UAEでの韓国企業連合の受注は「実績づくりの無理な安値受注ではないか」という見方も一部にある。
しかし、韓国の原子力業界団体の副会長、具ハン謨は「受注価格は十分な利潤を確保できる水準だ」と強く反論する。
工期の短縮、安い人件費、高い稼働率によって全体のコストを抑え、競争力を大幅にアップさせたという。
UAEの原発の建設工期は54カ月を想定。日本よりは長いが「米国やロシアよりは短い水準」と韓国政府は主張する。人件費は、日米やフランスより安い。
総合的にみると「日米などと比べ技術面ではそれほど劣らない原発を、安く造れる」との説明だ。
原発だけでなく、ビルや工場の建設などでも韓国は中東で受注ラッシュを続ける。
UAEでは「日本企業は、対韓国で1勝9敗の印象」(日本の外交官)という。
サムスン電子やLG電子などの韓国の電機大手が、新興国市場で、日本企業を上回る浸透ぶりをみせているのと同じような構図である。
韓国が原発輸出に動き始めたのは2000年代初めごろ。韓国国内で、世界最高水準の90%台の稼働率を誇り、大事故もなく、技術力への自信が芽生えた。
だが、中国や南アフリカ、ベトナムといった国への売り込みには失敗した。核心となる技術が不足していたのに加え、輸出の実績がないためだった。
1978年から稼働した韓国の原発は、米国の技術が元だ。基幹技術の一部は今も外国企業に頼る。UAEに納める原発の基幹技術は東芝傘下の米ウェスチングハウスのものだ。基幹技術を持つことを条件にした中国や南アでは門前払いだった。
一方で、事業全般への協力やノウハウの伝授を求めたUAEは、実績を作りたい韓国には願ってもない機会だった。韓国知識経済省の原発輸出振興課長、姜敬聲は「政府と産業界が心を一つにしての総力戦だった」と振り返る。
「2030年までに原発80基を輸出」との目標を掲げる韓国の次の狙いは、トルコだ。黒海沿岸で進める原発建設計画で、政府間協力の覚書を結んだ。知識経済省は「早ければ来年末にも受注契約を結べる」と自信をみせる。
まずは海外での実績を作るという「韓国流」は成功するのか。米建設会社ベクテル出身で、発電所建設の助言などで著名な米弁護士事務所に所属するポール・マーフィーは「韓国の手法が(黒字を生み出し)本当にうまくいくかどうかは、UAE原発が動き出す7年後まで分からない。価格勝負の提案を、何回もやれる体力があるかどうかも疑問」と話す。
(文中敬称略)