ここから本文です

「衣装は自作…」愛犬と乗り越えたキンタロー。の下積み時代

日刊ゲンダイ 3月22日(日)9時26分配信

 モノマネ女芸人のキンタロー。さん(33)はAKB48のマネでブレークするまでは、夜の仕事を掛け持ちする日々。飼い犬よりも貧しい食生活を送っていた……。

 一念発起してOLをやめ、芸人を目指して上京したのが29歳と遅かったんです。
 東京にある松竹芸能のスクールに入ったんですが、驚いたのは家賃の高さ。犬と上京したので「ペット可」の安いところを探し回ったけど、5万5000円するワンルームが精いっぱい。5畳分で収納なし。地元の名古屋では、3万円でもっと広いところに住んでいました。

 当時はバイトを掛け持ちです。まずは従業員がみんな女芸人という中野のスナック。時給が1000円で、お客さんがずっといると朝8時まで営業するので、しんどかった。ネタコーナーがあるので練習になったけど、芸人がたくさん働いていて、毎晩出勤できるわけでもなかったです。

 ほかには個人経営の小さなバーのバーテン。客があまり来ないから楽でしたけど、そこも時給1000円。芸人活動で休む日もあるから、月に11万〜12万円くらいにしかならず、家賃や光熱費を払うと3万〜4万円しか残らなかったです。

 私、犬(トイプードル)を溺愛してて、「私の夢のために、こんな狭い部屋に押し込めてごめんね。夜もバイトでいなくてごめんね」と通販でお取り寄せした生肉をあげていました。私は百均で買った缶詰をオカズにごはんを。シーチキンが大好きで、「シーチキンマヨネーズごはん」が多かったのを覚えています。

 節約のため、ネタの衣装は自分で作ってました。安いTシャツを買い、ミシンをレンタルして安いキレを縫い合わせる。きゃりーぱみゅぱみゅの「CANDYCANDY」って曲の服は、学芸会レベルでしたけど(笑い)。

 AKB48の衣装はドン・キホーテで宴会グッズとして2980円くらいで売ってて助かりましたね。赤いドレスと指輪と付け唇とか付いた「和田アキ子セット」も高くなかったので買いました。いつか私のネタ衣装が売られてほしいなぁと夢を持ってたけど、AKB48の宴会用衣装がそのまま「キンタローセット」みたいな感じで、名前だけ変えて販売されてました(笑い)。

 わざわざ生活のレベルを落とし、貧乏暮らしで芸人を目指してたから、「私アラサーなのにこの先、大丈夫なのか……」とちょっと不安になってましたね。その時期が一番つらかったです。独り身だし、このまま結婚もできずに芸人として日の目を見ずに年を重ね、公園でハトに餌をやるようなアラフィフ女になったらどうしようと、夜ごと悪い妄想が膨らんで。でも、「これは賭けだ。5年は頑張ってみよう!」と言い聞かせて頑張りました。

 ありがたいことに事務所に所属した2012年の年末に、前田敦子さんのモノマネが大当たりして、それ以降、仕事をたくさんいただけるようになり、「この道で合ってたんだ」と一安心できました。

「エンタの神様」などいろんな番組に出られるようになったころは、部屋のランクも徐々に上がっていき、「つらい時も一緒にいて支えてくれてありがとう!」と思わず犬を抱きしめました(笑い)。

 絆がさらに深まり、何も言わずに私についてきてくれた彼女(犬)を、売れた後も大切にしようと思いました。男の芸人が売れた時に、苦労をともにした彼女と結婚する心境が分かりましたね(笑い)。

 部屋の家賃は今、15万円です。「都心じゃそのくらい払ってる人がいっぱいいるから、ぜいたくじゃないよ」と友だちには言われるけど、やっぱり高すぎて不安です。昔の貧乏性がまだまだ抜け切れません。

 早く養ってくれる人を見つけないと(笑い)。

(聞き手=松野大介)

▽キンタロー。(本名・田中志保) 1981年10月愛知県出身。11年からモノマネタレントとして活動。ネタ番組やバラエティーで前田敦子のマネでブレークし活躍中。

最終更新:3月22日(日)9時26分

日刊ゲンダイ