きょうの健康 増える血液がん「悪性リンパ腫」 2015.03.18


(テーマ音楽)知っておきたい健康情報を分かりやすくお伝えしましょう。
「きょうの健康」です。
今週はこちら。
今日は3日目です。
テーマは…この2日間にわたって白血病を取り上げてきましたが悪性リンパ腫も血液のがんの一種。
患者数はどうでしょうね?ちょっとこちらをご覧下さい。
血液がんは3つの病気に分かれているんですが患者数が一番多いのが悪性リンパ腫です。
高齢者を中心に年間およそ2万4,000人が新たに診断されています。
この3つのがんというのは近年いずれも増えているんですが特に増えているのが悪性リンパ腫です。
一番多い血液のがんなんですね。
今日もお話を伺ってまいります。
専門家をお招きしております。
ご紹介致しましょう。
血液がんがご専門で特に悪性リンパ腫の診断治療に数多く当たっていらっしゃいます。
どうぞよろしくお願い致します。
まず悪性リンパ腫どのような血液のがんなのかご説明下さい。
はい。
そもそも血液は骨の中にある骨髄というところで作られます。
骨髄には造血幹細胞という細胞がありましてそれがさまざまに姿を変える事で白血球赤血球血小板などの血液成分が出来ます。
悪性リンパ腫は白血球のうちのリンパ球ががん化する病気です。
これはまたリンパ球が作られる過程の細胞ががんになる事もあります。
リンパ球ががん化するという事ですね。
どうなっていくのでしょうか?正常のリンパ球は骨髄や血液のほか全身に数百個あるリンパ節という器官に分布します。
張り巡らされてる感じですね。
丸い緑がリンパ節でリンパ管でつながっています。
リンパ球は病原体や異物を排除する免疫の役割を担っています。
悪性リンパ腫は主にこれらのリンパ節でがん化したリンパ球が増殖しがんの塊を作る事が多い病気です。
またリンパ節以外でもたくさん出てますがこれらのさまざまな臓器に出来る事があります。
これらの中では胃や腸などに出来るものが多いです。
この悪性リンパ腫ではどのような自覚症状がありますか?リンパ節の腫れやしこりが最も多くなります。
首わきの下脚の付け根などは自分でも分かります。
首といいますといわゆるこういうところを触ってグリグリを感じたり腫れてるなって事が分かる訳ですね?グリグリというふうに…。
大きさは1センチから5センチ程度のものが多く痛みはあまりありません。
大きいものほどリンパ腫の可能性が高くなります。
またさまざまな臓器に障害が現れる事もあります。
例えば中枢神経ならば手足の麻痺。
肺なら咳や呼吸困難。
胃なら腹痛や嘔吐などです。
そのほか発熱体重減少ひどい寝汗といった症状もあります。
そうしますとこうした症状がきっかけで病気が分かるという事が多いんでしょうか?はい。
これらの症状がきっかけになる事もありますがほかの病気の検査や検診がきっかけになる事もあります。
例えば胃カメラで胃のリンパ腫。
腹部超音波で腹部のリンパ腫。
X線で胸のリンパ腫が見つかったりします。
血液検査から分かる事というのはあるんですか?例えばLDHという血液検査のデータがありますが悪性リンパ腫ではLDHが異常になる事があります。
ただLDHが異常となる病気はいろいろとあるものですからそれらがない場合そういうほかの疾患がない場合には悪性リンパ腫も念頭に置いて検査を行う必要がございます。
それでは治療の話です。
悪性リンパ腫はどのような治療が基本かまずご説明下さい。
お薬放射線自家移植などを組み合わせて治療致します。
中でも薬が治療の中心で効果が大きいです。
これはほかの血液がんも同様となっております。
よく効くという事ですね。
大事な治療法です。
移植とは血液を作る造血幹細胞を注入する事でありまして悪性リンパ腫ではドナーから提供頂いた骨髄ではなく患者さんご本人の血液成分を使う事が多くこれを自家移植と呼びます。
この過渡期に手術を行う事もあります。
それでは治療法をどのように選択していくのかまず基本情報を久田さんからです。
はい。
治療法を選ぶ時に特に決め手となるのが病気のタイプです。
…といいますのも悪性リンパ腫はがんになるリンパ球の種類やがんが出来る場所などによって実に何十種類ものタイプに分かれているからなんです。
そのごく一部ですが主なものをこちらに挙げました。
このうち日本で最も多いのはこちら…次に多いのがろ胞性リンパ腫やMALTリンパ腫です。
またタイプによってがんの進行の速さも異なります。
こちらでは上に行くほど進行が遅く下に行くほど速いものです。
それぞれ年単位月単位週単位で進行していきます。
また治りやすいかどうかという事もタイプによって異なっていきます。
この中ではろ胞性リンパ腫などが治りにくいタイプなんです。
実に驚きました。
何十種類ものタイプがあってその中でここに挙げてあるのは主なものだという事なんですね。
それでは治療のお話をして頂きますが一番多いのはこれだという事でした。
…という長い名前の病名でございますがこれはどのような治療の流れになるんでしょうか?びまん性大細胞型B細胞リンパ腫では最初はR−CHOPと呼ばれる薬物療法が進められます。
これはリツキシマブというお薬に従来の抗がん剤などを組み合わせるものです。
期間は3か月から6か月程度。
最初は入院し効果や副作用を見極めますが以後は外来で行う事が多い治療です。
また薬の多くは点滴で投与するものです。
また腫瘍の場所が比較的限られている場合などに放射線の治療を加える事もあります。
さてこの治療の中心となるリツキシマブというお薬ですがこれはどのような作用で効果を示すんでしょうか?このタイプのがんになるリンパ球。
Bリンパ球なんですがこれはCD20というたんぱく質を細胞の表面につけています。
リツキシマブを投与するとこのCD20に結合します。
するとそれを目印に免疫を担う細胞が更に結合しがん細胞を攻撃してくれます。
リツキシマブは分子標的薬の一つで抗体療法とも呼ばれます。
このくっついてるここがこのお薬なんですね。
この免疫細胞というのは本来自分が持っている攻撃してくれる免疫細胞ですね。
その手助けをしてくれるようなイメージでいいですかね?はい。
この分子標的薬が出てきたという事で治療は大きく変わったのでしょうか?はい。
このお薬は日本では2001年に承認されました。
従来の抗がん剤だけの治療に比べ効果が高く悪性リンパ腫の治療は新しい時代を迎えました。
現在ではほかのタイプの悪性リンパ腫にもよく使われております。
それではこの治療ですが副作用としてはどんなものを考えておかなきゃいけないですか?リツキシマブは使い始めに発熱発疹ほてりなどが起こる事があります。
リツキシマブと併せて使うほかの抗がん剤には免疫の働きを抑えてしまうそういう作用がありまして感染症などに気を付ける必要があります。
また吐き気食欲不振便秘手足のしびれ脱毛などの副作用もあります。
この治療の効果というのはどうなんでしょうか?びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の6から7割程度の患者さんが薬の治療で治癒します。
ただ個人差があり効果が不十分な場合や残念ながら再発される場合もあります。
それにしても6〜7割の方がこのお薬で治癒すると…。
効果がありますね。
ただ残念ながら再発した場合というのはもちろんあると思いますがその場合はどのような治療をしていくんですか?その場合はほかの薬を使った治療が中心となりますが加えて65歳以下なら自家移植が勧められます。
さてどんな手順で自家移植が進んでいくのかという事をご説明頂きましょう。
まず薬の治療でがん細胞が減った時点でG−CSFというお薬を注射します。
そうすると骨髄で造血幹細胞が増え末梢の血管に移動してきます。
それを血管から連続的に採取し凍結保存します。
次に新たに大量の抗がん剤を投与し残っているがん細胞を破壊するとともに自分の血液細胞をほぼ完全に破壊します。
その後凍結しておいた造血幹細胞を点滴します。
戻すという事ですね。
はい。
すると10日から2週間後には移植された造血幹細胞が新しく血液細胞を作り始めます。
しかし移植した造血幹細胞というのも自家移植ですから自分のものですよね。
その中にがんというのは交じっていないのですか?そうですね。
それは心配な点ですがびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の移植を行う場合には血液にはほとんどがん細胞が存在しない事の方が多いです。
この病気こうして自家移植という治療をした場合その効果とそれからリスクはどうでしょうか?効果は薬だけの治療よりも高く治癒も十分期待できるものです。
一方大量の抗がん剤による全身の負担は大きくなります。
特に自分自身の白血球が一時ほとんど無くなるため感染症が非常に起こりやすい治療です。
ただし他人から提供を受けて行う移植と違い死亡リスクはかなり低いです。
それでは次のタイプに移りましょう。
もう一つ数の多いものろ胞性リンパ腫でしたよね。
これの治療の流れをご説明下さい。
ろ胞性リンパ腫の治療法としてはがんの広がりが一定の範囲に収まっている場合には放射線治療が有効で治癒も期待できます。
しかし実際はがんが進行して発見される事が多くその場合リツキシマブなどのお薬を使います。
患者さんによっては治療をせず経過観察をする事があります。
その理由なんですが進行が比較的遅いがんなので治療しなくても数年にわたって悪化しない事もあるためです。
そのような経過観察ですがそれを行う場合には低腫瘍量という条件を満たす場合に検討が行われます。
腫瘍量が低い。
そうです。
低腫瘍量というのは分かりにくい概念ですが具体的には腫瘍が小さいリンパ節の腫瘍が少ない全身や臓器の症状がないといった条件を満たす場合が該当します。
ではもう一つMALTリンパ腫。
こちらはどうでしょうか?このタイプはリンパ節以外の臓器に出来やすく特に胃の粘膜に出来やすい病気です。
胃ですか。
胃に出来やすいんです。
その場合ピロリ菌の感染が関係している事が多いです。
従って胃に出来た場合ピロリ菌の感染があれば最初の治療は除菌を行います。
除菌を行う事で7割から8割の患者さんで治癒が得られます。
除菌だけで治癒という事が多いんですね?治ります。
へえ〜!またそれが無効な場合などでは放射線やお薬の治療を行う場合もあります。
MALTリンパ腫で胃以外の肺や甲状腺。
ほかの臓器ですね。
…に出来る場合もありますがそのような場合には放射線治療手術お薬などで治療が行われます。
今日はごく限られた代表的なものについてご説明頂きましたが悪性リンパ腫というのは治る時代になってきたと考えてよろしいんでしょうか?そのとおりだと思います。
最近薬などの治療法が大きく進歩し全体では5年生存率が60%近くまで高まってきています。
この数字は血液がんの中では生存率としては高いものとなっております。
最近では更に新しい薬がいくつも登場しており治療成績の一層の向上が期待されています。
どんな薬ですか?例えば放射線を出す抗体薬とか抗がん剤を結合したそういう抗体薬。
あるいは飲み薬内服の分子標的薬なども盛んに開発されております。
そういう薬が登場しますと更に治療成績が上がっていく事が期待できるという事なんですね。
大いに期待されると思います。
どうもお話ありがとうございました。
(2人)ありがとうございました。
2015/03/18(水) 13:35〜13:50
NHKEテレ1大阪
きょうの健康 増える血液がん「悪性リンパ腫」[解][字]

血液がんで最も多いのが悪性リンパ腫。多くのタイプがあり生存率や治療法は異なる。日本人に最も多いびまん性大細胞型悪性リンパ腫は分子標的薬リツキシマブなどで治療。

詳細情報
番組内容
血液がんで最も多いのが悪性リンパ腫。リンパ球などががん化し全身のリンパ節や臓器で増える。自覚症状はリンパ節のしこりのほか、手足のまひ、せき、腹痛、発熱、体重減少、ひどい寝汗など。多数のタイプがあり生存率や治療法は異なる。日本人に最も多いびまん性大細胞型悪性リンパ腫は、分子標的薬リツキシマブと従来の抗がん剤を組み合わせて治療。再発した場合、本人の血液を利用した自家移植を行うこともある。
出演者
【講師】愛知県がんセンター部長…木下朝博,【キャスター】濱中博久,久田直子

ジャンル :
情報/ワイドショー – 健康・医療
福祉 – 高齢者
趣味/教育 – 生涯教育・資格

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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