カンファまとめます。
ちょっとネタ少なめで先週からも持ち越し
てんかん偽発作 Psychogenic non-epileptic seizure:PNES
さてさて、救急診療に携わっている方であれば、若い方の失神・てんかんの鑑別で一度は悩んだことがあるかも知れません。Uptodateでは一項目まるまるPsychogenic non-epileptic seizure:PNESがあり、一度読んでみても面白いかも知れませんね。てんかん偽発作は通称で、厳密にはICD-10でも”心因性非てんかん性発作”と分類されています。
てんかんと鑑別が必要で、てんかん専門施設では全体の1-2割を占める頻度の多い病態ですが、一般的に認識されていないことも多いのが課題です。また、神経内科が扱うべきか精神科が扱うべきかもなかなか決まっておらず、neglectiveな病態になっていることも診断・治療が敬遠される誘引なのだそうです。
結局の所、病歴聴取が最も重要ですが、それ以外にはビデオモニター下脳波が診断の決め手になると言われています。
病歴について、ガイドラインから抜粋してみると、
①痙攣様運動
首の規則的・反復的な左右への横振り運動
規則的に反復する手や足の屈伸運動
→上記が意識消失を伴わずに数分以上持続。
②自動症
目的性を持った複雑な行為を一定危険継続して行う
外部の観察者からは奇異な行動とは気付かれないことも。
(ストーカー行為だったりすることも。またエピソードへの健忘もある)
③誘因
感情的に興奮するような言い争った後。
※ただし通常のてんかんでも情動発作が誘因と成り得る
④その他
発作の最中に閉眼している場合にPNESである可能性が高いという報告あり
発作中に泣き出す、発作出現に先行して閉眼・動作停止が起こることも。
✓ てんかん偽発作を知らずして、てんかんを語るなかれ・・・
Prominent ear sign
忘れた頃にやってくる再発性多発軟骨炎(Relapsing polychondritis:RP)。稀だけど、見逃すと気道狭窄から致死的になりますからね。耳はバカに出来ません。血清学的にも抗type2抗体などもありますが、原則的には病理学的な診断が最も重要です。診断基準は古典的には、McAdam's criteria(Medicine (Baltimore). 1976;55(3):193.)が用いられます。
McAdam's criteria
●両側性の耳介軟骨炎 Bilateral auricular chondritis●非びらん性・血清反応陰性・炎症性多発関節炎 Nonerosive, seronegative inflammatory polyarthritis
●鼻軟骨炎 Nasal chondritis
●眼炎症(結膜炎、角膜炎、強膜炎、上強膜炎、ぶどう膜炎) Ocular inflammation (conjunctivitis, keratitis, scleritis/episcleritis, uveitis)
●気道軟骨炎(咽頭または気道軟骨炎) Respiratory tract chondritis (laryngeal and/or tracheal cartilages)
●蝸牛あるいは前庭機能障害(神経性難聴、耳鳴、めまい) Cochlear and/or vestibular dysfunction (neurosensory hearing loss, tinnitus, and/or vertigo)
※臨床的に明らかであっても病理学的診断が必須である。
上記を受けて、Damianiの基準が1979年に提唱され、
①上記McAdam's基準の3つ以上が陽性
②陽性所見の1つ以上で確定的な病理組織所見が得られている。
③解剖学的に離れた2カ所以上で陽性で、ステロイド/ダプソン治療に反応
という基準があります。
という辺りはおさらいですね。1週間に2人も疑いが出るんじゃ仕方ない。んでもって、画像所見で参考になる所見があるよ〜とアドバイスもらいました。それが、表題のProminent ear sign。頭部MRIのDWIでのsignなんですが、着目点が違います。
論文は下記の2008年に近畿大学の先生方が提唱したものから。百聞は一見にしかずなので、まずは見てみましょう。
“Prominent ear sign” on diffusion-weighted magnetic resonance imaging in relapsing polychondritis
Radiat Med (2008) 26:438–441
まあ、この論文で ”我々が名付けた!”的な感じなので、感度・特異度もValidationもされてはおりませんが、頭部MRIを見るときにちょっと耳の辺りに注目して見るのも悪くないかも知れません。
魚骨異物 Fish bone foreign body
魚骨はしばしば出会う異物ではありますが、結構単純Xpでは難しいぜという話題。この辺りは耳鼻科医と消化器科医のコラボになるケースが多いと思いますが、耳鼻科視診で確認出来ず→消化器科内視鏡で確認出来ず・・・という流れはあります。
例えば粘膜下に潜り込んでしまった場合や咽頭腔外に埋没して穿孔や縦隔炎を起こしたりすることもある様ですね。頚部Xpもmimicで、魚骨異物でレントゲンではっきりとうつる石灰化というのは実はそれほど多くない模様です。Uptodateを確認してみても、レントゲンで写りにくい異物として、”Fish bones, chicken bones, wood, plastic, glass, thin metal objects, and food impactions”と記載されていました。
頚部X線では、甲状軟骨の石灰化が魚骨と間違えやすいので注意が必要とのことでした。結局の所、本当に疑ったらCTが有用でしょうね。
✓ 魚骨異物は単純X線では写りにくいので、本気で疑ったらCTを。