・「大好きな人々大好きな明け暮れ」・「新しい『大好き』をあなたと探したい」・「私たちは出会い私たちは惑い」・「いつか信じる日を経て1本の麦になる」・「空よ風よ聞かせてよ私は誰に似てるだろう」・「生まれた国育つ国愛する人の国」・「麦は泣き麦は咲き明日へ育ってゆく」
(政春)こっち来い!悟…シベリアで何があったんじゃ?
(悟)地獄を見てきました。
地獄?気が遠なるような寒さん中牛や馬みたいにこき使われて飯は…これっぽっちの黒パンが1個。
まずい大麦のスープを無理やり腹に流し込んでも腹が減って腹が減って…消化されんと排便された大麦をもう一回洗うて食うんです。
叔父さんは自分の出した便を食うた事がありますか?つらい労働のあとにはオルグが待っとる。
オルグ?日本の軍隊を否定し日本が間違っとると認めん限り日本には帰してもらえんのです。
皆…自分が先に帰国したい一心で日本人同士が足の引っ張り合いじゃ!わしゃ…誰にも心開かんと「日本が悪い間違っとった」いうて大きな声で言い続けてようやっと解放されたんです。
しかたなぁ。
それが戦争に負けるいう事じゃ。
叔父さんには分からん!わしゃお国のために死ぬ気で戦うた!じゃのにその国を日本を否定せんにゃ生き延びる事ができんかったんです!ナホトカから船に乗って祖国に着いて何年ぶりに酒を飲んだ。
うまかった。
涙が出た。
その酒を…叔父さんは偽物じゃ言うた!いや…いやそれは…。
本物って何ですか?わしにとっちゃあの三級の酒が本物じゃ!仲間を裏切って帰国したわしを…最初に許してくれたんがあの酒なんです!偉そうな事言うて高い酒造っても今の日本人は誰も飲めん!飲めん酒なんぼ造ってもそりゃ造っとらんのと同じ事じゃ!違う。
そりゃ違うど!わしゃ諦めとらん!たとえ今飲める人が少のうても日本は必ず…必ず復興する!その未来を信じてわしゃ諦めず本物を造り続ける!未来が見えん人はどうすりゃええんです?
(エリー)マッサン?ああ…。
わしゃこの国に…新しいウイスキーの時代が来る事を信じてやり続けてきた。
これからも今までどおり本場に負けん…うまいウイスキーを造り続ける。
じゃけど…大事な事を忘れとった。
大事な事?うん。
命の水じゃ。
命の水?ウイスキーの語源はのうゲール語の命の水に由来するんじゃ。
人は水がないと生きていけん。
水は命をつなぐもの。
ウイスキーは人の命をつなぎその心を満たすものなんじゃ。
わしゃこれまで三級酒はウイスキーじゃなぁ思うとった。
じゃけど…悟の話を聞いて…よう分かった。
命の水に…本物も偽物もなぁ。
一級も二級も三級品もなぁんじゃ。
今求められとるんは安い酒じゃ。
みんなに飲んでもらえる安うてうまいウイスキーを造るためにわしゃ…これから頑張る。
できるよ。
マッサンならきっと!きっと!安いのにうまいウイスキーを造るというマッサンの新たな挑戦が始まりました。
うわ〜。
(俊夫)地方限定で売っとるものは別として全国規模で売り出されとる三級ウイスキーはおおかたそろえました。
ああ。
こがいにようけ出とるんか。
(俊夫)ああ…今の法律じゃ原酒が入っとらんでもウイスキーとして売り出せる。
資金があってアルコールさえ手に入りゃ誰でもウイスキーを造れる時代なんでさ。
酒造会社と銘柄の一覧も作ってくれたか?ああっ…これでよがんすか?よっしゃ。
へじゃ順番に香料と着色料を分析していくけん帳面につけてくれ。
はい。
・
(物音)おい悟!ん?どうしたんじゃ?いや…。
悟…昨日は…ありがとう。
悟のおかげで…わしゃ今自分がやらんにゃいけん事に気付けた。
みんなに飲んでもらえるような安うてでもうまい三級ウイスキー造って売り出そう思うんじゃ。
へじゃこだわっとった一級酒は?もちろん造り続ける。
(俊夫)えかったらちいと見学していきんさるか?たまげますで!ああっ…おい!ほら!入ってつかい入ってつかい!ハハハッ!ほ〜ら…ほらこっちじゃ。
こっち来て。
ここに。
ここに座ってつかい。
ハハハッ!よし!へじゃお坊ちゃま始めまひょう!ハハッ。
まずは香りからじゃ。
へえ。
こりゃエッセンスを使うとるのう。
エッセンス?ああ。
飲んでみるか?苦いど。
うっ…苦っ!エッセンスを使うて味付けしたら苦みが強うなるんじゃ。
う〜ん…。
おお…こりゃバクダンじゃ。
バクダン?ああ。
ふだんは工業用に使うアルコールじゃ。
工業用?こりゃ甘味料にサッカリンを使うとるのう。
サッカリン。
しかも蒸溜の時にウイスキーを焦げ付かしとる。
う〜ん。
何でにおいを嗅いだだけでそこまで…。
(俊夫)お坊ちゃまの鼻は犬並みでがんす。
犬とは何じゃ!犬とは…。
申し訳がんせん。
犬以上でがんす!おい俊兄。
ハハハハハ。
わしも嗅がしてもろうてええですか?ああ。
嗅いでみるか?ハハッ…ほら!ほらほらほら…。
真ん中来てつかい。
あ〜ここにここ座ってつかい。
分かるか?ちいと油臭いような。
お〜!よう分かったのう。
こりゃフーゼル油香じゃ。
ハハハハッ…。
こがぁな不純物が混ざっとる酒飲んだらえらい二日酔いなるど。
(笑い声)そがな事まで?わしゃこの道一筋で何十年もやってきたんじゃ。
(俊夫)わしゃお坊ちゃまの前世は「ワンワン」じゃにらんどります。
ワン!おっほら!ワン!ワンワン!ワンワンワンワン…!
(笑い声)悟お坊ちゃまこれ一緒にやってみんさるか?ええんですか?一緒にやってみるか?はい!
(俊夫)フフフッ…。
酒蔵に生まれ長年の修業で更に研ぎ澄まされたマッサンの嗅覚と集中力に悟は目をみはるばかりでした。
ほんまじゃ。
ウイスキーの香りが全くせん。
ほうじゃろう。
ホホホホッ…「ほうじゃろう」。
そんな叔父の姿を見て悟は少しずつウイスキー造りに興味を抱き始めていました。
大したもんじゃ。
(俊夫)筋がええ。
筋がええわ。
へじゃ次じゃ。
こりゃ難しいど。
(俊夫)お坊ちゃまより筋がええの。
2015/03/18(水) 12:45〜13:00
NHK総合1・神戸
連続テレビ小説 マッサン(141)「一念岩をも通す」[解][字][デ][再]
悟(泉澤祐希)から「本物の酒とは何か?」と問いかけられたマッサン(玉山鉄二)は、ウイスキーの原点を思い出し、安くてうまい三級酒をつくる決意をするのだが…。
詳細情報
番組内容
悟(泉澤祐希)は人間として扱われず、日本を否定し、同じ日本人すら疑うしかなかったシベリアでの地獄の日々から解放され、飲んで心を救われた三級酒を偽物と呼んだマッサン(玉山鉄二)に、「本物の酒とは何か?」と問いかける。ウイスキーの語源は「命の水」であり、人の命をつなぎ、心を満たすための飲み物であったことに気づかされたマッサンは、安くてうまい三級酒をつくる決意をし、新たな挑戦が始まるのだったが…。
出演者
【出演】玉山鉄二,シャーロット・ケイト・フォックス,八嶋智人,泉澤祐希
原作・脚本
【作】羽原大介
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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