着席と立席に値段差を
私は、1987(昭和62)年3月にまとめた修士論文のテーマを『鉄道の運賃とサービス水準の関係に関する基礎的研究』とした。
東武鉄道の協力を得て、東上線の利用者を対象に、池袋駅で着席や時間短縮に対して乗客が支払うに値すると考える料金について面接調査した。
パソコンの画面に、実際の利用区間の「立席が着席となった場合に○○円なら使いますか?」と質問を出し、「使う」と回答の場合は金額を高くしていく。50円、100円・・・と順々に高くしていき、ある年配のご婦人が、2,000円、3,000円としても「使う」との回答だった。
1ヵ月当たりと勘違いされているのだろうと思い、「この金額は1ヵ月当たりではなく1回当たりです」とお話したら、「分かっているわよ。2,000~3,000円で座れるならタクシーより安いじゃないの。すぐ実行してちょうだい」と言われた。
また、ある男性の方からは「着席と立席が同額なんてナンセンス。値段差があって当然」と断言された。私も元々そう思ってはいたものの、そこまでハッキリと言われたのを機に確信に変わった。
以来30年近くが経過し、私はいろいろな場で提案を重ね、著作までして一定の話題も呼んだ(「満員電車がなくなる日」でネット検索すると多数がヒット)ものの、実行しようという鉄道事業者は世界中に1つもない。
グリーン車と普通車、指定席と自由席という区分は大昔からあるが、普通車より高いグリーン車でも座れない、指定席より安い自由席でも座れるというように、着席と立席で値段差を付けたものではない。
3月14日のダイヤ改正と同時に導入された常磐線特急の「新たな着席サービス」は、指定席と自由席という不合理な区分をなくして一歩前進したものの、着席と立席で値段差を付けるというあるべき姿には至っていない。
着席と立席に値段差を付けるのは、私のとっては30年来の悲願なのだ。
実行する上での大きな問題は始発駅で並べば座れている人たちの不満だが、上野東京ラインの開業はいとも簡単にそれをなきものとした。それを非難しているのではない。始発駅で並べば無料で座れるという仕組みそのものが不合理で不公平なのだ。
同じ費用負担で良質なサービスを受けられる人と受けられない人に分かれる仕組みの問題点が、今回の「座れない」騒動を機に明白となり、良い方向に進むことを願っている。
良い方向とは、低額での着席サービスの供給、利用者間の不公平解消、事業者の収益性向上の3点である。
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