本日、行きつけの理髪店に行ってきました。おっちゃんがやってる至って普通の「街の散髪屋さん」。でも「いつもの」で通じるから楽だし、ばっちりお気に入りの髪型にしてくれるのでかれこれ10年ぐらい通ってます。ちゃんと私のイケメン具合を計算してカットしてくれるしね。
で、カット中のBGMはもちろんAMラジオ。本日は「阪神VSオリックス」のオープン戦でした。ラジオを聞くのはFMが多いので、AMを耳にするのは髪を切ってもらってる時ぐらいのものです。実況と解説の心地よい「しゃべくり」を聞きながら、5~6年前ぐらいでしょうか。ちょうどこの理髪店でモヤッとしたことを思い出しました。
それはとある土曜日。おっちゃんにチョキチョキ髪を切ってもらいながら、流れてくるAMラジオに耳を傾けていました。番組のパーソナリティーは浜村淳。ご存じですか?浜村淳さん。独特の流れるような語り口で聴くものを惹きつけるラジオパーソナリティー。関西では有名な方で、映画評論家でもあります。映画の内容を結末まで伝えてしまうことで有名で、彼の解説を聞いて映画を見る必要が無くなったことは一度や二度ではありません。
話がそれました。そんな浜村氏の声を聞きながら私の散髪も中盤戦。そこでリスナーからの投書を読み上げるコーナーに。ちょっと高齢の女性の体験談のようで、浜村氏の訥々としたしゃべりも加わり、いつしかその話に聞き入っていました。それは大体こんな話でした。
※話の内容はうろ覚えなこともあり、私の創作も大分入っていますがご了承を。
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今から○十年前の話です。当時、私は20歳。ちょっと気になる男性がいました。それは父の友人の息子さんで、私と年齢の近い「Aさん」でした。
私たち家族とAさんご家族は家族ぐるみでの付き合いがあり、Aさんとも何度もお会いする機会があったのですが、彼の朗らかな人柄と誠実な態度に、いつしか恋をしてしまったのです。
そしてAさんも、ちょっと私の自惚れが過ぎるのかもしれませんが、私のことを思ってくださっているような節がありました。幾度と無く二人で楽しい時間を過ごさせていただきましたが、当時はそんなおおっぴらに男女の恋愛をする空気が無かった時代。そして思いを伝えることでその時の良い関係を崩すのが怖かった。特に進展は無く、そのままただただ、時間だけが過ぎていきました。
そんなある日のこと、父からAさん家族が遠方の地へ行かれるということを聞きました。どうやらAさんのお父様の事業が失敗されたことが原因のよう。私はとてもショックを受け、ご飯も喉に通らない日々が続きました。
そしてAさん家族が旅立たれる前の日の夜、私はAさんに近くの公園へ呼び出されました。月明かりの下、彼は大分憔悴しきっているようでしたが、私に向かって精一杯の声で、こう言われました。
「いつか、必ず君を迎えに来る。それまで待っていてくれないだろうか」
しかし私は首を縦に振ることができませんでした。彼のことを思いながらも、やはり不安を感じてしまったのでしょう。そんな空気を察したのか、彼は寂しそうな表情をしながらその場を立ち去り、翌日Aさん一家は新天地へと旅立ってゆかれました。その後Aさん家族の消息はわからなくなり、彼とお会いする機会も訪れませんでした。
そしてAさんのことを気にかけつつも数十年の時が経ち、その間に私も結婚・出産をし、そしていつしか孫を持つ年齢になりました。楽しいこと・苦しいこと、いろいろ経験しましたが、それなりに幸せです。
でもふと、時々思うのです。あの時、Aさんに「あなたのことを待ちます」と伝えていたならば、また違う人生を歩んでいたのだろうか。あの時思いを寄せていた彼と、幸せな家庭を築けていたのだろうか、と。
そんな折、風の噂でAさんが-
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「はい!おわり!おつかれさま~」
えっ、あれっ、なんですか?ああ、散髪終わったんですか。
「はーい。○○○円ね!またよろしく~」
えっ、ああ、はい、また来ますけど、ラジオの話、ラスト聞けなかったんやけど…。最後どうなったんだろう…。ぬわぁ~!めっちゃモヤモヤする~!
以上、散髪に行ってモヤモヤした話でした。おあとがよろしいようで。