福島県:全町避難自治体の一つ「職員2割うつ」判断
毎日新聞 2015年03月22日 11時00分
東京電力福島第1原発事故により全町避難を強いられた福島県のある自治体に対し、県立医科大などが実施したメンタルヘルス調査で、職員の21%が「うつ病」と判断されていたことが分かった。面談を実施した精神科医らは該当者に対し、病院での正式な診察を受けるよう促した。別の町の調査でも以前、15%との結果が出ており、東日本大震災から4年が経過しても事故の収束が見えない中、職員が過度なストレス下にあることを裏付ける結果となった。
調査は昨年10月、沿岸部にある町の全職員76人を対象に実施。精神科医らによる個別面接の結果、16人(21.1%)がうつ病と判断された。震災時から勤務を続ける44人に限ると、25%にあたる11人が該当した。「自殺の危険がある」とされた深刻なケースも7人(9.2%)いた。
厚生労働省のホームページによると、過去12カ月にうつ病を経験した人の割合は国内では1〜2%。原発事故の被災自治体で高率になった背景として、調査に当たった県立医科大の前田正治教授(災害精神医学)は、震災後の慢性的な業務増▽家族の離散▽町民らの不安や不満を受け止めざるを得ないこと−−などを挙げる。
同大などが別の被災町で昨年1月に同様の調査をしたところ、職員92人のうち15.2%がうつ病と判断された。
二つの町は、放射線量や住民帰還を巡る状況が異なり、前田教授は「復旧、復興の度合いに関わらず、避難を経験した自治体の職員は心身ともに参っている。2町だけの問題ではない」と指摘。両町には同大などから月に1回、医師らが派遣され、メンタルケアを担っている。
福島第1、第2原発の作業員のメンタルケアを担当する重村淳・防衛医大准教授は、職員の休職や退職による、残された職員への負担増を懸念。「職員を増やしたり、メンタルケアの専門医を増やしたりすることが求められる」と指摘している。
◇答えきれない苦情、負担に
「早く元の場所に戻れればなあ」。今回の調査対象になった町の総務課に所属する男性(48)はつぶやく。町によると、福島県立医科大の調査で、職員が最もつらいと感じるのは「苦情の対応」だった。