には政府の認可が必要だが、金融2社に対する日本郵政の出資比率が50%を下回れば届け出制に緩和される。経営の自由度が高まるため、ゆうちょ銀行による住宅ローン参入など、事業の幅を広げることが容易になる。一方、改正郵政民営化法は、日本郵政が金融2社株をすべて売却するよう定めているが、日本郵政は、保有比率が50%程度になるまで複数に分けて売却する方針しか示しておらず、全株売却の道筋は見えない。

最新写真特集