バブル時代
三喜商事という酒屋が 
三宿の交差点にありました


今はもう営業していないのですが




その当時
日本の正規の流通ルートでのられていない珍しい洋酒を


特に当時日本に入ってこなかった
ボンデッド物のバーボンを
サンプル輸入のような形で輸入し


 


西麻布のルクラブ 
渋谷黒い月など 
当時  錚々たる有名バーに卸し 
マニアック酒店の走りとも言われてました



今でこそ
小さな輸入業者が
たくさんのボトラーのマニアックなモルトウイスキー
マイナーなバーボンも取り扱うようになりましたが



バブル時代以前は
日本の洋酒業界は強固な代理店制度に守られていました


バーマンが店で並べる洋酒の選択肢は 
今に比べるとさほど多くはありませんでした




バークレイ ヒューブライン ジャーディンなどの
代理店関係者は
当時 あちこちのバーを営業で見まわり
並行輸入品のお酒が使われていることを知ると
酒屋を通して そこのバーには正規品を納入させない

そんな圧力をかけるほど 
ガチガチな輸入システムでした 



もちろんそんな輸入事情なので
代理店が多量に売れると見込んだ物以外は
輸入されることはなく

レパートリーと言う面に置いては
今に比べるととてもわびしい状況でした 



当時米国で売られていたボンデッド物バーボン
メーカーズマークVIPのような品は
海外のお土産品を除き 日本に持ち込まれることは少なかったのです 





そんな折 
ルクラブの要望で
ケンタッキーの酒屋から仕入れた酒の輸入取り扱いをしたのが
サンキーズこと三喜商事でした

ルクラブの方と共に
当時日本に売られていなかったバーボンのボンデッド物や
ズワック社のリキュールなどを仕入れ

そのバーの卸だけではなく
他のバーにも卸し 
それが大当たりすると


後年
イタリア等に社員を派遣して
マッカランの50年代物などを多数輸入して 
自社の酒店で売っていました


  


もちろんサンプル輸入のような状態で輸入していたため
当時として値付けはとても高値でした


正規品のハーパーが4000円ぐらいで買えた当時
ボンデッド物のハーパーを15000円で売られていました

マッカランの50年代は 
たしか80000円位だったと想われます




でもそこで輸入され 
好評を博した酒が皮切りとなり


あちこちでスタンダード以外の珍しい洋酒 
珍しいブランド品を輸入するという
動きが見られました



まず
ちいさな並行業者が 
今まで正規で取り扱ってなかった
メーカーズマークのVIPやゴールドシールを取り扱うようになりました 


そして

有楽町の酒蔵が開店し
傘下のちいさな業者を通して 
日本でまだ珍しかったボトラー物のモルトウイスキーを
百種類以上取り扱うようになりました


伝説のバーボンと呼ばれた
ブッカーズや
エリジャークレイグ(当時そう呼ばれていました)が
並行業者を通し初輸入されたのもちょうどこの頃でした





今まで海外に直に行った人たち経由での
噂話でしか目にしなかったお酒が
次から次へと日本に輸入されるようになり
業界の洋酒のレパートリー 選択しはあっという間に増しました





しかし90年代半ば
そうした動きに反比例するように 
サンキーズは
独自輸入を止めました 


バブル時代末期に
代官山にあった会員権1億5千万円のQEDクラブなどの仕入れを一括担当し
店の立ち上げにも関わっていたようなのですが





損失補てん疑惑で
バブル景気の息の音が止められると 
その店の経営も立ちいかなくなり


そこにお酒を納入していた
三喜商事も
小さな輸入業者が輸入する
お酒の取扱業務だけをするようになり
徐々に勢いを失くしていきました 




サンキーズは 
三宿の角地のビルの一階で営業していたのですが

やがて
ビルオーナーからの指示で
一階をコンビニに明け渡し(後にそこは松屋になりました)

店舗を3階に移し 
人目につきづらくなると 
訪れるバーマンたちの数も より減ったように想われます




サンキーズの藤野社長様が
生前 こう言ってた発言が 
想いおこされます





ぼくはあまり長生きしたくないんです
いつ死んでもいいとおもってる 」




真顔で怒るように
そう言っていた言葉が
とても印象的でした


ほどなく
ビルオーナーの意向で
社長が別なご親族に変えられてから 
言葉通り 藤野社長は亡くなられました



葬儀に参列したのですが
亡くなられた理由はいまだわかりません 




ただ葬儀場で大泣きなされていた
ビルオーナーだった社長のお母様の泣き顔が 
とても印象的でした




バブル時代
一世風靡した 
マニアックな輸入販売店サンキーズこと三喜商事





本日
ご紹介するお酒は
当時 三喜商事が輸入してとり扱っていた
レパートリーの一つだったお酒でもあります



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ケンタッキーシルク


これはサンキーズが
直接買い付けたものではありませんが



三喜商事が輸入した後 
その評判に目をつけたのか
小さな輸入業者が買い付けた物です



三喜が輸入してから数年後に輸入された物なのですが
しかし味は当時三喜商事が入れていた物と全く同じでした 




バーボンのリキュールです 


とても
美味しいリキュールなのです



知名度としては当時有名だった
ターキーリキュールの方が認知されていますが

私個人としては 味わいという観点から言えば 
ケンタッキーシルクの方が好みでした



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おそらくベースに使われてるバーボンも 
今プレミアムとして売られるバーボンよりも
はるかに良質な作りだったのでしょう




トップから余韻まで
上品な口当たり
でもバーボンの旨みは生き
繊細で甘味 
流しこまれるような複雑な余韻も息づいています


ケンタッキーシルクという
ネーミングのセンスと
味のイメージがこれほどまでに合致するお酒も珍しいと想います




この酒を飲むと
当時の事が想いだされます


バブル時代当時
私の店は連日閑古鳥でした

上にあげたような有名店の
世間一般的なバブルの景気と
かけ離れた内容の店でした


でも
そうしたバブルの香りがもたらした酒を 
その当時店で仕入れられて 
記憶できたことも
とっても幸運だと想っています







水飛沫のような味が漂う

炎の中心は水飛沫のようにさわやかで

透明に近い色をしている




飲みやすさの中に
水飛沫のような意志を感じた 」(ケンタッキーシルクの妻のティスティングポエム)





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