15-03-21 15:00
■[漫画][雑誌]2014年、漫画雑誌の販売部数はピークの三分の一まで減少。しかし、単行本は電子を合わせれば過去最高の販売金額に到達。
紙の雑誌は、販売部数が昨年よりも4300万部減。ピーク時の三分の一にまで減少し、4億部を割りました。
対して、単行本は電子を合わせると過去最高の売上。
一体どうなってしまうのか。
ということで、出版月報2015年2月号、特集「コミック市場2014」に掲載されたデータなどより。
2014年の簡単なまとめ
- 紙では、雑誌・単行本を合わせた販売金額は、3569億円で1986年頃と同水準。
- 紙の漫画雑誌の販売部数は、3億9755万部。19年連続のマイナスで、ピーク時*1の1/3。
- 銘柄数も減ってる。下げ止まらない。
- ついに、単行本の販売部数が雑誌を抜いた。
- 単行本の販売金額は、紙だけ見れば微増だが、電子市場の伸びが大きい
- 単行本の点数は過去最高の1万2700点。月に1060冊もの単行本が出てる。
- 電子コミックスは2005年〜2013年まで伸び続けていて、*2推定900億円超え。紙:電子は、5:2。
2014年販売金額(億) | 販売部数(万冊) | |
---|---|---|
雑誌 | 1,313 | 39,755 |
単行本 | 2,256 | 44038 |
電子 | 900(?) | - |
全体の販売金額は、紙のみでは2.7%減。
これは雑誌減の影響で、ヒット作の多く出た単行本が販売部数でも雑誌を上回った。
しかし、電子を足すと金額全体ではかなりの伸長となっています。
以下、データは出版月報からの引用になります。
ここ5年の傾向と電子コミック
紙での販売部数、販売金額は、雑誌激減に比べ、単行本は微増。
紙の雑誌はひたすら低迷。19年連続マイナスで、底が全く見えません。
そして、ついに雑誌よりも単行本の方が部数が多くなりました。
販売部数 | 雑誌計(万冊) | 前年比 | 単行本計(万冊) | 前年比 |
2010 | 55,917 | 92.7▼ | 46,849 | 102.9△ |
2011 | 51,603 | 92.3▼ | 45,216 | 96.5▼ |
2012 | 48,303 | 93.6▼ | 43,584 | 96.4▼ |
2013 | 44,075 | 91.2▼ | 43,856 | 100.6△ |
2014 | 39,755 | 90.2▼ | 44,038 | 100.4△ |
販売金額は、もはや単行本が主。
単行本:漫画雑誌の販売金額比は63.2:36.8。
販売金額 | 雑誌計(億) | 前年比 | 単行本計(億) | 前年比 |
2010 | 1,776 | 92.8▼ | 2,315 | 101.8△ |
2011 | 1,650 | 92.9▼ | 2,253 | 97.3▼ |
2012 | 1,564 | 94.8▼ | 2,202 | 97.7▼ |
2013 | 1,438 | 91.9▼ | 2,231 | 101.3△ |
2014 | 1,313 | 91.3▼ | 2,256 | 101.1△ |
電子コミック市場はさらに加速。
確定数字は2013年までですが、2014年には900億円越えと推定されます。
(ただこれ、アマゾンは日本い税金払ってないからキンドルでの販売金額がどの位かにもよるけど、どこまでってのはなあ)
電子コミックは、漫画を読むことへのハードルが圧倒的に低い。そして長尺コンテンツが売れているらしい。
ジャンプ+など、電子コミック雑誌配信も活発化。ジャンプ+では、累計260万ダウンロードを突破し、5万6000人が定期購読会員になってるとの事。
comico、マンガボックス、LINEマンガなど、無料電子コミックアプリも伸びている。
電子コミック | 販売金額(億) | 前年比 |
2005 | 34 | - |
2006 | 106 | 311.76△ |
2007 | 229 | 216.04△ |
2008 | 330 | 144.1△ |
2009 | 428 | 129.7△ |
2010 | 496 | 115.89△ |
2011 | 492 | 99.19△ |
2013 | 731 | 127.35△ |
2014 | 900? | 123.12△? |
※2014年は推定値。
コミック文庫は15.9%減、7年連続マイナス、46億円
コンビニ本は1%減、201億円。しかし、新刊点数は過去最多。食テーマで刊行点数増やしたところも。
置き場所や入手のしやすさなど、電子に分がありそうですね。
雑誌銘柄数と、単行本の点数
雑誌は、「プレイコミック」の様な伝統ある雑誌も休刊になったり、発行銘柄大幅減。
創刊12誌、休刊36誌で、結果、24誌も減りました。
妖怪ウォッチで部数を伸ばしたコロコロコミックの様な例外もあるものの、それ以外はおおむね部数減。
例として、別冊少年マガジンは昨年凄く伸びたのが、18万部から9万5000部と半減。
ジャンプも260万部まで減った。
単行本の年間新刊点数は微増で、過去最高に。月1000冊超えていて、電子のみってのも合わせるとさらに多く。
何を読めばいいのか、って迷う人も多かろう。
雑誌銘柄数 | 前年比 | 単行本新刊点数 | 前年比 | |
2010 | 288 | 96.0▼ | 11977 | 100.4△ |
2011 | 295 | 102.4△ | 12021 | 100.4△ |
2012 | 288 | 97.6▼ | 12356 | 102.8△ |
2013 | 276 | 95.8▼ | 12161 | 98.4▼ |
2014 | 252 | 91.3▼ | 12700 | 104.4△ |
雑誌の種類別でみると、まんべんなく減っている、かな。それでも成年の減りは大きい。
少女向けが増えてるのか。
種類 | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 |
少年向け | 31 | 31 | 30 | 27 |
少女向け | 38 | 36 | 34 | 35 |
青年 | 61 | 60 | 57 | 53 |
レディスコミック | 62 | 61 | 59 | 53 |
4コマ | 21 | 22 | 22 | 20 |
パチンコ・パチスロ | 14 | 13 | 13 | 10 |
BL | 16 | 17 | 16 | 16 |
趣味・スポーツ・その他 | 7 | 7 | 9 | 7 |
成年 | 45 | 41 | 36 | 31 |
合計 | 295 | 288 | 276 | 252 |
人気作品
少年向けでは、「黒子のバスケ」、「NARUTO」が完結するも、「ハイキュー!」が好調。初版75万部。
「弱虫ペダル」が大ヒット。秋田書店のコメントでは「アニメイトなどの専門店やコンビニエンスストアなどにおける多方面展開によって、女性中心にキャラクター人気が高まったためです」とのこと。(参考記事>2014年度の週刊少年チャンピオンにおける「弱虫ペダルイヤーっぷり」を検証してみる)
女性向けでは、「進撃の巨人悔いなき選択」が2巻で125万部。「アオハライド」は初版66万部。
「ちはやふる」が累計1200万部を突破。
青年向けは、「東京喰種」、「テラフォーマーズ」などスマッシュヒット継続。「バガボンド」、「マスターキートンReマスター」なども好調。
「ドリフターズ」は4巻で累計230万部突破。「3月のライオン」は初版80万部。
WEB連載の作品にもヒット多し。
相乗効果で部数を伸ばした作品では、「月刊少女野崎くん」が初版30万部、「ばからもん」は初版28万部と好調。
映画化、映像化作品は引き続き多く、190作品。
古い作品の映像化も。
おわりに
紙の雑誌は減りに減って、しかし、単行本は増えて。単行本は月に1000種を超える程出てる。
漫画を読む人の数が減ったのではなく、単行本や電子コミックなどの「まとまったコンテンツ」を好む人が増えたと言っていいのでしょうか。
漫画アプリやWEB連載だけになった時、大ヒットが生まれるか、と言われるとそこには疑問を覚えます。
しかし、新人の作品が掲載されやすくもなるのか。
ただ、新たに出てくる作品は発見されづらく、継続しづらくなっていくって事あるだろうし。
電子のメリット、紙のメリット、どちらもあるのだろうけど、まだまだ試行錯誤は続くのでしょう。
漫画のあしたはどっちだ。
といった所で今回はここまで。
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