高浜再稼動、避難・治療対応に病院苦慮 京都の30キロ圏内
福井県高浜町の関西電力高浜原発3、4号機について、同町議会が20日、再稼働に同意したが、広域避難計画は課題が山積したままだ。病院では被災者への治療と入院患者らの避難を同時に強いられる可能性があり、京都府内の原発30キロ圏の病院は対応に迫られている。
府は30キロ圏内にある舞鶴市の8病院6診療所と宮津市の1病院に搬送車両の必要台数などを盛り込んだ避難計画策定を求めているが、患者らの搬送に必要な車両数は見通せていない。
高浜原発から11・2キロの舞鶴医療センター(舞鶴市行永)の計画では、入院患者約270人の搬送に保有するドクターカー1台と公用車2台に加え、救急車25台▽ストレッチャー対応の搬送車70台▽車いす対応車両75台▽バス5台▽精神患者用の護送車1台―が必要。担当者は「避難先まで運ぶ手段がない。計画を有効に機能させるためのシミュレーションも必要だ」と、再稼働が迫る状況に危機感を募らせる。
府医療課は「全ての病院の患者が同時に避難するのではなく、危険度の高いところから順番に避難させる。各病院の状況を見ながら車両確保などの検討を進めたい」としている。
原発事故で病院は、被ばく者への治療や、避難住民への対応も求められる。甲状腺被ばくを防ぐ安定ヨウ素剤の配布・服用には原則、医師の関与が必要だが、府北部は医師不足が続いており、事故後に十分対応できないこともあり得る。
福島原発事故のように自然災害と重なれば、病院自体が被災、職員も出勤できない事態も考えられる。各病院は耐震対策などを急いでいるが、東洋ゴム工業の免震装置ゴムの不正問題で、舞鶴医療センターの新病棟完成が遅れる可能性も出てきた。
福島原発事故では近くの双葉病院の入院患者ら50人が、避難中に体力を奪われるなどして死亡した。悲劇を繰り返さないため、実効性ある対策が求められている。
【 2015年03月20日 22時30分 】