誤解答
@ 3.5項モーメントの分割率を思い出して欲しい。
A 固定端の曲げモーメントはゼロでは無い。

 誤解答
@ この柱に曲げモーメントは生じない。@に曲げモーメントが発生するには反力 Rh が生じなければならない。しかし、Aがリンク構造のためこの反力に釣り合う水平方向の反力は生じない。


 誤解答

@ 問題17と同じである。3.5項モーメントの分割率を思い出して欲しい。


 
誤解答

@ ピン支持点では曲げモーメントは生じない。
A 荷重点より右側の梁のせん断力は右上図に示す理由からゼロである。したがってこの箇所の曲げモーメントは一定である。





 (この項続く)

かってねかってねかってねかって

平成
24830



骨組構造の定性解析

    


ライトブレイン設計株式会社

吉川健二

 


    


 私が学生の頃、フレームを解く手法は、死荷重に対しては固定モーメント法で、地震時の水平荷重に対しては D 値法で解くのが一般的でした。マトリックス構造解析プログラムを実務で使用することはまだ小規模の設計事務所では一般的ではなかったと記憶しています。

 私が社会人として仕事を始めた前後から急速に電子計算機を利用したフレーム解析が普及しました。その後、ワークステション、パソコンへと使用するハードウェアが変わりました。まさに
 10 年ひと昔、ドッグイヤー、のスピードでハードウェアの機能が向上しました。

 初めて 
NEC からノートパソコン 98NOTE が出た時、すぐに個人用として購入しました。結構高かったのですが 1 〜 2 年もしないうちに会社で使用するものとの機能差が大きくなり使用しなくなりました。 10 年ひと昔ではなく1〜2年毎に製品の機能が向上してゆきました。

 現在では学生でもパソコンで
 FEM 解析が手軽に行えるようになっています。ある大学の先生が、「学生が手軽に FEM 解析を使用出来る時代になっても、実務者が格子解析から抜け出せないのは古い。」と言われていましたが、詳細設計をすべて FEM 解析で行うことについては、私は懐疑的です。このことは、別のトピックスで取り上げたいと思います。


 ところで、便利な解析ソフトウェアが氾濫する頃から実務を始めた設計者にとっては、構造解析部分がブラックボックス化しているようです。それは時代の流れとしてやむを得ないことですしこれを技術の進歩というのでしよう。

 しかし、構造設計は経験工学であるという側面を持っています。漠然と正しい結果をイメージする能力なり経験が必要です。ブラックボックスとなった解析ソフトにデータを入力して結果をまとめる。この作業では、とりあえずソフトウェアは答を出すので、その結果の間違いを判断する能力が必要とされます。そうでなければ、正確に間違える事態が起こってしまいます。


 何十年か前の資料だったので出展は今となっては不明ですが、解析ツールの利用を前提とした構造力学教育に関連した資料のなかに、アメリカの大学で行われているフレームの定性解析の問題がありました。

 それは、計算をせず感覚的にフレームの曲げモーメント図の形状だけを描くといったシンプルな問題でした。資料は不要になれば捨てるタイプの私でしたが、これは良い資料だと思い捨てずに残していました。その後、以前勤めていた会社で設計課長をしていた頃、私の部下となった課員にこの問題を解いてもらいデータを集めていました。

 
           これが意外と解けない。

 問題が凝っていることもありますがあまりにも讃嘆たる結果に驚きました。試験の対象者は全て大学で土木工学を専攻していましたし、その内 
4 名は修士課程を修了していました。

 それでも実務は問題なく行えます。しかし、正確に間違える恐れは潜在的にある訳です。ソフトウェアは設計者が指定する境界条件などの設計条件まではチェックしてくれません。当然のことです。この能力が必要なのは、細部構造の設計、架設時の検討などですが、今後は補強工事における工事計画なども対象になるでしよう。

 この問題は以外と少ない知識を活用すれば、ほとんどの問題を解くことができます。設計実務者の立場からは、この知識、つまり原理原則の十分な理解、が 
IT 時代の教育に必要なことだと考えています。

 


2. 定性解析の問題


 フレームの定性解析の問題を以下に示す。解答時間は 1問 30秒として 10分程度が目安である。問題 1〜5 は桁系の問題で、 6〜10 は桁亜流系の問題である。

            問題     問題  




     
 誤解答 
@ 一見正解のように思うが、実はこの骨組は水平力に抵抗できないため不安定である。


 誤解答


@ 右柱の下端はローラ支持なので水平反力は生じない。

 誤解答

@ 柱にモーメントが生じないことが誤りである。この問題は少し難解である。Aの構造は鉛直外力に抵抗できないため不安定構造である。通常の骨組解析ソフトウェアでは不安定なので解けませんというメッセージが返ってくる。しかし、実際は中央のピン部が変形した場合には鉛直力に抵抗することができる。正確なモーメント図は幾何学的非線形問題を扱えるソフトウェアで検証する必要がある。
 誤解答
@ ここはピン結合では無い。


 誤解答
@ ここの曲げモーメントは1次変化しない。

誤解答
@ ここに曲げモーメントが生じるには左柱下端に水平反力が生じなければならない。外力の釣り合いより、右柱下端には左柱の逆向きの反力が生じなければならない。しかし左柱の上端はピンであるため矛盾が生じる。

 誤解答
@ ピン支持支点では曲げモーメントはゼロである。


 誤解答
@ 固定端の曲げモーメントが誤っている。剛結部の変形形状を考えれば良い。


 誤解答
@ 問6の説明と同じ理由で@の曲げモーメントは変化しない。

4.3 問題11〜20
 誤解答
@ 自由端ではモーメント荷重が作用しない限り曲げモーメントは発生しない。
A 骨組を点Aと点Bで切断した状態を考える。力の釣り合いより点Aと点Bに作用する断面力に相違は無い。外力Pにより水平部材にはせん断力ではなく軸力が発生する。せん断力がゼロであるからこの部分の曲げモーメントは変化しないのである。
 誤解答
@ 支間BCの変形形状は右図のようになるので、支点Bから作用荷重の間のモーメントはゼロにはならない。


 誤解答
@ 部材が支点上で連続していることに気付いていない。


4.2 問題6〜10

4.間違った解答とその理由


4.1 問題1〜5

 
 誤解答
 この解答には間違った考え方が3か所ある。

@ 上図の右に示すとおり端支間で曲げモーメントが増加から減少に変化している。曲げモーメントの増加率はせん断力であるから端支間のせん断力図は右上図のようにならなければならない。このため には端支間に荷重が作用していなくてはならないので間違いである。
A 部材が支点上で連続していることに気付いていない。
B この間違いは良く理解できない。曲げモーメント図と変形を取り違えているのだろうか。部材の自由端に曲げモーメントが生じるのはモーメント荷重が作用している場合のみである。



  誤解答
@ 3.2項の曲げモーメントとせん断力の関係よりせん断力は部材軸線上の座標値の1次式、曲げモーメントは2次式になることは明らかである。支間A,Bが単純梁の場合のモーメント図を右図上に示す。 支点B上のモーメントがゼロでは無いときには、右図下のようになる。Moの値が同じになることに注意 。
A 支点Bにたわみ角が生じた場合、C点は固定端であるから固定端の曲げモーメントは支点Bの曲げモーメントMBの1/2の大きさで符号は逆となる。



 誤解答

@ 支点反力RAが生じた場合曲げモーメントが発生するが、このことは支間上のピン結合部分に曲げモーメントが発生することになり矛盾する。したがって支点反力RAはゼロである。ピン結合位置でのせん断力もゼロであるから、荷重作用位置より左側のせん断力Qはゼロとなる。

3.5 モーメントの分割率


 図-3.7に示す骨組にモーメントMAが外力として作用した場合を考える。節点Aは剛結である。剛結とは変形後も部材同士の交差角が変化しないことであるから、図に示すように部材1、2、3の節点Aのたわみ角は全て同じ値θとなる。

 部材
1、2、3の剛度k1,k2,k3は下図に示すとおりである。
                 モーメントの分割  
                   図-3.7 モーメントの分担

 3.3項で説明したことの応用で、式-3.5が成り立つことは容易に分かる。
       たわみ角法(式-3.5)

 外力 MA は各骨組部材に分割されたモーメントと釣り合う。その大きさは式-3.6に示す通り、各々の部材の分割率に比例する。つまり、各部材は各々の剛比に応じたモーメントを分担する。
      モーメントの分割率(式-3.6)

 以上が問題を解くのに必要な少ない知識である。次節では間違った解答とその理由について説明する。
     

3.3 たわみ角と曲げモーメント

 たわみ角法の基本式で、部材角が生じず、部材に作用する中間荷重が無いケースについて考える。この状態を図-3.2に示す。この条件ではたわみ角法の基本式は非常に簡素化される。

               誤解答

          図-3.2 中間荷重と部材角が無い場合の梁部材

 部材両端のモーメントとたわみ角の関係は次式のようになる。 
    誤解答 (式-3.3)

                 誤解答
    図-3.3 中間荷重と部材角の無い場合の梁部材のモーメント図とせん断力図

  この部材のモーメント図とせん断力図は、図-3.3のとおりである。 


 表-2.1に私が集めたサンプル結果を示す。仮に 60 点を合格ラインとすると、全員不合格。全体としての平均点は 30点/ 100 、だった。付記するなら、解答者の大学時代の専攻は全員土木系の学科であった。このため回答者がラーメン構造になじみが無かったことが影響していると思われる。

                       表-2.1 正解率のサンプル
            誤解答
 


 問題 11〜20 はラーメンの問題である。

  
           問題   誤解答   
 誤解答
@ 固定端の曲げモーメントが誤っている。右上の図の変形形状を考えれば良い。



3.4 支点上のピン


 図-3.6に示す支持条件の違いを理解しておく必要がある。左の図では支点B上の曲げモーメントは部材が支点上で連続しているため必ずしもゼロにはならない。これに対して右図では支点B上で部材がピン連結されてるため、この点での曲げモーメントは必ずゼロとなる。
       誤解答 
                     図-3.6 支点Bの境界条件の相違

 では、この部材の B端が固定された場合の部材に作用するモーメントはどうなるのであろうか。

                  誤解答 
               図-3.4 B 端が固定されている場合 



 この場合、固定端での回転角はゼロであるからθB=0。部材両端のモーメントは式-3.4のようになる。


      誤解答(式-3.4)

 この場合のモーメント図を 図-3.5 に示す。部材に中間荷重が作用せず部材角が生じない場合は図に示すように固定端のモーメントは一方の部材端のモーメントの逆方向となりその大きさはA端側の 1/2 となる。

                     誤解答 
           図-3.5 B 端が固定されている場合のモーメント図

 

3. 問題を解くのに必要な少ない知識


3.1 力の釣り合い


 覚えておくと良い知識を以下にまとめておく。式-3.1は基本中の基本力の釣り合い式である。平面問題なのでとりあえずこれぐらいの意味を理解しておく必要がある。あまりにも当たり前過ぎて以外と忘れてしまう。

  力の釣り合い(式-3.1)
 
 ここで、Piは外力、Rjは反力を示し添字のx,yは各々の座標軸方向の力の成分であることを示す。


3.2 曲げモーメントとせん断力の関係

 図-3.1は梁の微小部分の釣り合い状態を示す図である。力の釣り合い条件より良く知られている式-3.2の関係が導かれる。

            曲げモーメントとせん断力
                 
               図-3.1 梁の微小部分の釣り合い

       式(式-3.2)

 式-3.2から分かることはモーメントの変化率はせん断力に等しいことである。またせん断力の変化率は部材に作用する荷重の負値に等しいということである。つまり、曲げモーメントが一定の部材では曲げモーメントの変化率=0。すなわちせん断力はゼロということになる。

 余談であるが、私が使用している曲げモーメントを部材のどちら側に描くか、というルールは上図に示すようにプラス側は断面に引張応力が生じる側に描く、とういう通常の方法を採用している。


1. はじめに


 このトピックスでは、骨組構造の定性解析を取り上げる。ここでは、定性解析という用語を感覚的にあまり時間をかけずに骨組構造の曲げモーメント図の形状だけを描くこと、という意味で使用している。このトレーニングを行えば構造解析結果を直観的にチェックするスキルが向上することが期待できる。

         
ぜひ皆様も頭の体操としてチャレンジしてみて下さい。

 構造物の完成状態のモーメント図は良く目にするので容易にモーメント図は予想できる。しかし今後増えてゆく維持管理や補強の設計では、施工時に主要部材を取り外すこともある。このような場合の設計照査にこの定性解析が役立つ。