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【震災1000日】
電力政策なお視界不良 見えぬ原発再稼働、燃料費3・6兆円増
約1年前の安倍晋三政権の発足時、経済産業省幹部は「まともなエネルギー政策の議論ができるようになる」と期待感を示した。安倍政権は「2030年代の原発ゼロ」を目指した民主党政権時代とは一線を画し、11月中旬には改正電気事業法を成立するなど、電力制度の抜本的な改革へ一歩を踏み出した。
だが、政府が年内にまとめる中長期的なエネルギー政策の方向性を示す「エネルギー基本計画」では、原発を含む電源の構成比率(総発電量に占める比率)を示さない見通しだ。原発の将来的な位置づけは明確になっていない。
このため経団連の米倉弘昌会長は「電力は企業活動の血液。安定供給がなければ経済成長につながらない」と注文を付ける。
石炭や原油、LNGなど火力発電用燃料の輸入も増えている。平成25年度に電力9社(沖縄を除く)が支払う燃料費は、震災前の22年度より3兆6千億円も膨らむ見通し。安全性が確保された原発を早期に再稼働させなければ、「国富の流出」は止まらなくなる。
また、原発停止に伴う電力各社の電気料金値上げが景気回復の足かせとなる懸念もある。原発の将来像をどう描くのか。政府の“覚悟”が問われている。