コラム:中国の対外資金流出、真に懸念すべき問題とは
John Foley
[北京 19日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 1979年に中国の最高実力者だったトウ小平氏は、当時のカーター米大統領との会談で中国人の海外移住をもっと自由化するよう求められると、「米国に1000万人よこしてほしいなら、喜んでそうする」と答えた。
トウ小平氏の発言はおおげさだが、中国が国民の海外移住制限を緩めた場合に起こり得る事態について大事なポイントを押さえている。昨年の中国人の海外旅行者は1億人を超えた。
ただし本当に重要なのは投資の方だ。中国の対外投資を調査しているローディアム・グループは、2020年までの10年間で中国から出ていく資金の総額は2兆ドルになると予想する。一方、2013年の中国から米国への投資額は80億ドルだった。
中国の対米投資は不動産が中心となっている。リアル・キャピタル・アナリティクスによると、今月10日までの2年間で中国人は米商業不動産に104億ドルを投資した。その前の2年の投資額はたった15億ドル。2013年以降、ニューヨーク・マンハッタンだけでも60億ドル程度が流入し、中には高級ホテルのウォルドルフ・アストリアが中国の安邦保険グループに20億ドル売却された案件も含まれる。
もっともこうした数字は、事態の全貌をとらえたものではない。中国人投資家は米国の不動産購入に際して、英領バージン諸島などの租税回避地を経由することが一般的だからだ。また買い手が中国系かどうかについても、例えば「ドラゴン」や「ゴールデン」、「ラッキー」などという名前がついた企業なら判別できるが、こっそりと取引しようとする向きもあるだろう。
データと実態のかい離がより大きいのは居住用不動産だ。安邦保険などと違ってほとんどの買い手は姿を隠そうとするので、こちらは取引を調べるのが難しい。
それでも投資の全体像を把握するには、米国の「EB─5プログラム」に基づいて中国人に発給される投資ビザの件数に目を向けるという方法がある。同プログラムでは、50万ドル以上の資産と10人の雇用を用意できる申請者にビザと、最終的にグリーンカードが与えられる。 続く...