骨組構造の定性解析
ライトブレイン設計株式会社
吉川健二
私が学生の頃、フレームを解く手法は、死荷重に対しては固定モーメント法で、地震時の水平荷重に対しては D 値法で解くのが一般的でした。マトリックス構造解析プログラムを実務で使用することはまだ小規模の設計事務所では一般的ではなかったと記憶しています。
か
私が社会人として仕事を始めた前後から急速に電子計算機を利用したフレーム解析が普及しました。その後、ワークステション、パソコンへと使用するハードウェアが変わりました。まさに 10 年ひと昔、ドッグイヤー、のスピードでハードウェアの機能が向上しました。
か
初めて NEC からノートパソコン 98NOTE が出た時、すぐに個人用として購入しました。結構高かったのですが 1 〜 2 年もしないうちに会社で使用するものとの機能差が大きくなり使用しなくなりました。 10 年ひと昔ではなく1〜2年毎に製品の機能が向上してゆきました。
か
現在では学生でもパソコンで FEM 解析が手軽に行えるようになっています。ある大学の先生が、「学生が手軽に FEM 解析を使用出来る時代になっても、実務者が格子解析から抜け出せないのは古い。」と言われていましたが、詳細設計をすべて FEM 解析で行うことについては、私は懐疑的です。このことは、別のトピックスで取り上げたいと思います。
か
ところで、便利な解析ソフトウェアが氾濫する頃から実務を始めた設計者にとっては、構造解析部分がブラックボックス化しているようです。それは時代の流れとしてやむを得ないことですしこれを技術の進歩というのでしよう。
しかし、構造設計は経験工学であるという側面を持っています。漠然と正しい結果をイメージする能力なり経験が必要です。ブラックボックスとなった解析ソフトにデータを入力して結果をまとめる。この作業では、とりあえずソフトウェアは答を出すので、その結果の間違いを判断する能力が必要とされます。そうでなければ、正確に間違える事態が起こってしまいます。
何十年か前の資料だったので出展は今となっては不明ですが、解析ツールの利用を前提とした構造力学教育に関連した資料のなかに、アメリカの大学で行われているフレームの定性解析の問題がありました。
それは、計算をせず感覚的にフレームの曲げモーメント図の形状だけを描くといったシンプルな問題でした。資料は不要になれば捨てるタイプの私でしたが、これは良い資料だと思い捨てずに残していました。その後、以前勤めていた会社で設計課長をしていた頃、私の部下となった課員にこの問題を解いてもらいデータを集めていました。
これが意外と解けない。
問題が凝っていることもありますがあまりにも讃嘆たる結果に驚きました。試験の対象者は全て大学で土木工学を専攻していましたし、その内 4 名は修士課程を修了していました。
それでも実務は問題なく行えます。しかし、正確に間違える恐れは潜在的にある訳です。ソフトウェアは設計者が指定する境界条件などの設計条件まではチェックしてくれません。当然のことです。この能力が必要なのは、細部構造の設計、架設時の検討などですが、今後は補強工事における工事計画なども対象になるでしよう。
この問題は以外と少ない知識を活用すれば、ほとんどの問題を解くことができます。設計実務者の立場からは、この知識、つまり原理原則の十分な理解、が IT 時代の教育に必要なことだと考えています。