〜
(久保隆)
悠遠の昔を偲ぶ古都鎌倉。
その山間にひっそりと佇む男と女の隠れ処「くわの」
(従業員)ありがとうございました!
(従業員)ありがとうございました!
このたおやかな女性こそ当館自慢の美人女将桑野厚子。
女将さんの笑顔ともてなしの心に惚れ込み何度も足を運ぶお客さんも少なくありません。
これが私…久保隆。
推理作家を目指す冷静沈着な番頭としてこの宿を取り仕切っている…つもりなんですが…
女将さん!大変です!!お客様が消えちゃいました!
(一同)え!?こっちですこっちです!見てください!このとおり!誰もいないでしょ?
(島村千秋)荷物あるじゃないですか?
(千秋)散歩じゃ…?探したけどどこにもいないんだ。
(古谷勝江)ちょっと開けてみようか?
(桑野厚子)勝江さん駄目よ!ねぇ…どんなお客様だった?田中一郎様明子様。
ご夫婦です。
わかりやすい偽名ねぇ。
(岡野珠子)甘く淫らな不倫のにおいのする二人だったわね。
(小原敏子)そういえば男の人なんかやけにそわそわしてましたよね…。
田中一郎:あの…非常口はどこかな?わかった!わかりました!ちょっといいですか?皆さん…。
非常口を聞いたってことは最初から宿代を踏み倒して逃げるつもりだったんですよ!どうですか?僕の推理。
そういうことでしょう?誰でもそう思いますよね…。
すみません…。
あ〜!じゃあ皆さん聞いてください!この荷物はどう説明するんですか?宿代を踏み倒すならこれを持って逃げるはずでしょ!?それを今考えてるんじゃない!あんただけ遅れてるの!黙ってたら?すみません…。
このように私の推理が冴え渡っている頃遠く離れた京都でも不可解な出来事が起こりはじめていました
〜
(カメラのシャッター音)〜
(清瀬しのぶ)どうかしたの?
(井村勝)写真撮ってるやつがいて何か変な男やったんですよ…。
そして同じ頃箱根でも…
〜
鎌倉京都箱根を舞台に「くわの」始まって以来の大事件がすでに起こりはじめていたのです
〜
(パトカーのサイレン)〜
(山村富雄)胸をひと突きか…。
(篠崎陽一)はい。
死亡推定時刻は深夜12時前後ということです。
(山村)身元は?
(篠崎)身元がわかるようなものは何も所持していません。
目撃者は…?目撃者ではないんですが昨夜10時過ぎにこの被害者らしき人物を鎌倉から芦ノ湖まで運んだタクシーがありました。
鎌倉から?〜お待たせいたしました。
女将の桑野厚子でございます。
(番場周平)お忙しいところどうもすみません。
あのこちら…。
箱根中央署の山村といいますが…。
どうぞ。
(山村)早速ですがこの写真を見ていただけませんか?
(山村)昨日芦ノ湖で発見された遺体なんです。
(番場)一昨日の夜10時頃その男がこの近くからタクシーに乗ったらしいんですけど見覚えありませんか?女将さんこの男…。
お前…見覚えあるのか?一昨日この宿に泊まっていたお客様です。
朝になっていなくなっていたので気にはしていたんですけど…。
(番場)荷物を置きっぱなしの失踪か…。
おまけに名前も住所もでたらめだ。
その一緒にいた女性のことを詳しく教えてもらえませんか?おい居候。
お前顔を覚えてるんだろ?似顔絵作るから署まで来てくれ。
はい。
うん…ちょっとね目が違うんですよ。
どんな風に違うんだよ!?もっとパッチリしていてかわいかったんですよ。
かわいかったの?えぇクリッとしていて…。
それで?
(咳払い)お前…真面目にやれよ真面目に!番場さんこそ!何言ってるんだ…。
〜我ながら感心。
抜群の記憶力!ジャン!あら…これ警察の似顔絵?似てる?うん…。
不可解な事件ですよねぇ。
は?鎌倉にいたはずの男が箱根で死んでいたんですよ!?おかしいじゃありませんか!別におかしくないわよ。
タクシーで移動したってわかってるんだから。
それはそうですけど…。
じゃあ聞きますけどなぜ夜中にわざわざ箱根に行ったんですか?この女の人はいったいどこに行っちゃったんですか?そもそもあの二人はどこの誰なんですか?だからそれをこれから全部警察が調べるんじゃないですか?そうよ。
別にあんたがない知恵を働かすこともないんじゃないの?働かせても何も出てこないだろうけど。
これ警察の方が置いていきました。
(千秋)「もし見かけたらご一報ください」って。
(勝江)あらまたこんなたくさん!これって14年も前の事件。
(敏子)この人京都の旅館の仲居だったんだ…。
犯罪の陰に女あり…か。
もうそんなこと言ってなくていいからこれ貼っておきなさいよ!え…。
〜お客様がいなくなったのに気づかないなんて番頭失格だよ…。
あ…いらっしゃいませ!
(井上琴美)「松田」で予約してあると思うんですが…。
松田様ですね。
いつもありがとうございます。
あの…お連れのお客様は?ここで待ち合わせることになっています。
そうですか。
ではこちらでお待ちください。
〜ありがとうございます。
ご案内お願いします。
(珠子)はい。
ご案内いたします。
ごゆっくりどうぞ。
こちらでございます。
いらっしゃいませ!
(松田俊一)こんにちは。
ごめん遅くなっちゃって。
片付けに時間かかっちゃって…。
あほんと?待った?ううん。
よかった〜。
〜ピザ80人前!?
(配達員)はい!何これ?説明して。
はい!ありがとうございます。
こちらがミックスピザアンチョビ抜きそれからこれがゴールデン・デラックスピザ。
それと…。
ちょちょっと!誰が注文したの?はい!旅館「くわの」様よりご注文いただきました。
はい!くわの様からです!
(千秋)ピザの大食い大会でもやるんですか?馬鹿。
誰かの嫌がらせよ!
(消防車のサイレン)〜な何…!?
(消防隊員)消防隊到着しました。
火災を通報されたのはどなたですか?消防隊通ります!いやいや…ちょっと!ちょっと…どうしたんですか!?隆さんどういうこと!?たぶんピザと一緒でイタズラです!誤報ですよきっと!〜とにかく誤報ですから!いい加減にしてください!いい加減にしてくださいよ!ほんとにもう!!本当に皆様申し訳ございませんでした。
申し訳ありませんでした!本日のお詫びとして後日当旅館に皆様をご招待させていただきたいと思います。
本当に申し訳ございませんでした!〜いったい誰なのかしら!?こんな嫌がらせするなんて…。
人に恨まれるような覚えはないんだけど。
嫌がらせの場合恨みだけじゃなく妬みってこともありますからね。
妬み?そうですよ。
女将さんのその美しさ…妬んでいる女性は大勢いますよ。
その美しい笑顔とか…。
ねえ?今回のことあの箱根の事件とは関係ないわよね?えぇ関係ないと思いますけど…。
あの事件も何の手がかりもないままですしね…。
男の身元もわからないし女の行方もまだ掴めていないみたいですよ。
女将さん大丈夫ですよ!僕がいるじゃないですか!お願いね…。
はい!!お風呂の掃除。
〜おっ!!
(男女のじゃれあう声)ちょっと…混浴じゃないんだけどな…。
あぁ仕方ないか。
今夜は文句言えないもんな。
(男女のじゃれあう声)お帰り!
(桑野翔太)ただいま…。
何だよどうした?元気ないな…。
算数のテスト返ってきちゃった。
あ!この前俺が教えたやつか。
どうだった?何だよ翔太。
テストの点数ぐらいでクヨクヨするな。
今回駄目だったら次頑張ればいい!…な?30点!?これこの間俺が教えたところだよな?うん。
おじさんに教わったとおりにやったら30点だった。
いやそんなわけないだろ。
え…あれ?なぁ…これ…先生の採点ミスじゃないよな?すまん!いいよ気にしなくて。
また次頑張ろうね!はい…。
〜何か?
(江田和代)つい見とれてしまって…。
風情のある造りですねぇ。
ありがとうございます!ここは一人でもよろしいんでしょうか?もちろんです。
お一人様大歓迎です!どうぞ!女将さん!はい!いらっしゃいませ。
ようこそ「くわの」へ。
私女将の桑野厚子と申します。
いらっしゃいませ!お荷物お持ちいたします。
お世話になります。
笹百合ですか…。
きれいですねぇ。
ありがとうございます。
私この時期の笹百合がとっても好きなんです。
私もです。
気持が爽やかになりますわ。
えぇ。
それではあちらのほうでご記帳をお願いします。
お願いいたします。
どうぞ。
こちらにご記帳ください。
〜
(咳込む声)大丈夫ですか?ごめんなさい。
大丈夫です。
お客様よろしいでしょうか?はい…。
これダイコン飴とうがい用の緑茶でございます。
どうぞお使いください。
ありがとうございます。
お休み前に白髪ネギの湿布もご用意いたします。
ちょっと臭いかもしれませんけど大丈夫ですよね?すみません…お気を遣わせてしまって…。
いいえ。
他に何かございましたら遠慮なくお申し付けください。
ありがとうございます。
翔太!いらっしゃいませ。
こんにちは。
お言葉に甘えちゃったんですけど本当によかったんですか?もちろんです。
お座りください。
先日は本当に申し訳ございませんでした。
今日はこの間の分もお寛ぎくださいね。
はいありがとうございます。
翔太…駄目でしょそこで遊んでちゃ。
違うんです。
私が声をかけたんです。
一緒に遊ぼうって。
そうなの?これ貰った。
あらいいわね〜。
どうもすみません。
いいえ。
(翔太)これこうやって遊ぶんだよ。
(敏子)お客様お着きです!いらっしゃいませ!失礼いたします。
お荷物をお預かりいたします。
いらっしゃいませ。
(本宮琢磨)今日はこの前みたいなことはないだろうね?もちろんでございます。
〜どうしたの?あ…いや何でもない。
行こうか。
ごゆっくり。
〜
(女性の悲鳴)大丈夫ですか!?どうしたんですか?大丈夫ですか!?お風呂に行こうとしたら誰かに押されて…。
えっ!?足を挫いたかもしれないわ。
救急箱!
(俊一)琴美!どうした!?大丈夫か?後ろから急に押されて…。
とにかくロビーに連れていきましょう。
〜力入れないでね。
ゆっくりゆっくり…。
そこの椅子に!そうね!椅子の端気をつけて!
(和代)どうかしたんですか?
(勝江)すみませんね…お騒がせしちゃって…。
〜犯人の顔ご覧になりました?珠子さん!ごめんなさい…でも犯人が旅館の中にいるうちに何とかしたほうがいいと思って!ごめんなさい…何も見てなくて。
急に後ろから押されたんですもの当たり前ですよね。
(敏子)もしかしてまた嫌がらせだったりして。
(敏子)ということはこの前のピザや消防車の嫌がらせもこのお客様に対してだったり…。
敏子さん!〜俊一さん!?〜
(ノック)何だよ?何なんだよお前!?君なのか?君がやったのか!?
(本宮小雪)知らないわよ!何してんだよお前…!どうしたんですか!?お客様落ち着いてください!どうしたもこうしたもないよ!こいつが突然入ってきて人の女に…いやいやうちの女房に襲いかかろうとしたんだよ。
どういうことですかね!?えっ?もういいからいいから出てってくれよ!まったくどうなってるんだよこの旅館は!本当にどうも申し訳ございません。
下行きましょう下!本当にどうも申し訳ございませんでした。
もういいよ!!
(ドアが閉まる音)何なんだよあの男は!?知らないわよ。
知らないわけないだろう!まさかこないだの騒ぎやさっきの階段事故君じゃないんだろうな?馬鹿なこと言わないでよ!なんで私がそんなことするの!?二人の立場わきまえてくれよ!騒ぎでも起こしたらやっかいなんだよ。
わかってるわよ。
聞かせてくださいませんか?背中を押されたというのは私の勘違いだったかもしれません。
えっそうなんですか?いろいろとご迷惑をおかけして申し訳ないと思ってます。
でも今日は休ませてもらえませんか?でも…。
わかりました。
今日はゆっくりお休みください。
失礼いたします。
足大丈夫か?うん平気。
ごめんな驚かせちゃって。
ねぇさっきの女の人もしかして…。
そうなのね?もっと追及しなくてよかったんですか?お客様よ。
でもですね僕の推測によるとあの二組のお客様は何らかの関係があるだろうしもしかしたら前回の嫌がらせとも関係してるかもしれません。
それにひょっとしたら箱根の事件とも…。
いつもどおり隆さんの推測が外れるといいわね。
はい。
〜何だこれ?〜足まだ痛みます?もう大丈夫です。
ご心配をおかけしました。
いいえこちらこそ本当に申し訳ございません。
これに懲りずにまたいらっしゃってくださいね。
はい!お世話になりました。
ありがとうございました。
お気をつけて。
失礼します。
(咳込む声)お客様!どうなさいました!?お客様!大丈夫ですか?大丈夫ですか?熱下がったみたいですね。
すみません…ありがとうございました。
いいえ。
お詫びしなくちゃいけないのはこちらのほうです。
昨夜は騒がしくてゆっくりお休みになれなかったのでは…?それは大丈夫です。
そういえば…昨日怪我をなさったあの女の方いかがですか?ええ。
今朝歩いて帰られました。
そうですか。
それはよかった。
あの…。
あの方よくここを利用なさるんですか?え?えぇ。
どうも…。
(勝江)痛い痛い!ちょっとどうしたの?
(珠子)女将さん助けて!ぎっくり腰みたいですね。
二人ともムチャなんですよ。
「まだまだ若いもんには負けない!」なんて言って。
こんな重いソファ二人で運ぼうとしてるんですもの。
ほんと困った人たちですよ。
敏子さんそんなこといいからお医者様!ねっ!はい。
ねぇ二人とも大丈夫?女将さん!おかえりなさい。
どうだった?1週間働けないそうです。
まいりましたよ!このかき入れ時にあの二人が抜けちゃきついですよ。
派遣会社にでも頼むしかないかしら?
(和代)すみません。
はい。
あっお客様!もう大丈夫なんですか?お世話になりました。
あの…もしよろしかったら私雇っていただけませんか?え?働かせてください。
お気持はありがたいんですが仲居という仕事は簡単そうに見えて結構難しいんですよ。
ご親切にしていただいたうえにこんなお願いまでしてあの…経験はあります。
お願いです雇ってください。
お恥ずかしいんですが実はちょうど働き口が見つからなくて困ってたんです。
お願いいたします。
〜わかりました。
こちらこそよろしくお願いします。
女将さん!ただし…今日は一日しっかり休んでいただいて風邪を治してから働いてもらいます。
ご恩にきます。
大丈夫なんですかね?どこの誰だかわからないし急に雇ってくれなんておかしいですよ!それに住み込みってことは住所も定かじゃないってこと…。
一緒に働いてみたいなと思ったの。
それだけじゃ駄目?駄目ってあのそんな少女みたいな顔されても…。
〜
(小泉彩乃)これが自信作のレインボー白玉よ!なんか微妙な色してません?きれいじゃない!ねぇかわいいよね?食べてみておいしいから。
は〜い。
ねぇねぇ!あの人が新人さん?はい。
すごく真面目だし仕事もできるんですよ。
それに優しいの!優しいのか!勝江さんと珠子さん二人分掛ける3ぐらいの仕事はしてますね!じゃああのぎっくり腰コンビもういらないわね!私たち三人だけでも十分です!あら!素敵な活け方ね。
申し訳ございません勝手に。
ううん。
このままでいいわ。
ほんと素敵!花が好きなんです。
女将さん!た…大変です!!何?翔太さんが万引きしたらしいんです。
翔太が!?〜翔太!どういうことなの!?ほんとどうも申し訳ありません…あら?違うんです。
翔太君は万引きしようとした中学生を見つけて止めようとしてくれたんです。
え?
(母親)あなたも謝りなさい!その時突き飛ばされてここを…。
消毒はしておきましたけど痛かったね…ごめんね。
平気だよこのくらい。
そうだったの!ごめんね早とちりして。
お母さんの早とちりはいつものことだから慣れてる。
いやだ!
(中学生)うぜえなババア!メソメソしてんじゃねえよ!!さっきからいつまでも泣いてよ!グチグチうるせえんだよテメェはよ!!
(中学生)何すんだよ!?おかあさんに謝りなさい!!すみません…。
(琴美)私も…昔はあんな感じだったんです。
母親に反抗ばかりして苦しめて。
何度か家出もしました。
そんなふうに見えないけど?馬鹿だったんです。
母親の気持なんか何にもわかってなかった。
若い頃はいろんなことがあるし…。
でも今はこんなに立派になっておかあさんも喜んでるでしょ?もう遅いんです。
ねぇ素敵なお店ね。
今度ゆっくり見せてね。
ええ是非!あのお店俊一さんが親から受け継いだ店なんです。
じゃあゆくゆくは俊一さんと二人でお店を?そうなるといいんですけど…なかなかそうもいかなくて。
どうして?彼のおとうさんは地元の名士。
彼は私を親に紹介したいって言ってくれてるんですけど身寄りのない私との結婚なんて。
だから二人きりで会うのも周りの目を気にしなきゃ…。
それでいつも別々に「くわの」に…。
はい。
「くわの」の雰囲気が大好きなんです。
どこか落ち着くっていうか懐かしいっていうか…。
女将さんの笑顔も素敵ですし!また「くわの」に来てくださいね。
今度こそちゃんとおもてなししますから。
はい!
(琢磨)何見てるんだよ?いえ別にあの…この前のことが気になりまして。
(琢磨)何だよその言い方!そっちが招待するっていうから今日は来たんだぞ!それなのに何だよその目は!帰るぞ!!お待たせいたしました。
お部屋整いましたのでご案内いたします。
申し訳ありません。
さすが!なんか仲居の達人って感じ。
〜・はい夢工房です。
はい…そうですけど。
〜またかよこれ!ったく誰だよこれ。
隆さん!萩の間のお客様見かけませんでした?萩の間ってあのご夫婦の?そうです。
二人ともどこにもいないんです。
またかよ!女将さん!どこ行っちゃったのかしらね?お風呂場にもどこにもいらっしゃいません。
この住所も名前も電話番号も全部でたらめでした。
無料のご招待だから宿代踏み倒す必要もないし…。
もしかしてまた箱根の湖?敏子さん!もう少し捜してみます。
お願いします。
ねぇ今度は警察にいったほうがいいんじゃないかしら?箱根の事件も未解決だったのにまたですか!?すみません。
番場さんこれです。
本宮琢磨…小雪…。
偽名だなこれ。
その二人が宿泊すると決まってトラブルが起きたってことですか…。
まずいな…おい!こういうのをさ居候の君がちゃんとチェックしなきゃ駄目だろ!すみません。
番頭ですから…。
今度はただの失踪だけだといいけどな。
とりあえず二人の特徴を教えてください。
はい。
〜
(パトカーのサイレン)〜
(藤堂大作)あなたが第一発見者ですよね?この上にある「清流館」の番頭の井村勝と申します。
(藤堂)あなたが女将さん?はい。
清瀬しのぶと申します。
昨夜何か変わったことはありませんでしたか?いいえ…別に何も。
(鑑識課員)藤堂さん!このマッチがあそこに落ちてたんですが神奈川県の鎌倉のなんですよ。
〜
(山越亮介)番場さん大変です!何だ!?
(六波羅浩介)ついさっき京都嵐山署から連絡が…。
嵐山の「清流館」という旅館の下の川べりで女性の絞殺死体が発見されたんです。
それで?その現場にこの「くわの」のマッチが落ちていたんです。
これが嵐山署から送られてきた現場の写真です。
〜あっこの人!え?まさか…。
今朝いなくなったお客様です。
えぇ!?
(番場)どうなってるんだよいったい!〜番場さん。
嵐山で発見された女性の指紋と「くわの」の客室に残っていた指紋が一致しました。
じゃあ殺されたのは「くわの」の客に間違いないってことか。
でもどうして夜遅くに鎌倉から京都まで移動したんですかね?鎌倉から京都の嵐山までだとタクシーと新幹線使ってどんなに早くても3時間半はかかりますよね。
あぁ。
そもそもいったいどこの誰なんだろう?とにかくこの男を探し出すんだ。
番場さん箱根の事件と同じようなパターンなんですけど同一犯の犯行ってこともあるんじゃないですかね?箱根中央署京都嵐山署と両方に密に連絡を取り合って捜査を進める。
(一同)はい!
(珠子)二組のカップルの4人はまだどこの誰だかわかんないの?えぇ。
警察何やってんの?このまま呪われた宿になっちゃったらお客さん来なくなっちゃうわよ。
もうすぐ私が復帰するっていうのにどうすんの?ちょっと待って…復帰する気なんですか?もう人手足りてますよ。
和代さんがちゃんと二人分働いてますから。
和代さん和代さんってねあなたねあの人がこの旅館の疫病神だって思わない?でも箱根の事件は和代さんが…。
〜あぁまったくもう!好き勝手なこと書きやがって。
こっちだってな遊んでるわけじゃねえんだよ!でもこれだけ話題になれば市民の皆さんからいろんな情報が寄せられるかも…。
馬鹿野郎!情報はな待ってるもんじゃねえんだよこっちから掴みに行くんだよ!
(久保田)番場さん!この男性の有力情報が得られました。
(番場)なに!?
(久保田)世田谷にある中華料理店のオーナーが2週間前から店を休んでる店長にそっくりだって通報してきたんですよ。
宮下学という男です。
(玄関のチャイム)〜
(久保田)宮下園子さんですね?
(宮下園子)はい。
北鎌倉署の久保田と申します。
六波羅です。
ご主人いらっしゃいますか?勤め先の中華料理店2週間前からずっと休んでるそうですね?〜奥さん?いやぁ!!
(久保田)奥さん!奥さん!落ち着いて!落ち着いてください!死なせて!死なせてよ!主人がいけないのよ…ダブルブッキングなんかするから!ダブルブッキング?えぇ。
つまり宮下学氏は愛人との鎌倉旅行と奥さんとの箱根旅行と同じ日に組んでたんですよ。
なんでそんなむちゃなことを…。
愛人の誕生日と奥さんとの結婚記念日が同じ日だったんだよ。
究極の選択ですね。
でまぁどっちも選べないで掛け持ちしようってことになったんだな。
でちょっと出かけてくるとか言って荷物を置いて「くわの」を出てタクシーで芦ノ湖に向かったんですね。
(番場)それでどうにか芦ノ湖までやって来て奥さんの待つコテージまでやって来たんだが…。
奥さんは旦那の浮気にうすうす気づいてたんだけども確証がなかったんだ。
それなのにこの旦那ときたらとんでもないミスをしでかした。
何なんですかとんでもないミスって?宮下学:はるかビールちょうだい
(番場)奥さんの名前と愛人の名前を呼び間違えたんだよ。
はるかというのが愛人なんですね?
(番場)奥さんの名前は園子っていうんだ。
〜
(番場)その園子さんは睡眠薬入りのビールで朦朧としている旦那を湖畔まで連れ出した。
もう戻ろうよ。
気分が悪いんだ。
あなた今日は何の日だっけ?あ…?お前の誕生日…いや…二人の結婚記念日だろ?ううんあなたの命日。
うわっ!私は園子よ。
ずっと…ずっと忘れないでね。
そ…の…こ…〜怖え…。
なぁ?だから気をつけろよお前も。
ダブルブッキングと名前の言い間違い。
何言ってんですか!俺は誠実で一途な男でしょ。
番場さんこそ気をつけてください。
あらっ何言ってんだお前。
俺が誠実でお前が…。
それで…京都の事件は何かわかったんですか?いや…相変わらず二人の身元はわからないままです。
〜
(番場)島谷貴明さん37歳。
(番場)この免許証どおりで間違いないですね。
(島谷貴明)はい。
じゃあ…これは誰なんだろう?あなたが妻と言ってた女性ですよ。
天童結衣という人妻です。
(番場)天童結衣さん。
住所は?上山町のマンションだったと思います。
あんたも…結婚してるってことだからこれダブル不倫ってことですね。
天童結衣さんが京都で殺されたってことはご存じですよね?ニュースで…。
どうして名乗り出なかったんですか?あんたが殺したからか!?いや違いますよ!俺じゃありません。
俺は殺してません。
あの…なんで逃げたかっていうとその…怖かったから…。
(玄関のチャイム)
(天童智彦)何でしょう?天童結衣さんのご主人ですね?はい。
私北鎌倉警察署の山越といいます。
天童さん…落ち着いて聞いてください。
奥さんお亡くなりになった可能性があります。
えっ…?嘘だ…嘘でしょ?
(山越)天童智彦氏38歳。
コンピューターのプログラマーです。
1週間ずっと近くに借りている仕事部屋にこもって仕事をしていたんで奥さんが帰ってきていないことに気づかなかったそうです。
夫婦仲はどうだったんだ?生真面目な仕事人間で奥さんが浮気してるなんて夢にも思っていなかったようです。
奥さんが亡くなったって聞いたときのショックといったら半端じゃなかったですよ。
少しでも捜査の役に立てばと言って奥さんの日記帳や写真を貸してくれました。
〜誰なのかな?
(番場)この男に見覚えありませんかね?見覚えあるんですね?はい。
どこの誰なんですか?女将さん…。
ここに何度かいらしたことのあるお客様です。
で名前は?名前は…。
〜〜
(松田)いらっしゃいませ!松田俊一さんですね?はい。
(番場)天童結衣さん知ってるね?はい。
彼女君のこの写真を大切に持ってたんだけどもどういう関係だったのかな?ただの友人です。
僕は3年前カルチャースクールでガラス工芸を教えていたんですがそこに生徒として通っていたのがすでに結婚していた彼女でした。
僕はただの生徒さんとしか思ってなかったんですが…。
(番場)彼女のほうが若くてハンサムで資産家の息子である君に色仕掛けで迫ってきたってことか?もちろん僕は断りました。
でも彼女のほうがしつこくつきまとってきてそれでしかたなく一度きりということで一緒にお酒を飲んだんですが薬でも入れられたみたいで…。
俊一:天童さん…何があったのかまったく覚えてないんですが彼女は僕が強引に関係を持ったと言ってきました。
君のほうがはめられたってことか?彼女はそのあともずっとその1回の関係をかさに交際を迫ってきましたが結局僕は応じませんでした。
彼女もあきらめてくれたと思ったんですが僕が琴美とつきあい始めるとまた嫌がらせを始めて…。
じゃあ琴美さんが「くわの」で階段から突き落とされたのも?
(俊一)おそらく彼女です。
消防車やピザの宅配を呼んだのも彼女でしょう。
〜
(俊一)彼女ならやりかねません。
でその嫌がらせに耐えかねて君は彼女を殺害した。
違います!僕はそんなことしていません!天童結衣さんが殺された晩君はどこで何をしてた?自分の店で朝方まで帳簿の整理をしていました。
琴美も一緒でした。
番場さん。
どうした?彼の恋人井上琴美のことを調べたんですけど意外な事実がわかりました。
わざわざ本当にすみませんね。
いいえ。
私も早く翔太君と遊びたかったから。
おねえちゃんも巻いて。
はいはい。
女将さん…ちょっといいですか?はい。
琴美さん俊一さんが警察に疑われてるのを知らないんですかね?さぁどうかしらね。
こんにちは。
あら番場さん。
どうなさったんですか?いや…彼女がここにいるって聞いたもんでね。
〜天童結衣さんが殺された場所あなた知ってますか?京都の「清流館」という旅館の下の川べりなんですけどその「清流館」…あなた知ってますよね?14年前に内縁の夫を殺害して逃走中のあなたの母親が勤めてた旅館ですよ。
14年前西本仁という板前崩れの男が京都で刺殺された。
当時容疑者江原恵美子には中学生になったばかりの娘がいた。
それが養子縁組で苗字が変わった井上琴美さんあなたですよね?おい六波羅。
だから何だっていうんですか?たしかに私の母は江原恵美子です。
それがいけないんですか?いやいけなくはありませんよ。
ただ14年前の殺人現場と今回天童結衣さんが殺された場所が同じなんですよ。
これは偶然ですかね?どうも私にはそうとは思えない。
隠してること話してもらえませんか?あなた天童結衣さんからひどい嫌がらせを受けていたようですね?俊一さんと別れろとかそういう匿名の嫌がらせ電話は以前からきてました。
でもそれが彼女がやってることだとわかったのは「くわの」で階段から突き飛ばされたあとです。
それで彼女を殺した…。
違います。
あの晩たしかに私は彼女から呼び出されました。
自分もこれから京都へ向かうから私にも来いっていうんです。
それも母が殺人を犯した場所に来いって…。
彼には14年前のこと話してないんですか?それであなたは急いで京都に向かった。
(琴美)母親のことを俊一さんにばらされたくなければ来いって言われて行くしかなかった。
天童結衣:遅かったわね。
ねぇこれ何だと思う?探偵から電話があったのよ。
すごい情報仕入れたっていうからいても立ってもいられなくてここまで来ちゃった。
でも来た甲斐があった。
あなたの母親が殺人犯だったなんてね。
ここでしょ?この場所。
ここであんたのお母さんは内縁の夫を刺し殺したんだよね?すごいよね…あんたのお母さんって。
あんた人殺しの娘なんだね。
かわいそうに…人殺しの娘じゃ絶対に幸せになれないよね?なる資格ないよね?俊一さんと結婚なんてとんでもないよね?その目怖い!やっぱり殺人犯の娘は違うわね。
俊一さんと別れてくれたらこのことないしょにしててあげる。
俊一さんもショックだろうなぁ。
結婚しようとしてた相手が殺人犯の娘だったなんて知ったら…。
ばれないうちに別れるのが愛なんじゃないの?俊一さんを私に返して。
私はあの人が好きなの。
あの人しかいないの。
あなた結婚しているんでしょ?えぇ夫はいるわ。
でもあんなの男だと思ってない。
私が好きなのは俊一さんだけ。
欲しいのは俊一さんだけ。
だからあなたはすぐに別れてね。
話はそれだけ。
遠路はるばるご苦労様
(高笑い)私はそのまま鎌倉へ戻りました。
その直後か…天童結衣さんが殺されたのは…。
(番場)琴美さんがね京都に行ったこと話してくれたよ。
(番場)天童結衣に呼び出されたらしいんだが殺しはしてないと言っていた。
…琴美はお母さんのことで脅かされて呼び出されたんですか?え…?君は彼女の母親のこと知っているのか?はい…前から知っていました。
彼女…君は知らないものだと思っているぞ。
わかってます。
でも僕にとってはまったく関係ないことですから。
彼女は彼女母親は母親です。
じゃまぁ彼女に言ってやるんだな。
隠し事をしているのは辛いだろうから早いところ楽にしてやれ。
…はい。
犯行のあった晩琴美さんとずっと一緒にいたって言ってたよな?あれは…ひょっとして彼女が犯人じゃないかと心配して嘘ついたんだな?…はいすみません。
ま…聞かなかったことにしてやるよ。
二度と嘘つくな。
〜驚きましたねその人琴美さんのお母さんだなんて…。
えぇ…。
でも関係ないわ。
琴美さんあんなに一生懸命生きてるんだから。
…そうですね。
でもね…一つだけ気になることがあるの。
何ですか?琴美さん天童結衣さんに脅かされるとわかっていながらどうしてわざわざ京都まで行ったのかしら?ですからそれは母親のことバレたくない一心で…。
それはわかるけどあんなに前向きな琴美さんらしくないなと思って。
そうですか?だってお母さんのことはいずれは俊一さんには話さなきゃいけないことでしょ?なにも京都まで行くことなんかないと思うんだけど…。
…ということはやっぱり殺害目的で行ったんですかね?そういうことでもないと思うんだけど…。
警察まだあの二人のこと疑っているんですよね…。
うん…。
(和代)女将さん。
はい?あら…。
すみませんこんな時間に…。
どうしたの?実は私…女将さんにお話しなきゃならないことがあるんです。
何かしら?天童結衣さんを京都で殺したのは私です。
え!?このこと警察に話してください。
こんなにもお世話になりながら…ごめんなさい…申し訳ございません!ちょ…和代さん!!和代さんが京都に行って天童結衣さんを殺したっていうんですか!?そんなわけないですよ。
だって和代さんあの晩ここにいたじゃないですか。
そうよね私も信じてないわ。
でも…和代さんがどうしてそんな嘘をついたのか気になるの…。
そうですよね。
誰かを庇っているのかしら?誰をですか?今警察が疑っているのは俊一さんと琴美さんです。
14年前京都で事件を起こした琴美さんのお母さん…たしか仲居さんをしてたわよね?えぇそうです。
…隆さん!明日の朝一番で京都に行きましょう!!京都!?調べたいことがあるの。
はい…。
〜ごめんください!いらっしゃいませ。
鎌倉から来た桑野と申します。
女将さんいらっしゃいますか?
(井村)はい。
いい旅館ですねぇ…。
仲居さんたちの動きもムダがないし…。
うちの仲居さんたちに爪の垢もらっていきましょうかね。
さっきの番頭さんもスマートだったわよね。
頼りになりそうだし。
爪の垢…もらっておきます…。
(しのぶ)お待たせ致しました。
女将の清瀬しのぶでございます。
お忙しいところどうもすみません。
桑野厚子と申します。
「くわの」の番頭久保隆です。
井村勝です。
どうぞ。
はい。
素敵な旅館ですね。
従業員の方々もきびきびと働いてらして…見ていて気持がいいです。
ありがとうございます。
従業員が私の宝です。
うちにもよく働く仲居さんがいたんですけど昨夜辞めてしまったんです。
この人なんですけど…ご存じないですか?…いいえ。
そうですか…。
この女性の花の活け方があちらの花とよく似ていたものですから…。
もしかしたらここで仲居をしていたのかなと思いまして…。
残念ですが私は存じ上げません。
でもこの方がどうかなさったんですか?先日この近くの川べりで起きた事件の犯人は自分だって言ってるんです。
14年前ここで働いていた江原恵美子さんの娘さんに今回の事件の容疑がかかっています。
…琴美ちゃんに!?えぇ。
その女性…江田和代さんは琴美さんのことをまるで庇うように自分が犯人だって言い出したんです。
でも…この人には見覚えがありません。
そうですか…。
〜京都に来れば和代さんと琴美さんの関係が何かわかると思ったんだけど…。
えぇ…。
でも和代さんが琴美さんの側にいた形跡はないし…。
もしもし?・
(翔太)あお母さん?あっ翔太…どうしたの?・お誕生日おめでとう。
えっ!?あっ…誕生日か!忘れてた。
ありがとう。
今ねおねえさんのお店にいるの。
おねえさんと一緒にプレゼント選んだからねすっごいおまけしてもらっちゃった!そうちゃんとお礼言うのよ。
・うん今日帰り遅いの?ううんそんな遅くならないけどお土産買って帰るからいい子にして待っててね。
うんじゃあね!翔太…私の誕生日プレゼント買って待ってるんだって。
いいとこあるじゃない!あの…翔太が女将さん思いなのは女将さんの愛情がちゃんと伝わってるからですよ。
そうかなぁ?そうですよ!〜何すんだよっ!お母さんに謝りなさい!!ねぇ…江原恵美子さんってどんなお母さんだったんだろう?それは…内縁の夫を刺して娘を残して逃亡しているような母親ですからね…。
どう考えてもいい母親じゃないでしょう。
そうかしら…。
え?琴美さんは母親思いのいい人よ。
そんなお母さんが悪い人だったら母親思いになんかならなかったはず。
そう言われてみればそうですけど…。
逃亡しててもどこかで見守っているようなそんなお母さんだったかもしれない。
ねぇもう一度清流館行ってみましょう!江原恵美子さんってどういう女性だったんですか?娘思いのとても優しい人でした。
琴美ちゃんがお腹にいる時にご主人亡くしてそれから女手一つで彼女を育てはったんです。
(しのぶ)すぐ近くの寮に二人で住んではったんですけど見てて羨ましくなるくらい仲のええ親子でした。
でも恵美子さんが西本という男とつき合い始めてから琴美ちゃんとの関係はおかしゅうなってしまったんです。
西本っていうとあの14年前の…?はぁ…。
彼女が殺めてしもうた男…ここで以前板前として働いてた男でした。
つき合い始めた頃は優しかったみたいですけどね…。
すぐに本性見せて…仕事もしんとお酒とギャンブルに狂うてしもて…。
(しのぶ)恵美子さんを苦しめてばかりいたみたいです。
やめてください!!
(西本)なんだその目は!?えっ!!
(西本)待てこらっ!!俺から逃げようなんて思うなよ…。
お前だけじゃなく…娘もぶっ殺してやるからな。
やめてそんな…琴美には何もしないで!うっせえんだよこらっ!!お待たせしました!これが恵美子さんです。
一緒に写ってるのが琴美ちゃん。
〜この指輪…?その指輪…琴美ちゃんが小学生の時にお小遣い貯めて恵美子さんにプレゼントしたものです。
江原恵美子:母さんにくれるの?
(しのぶ)おもちゃの指輪なのにとっても大切にして…。
(しのぶ)恵美子さんいつも肌身離さず持ってはったわ。
〜ね!覚えてる?「くわの」に和代さんが来た時グリーンの指輪をしてたの。
あぁ…はい。
でもすぐにはずしたわ!琴美さんに正体がバレるのが怖かったのよ。
え…っていうことは和代さんが江原恵美子…!?いや女将さん待ってください。
あの二人別人ですよ?まぁあの整形手術でもしてれば別ですけどね…。
それよ!整形!?江原恵美子さんは整形手術をして江田和代に生まれ変わった!…そう考えればすべてのつじつまが合うわ!
(客)色違いで在庫とかありますか?ありますよ。
…じゃちょっとお待ちください。
(客)お願いします。
〜
(琴美)いらっしゃいませ!〜ごめんなさいねお忙しいのに。
(琴美)いいえ。
昨日私たち京都に行ってきたの。
そうですか。
琴美さん…不思議なことがあるんだけど…。
何ですか?琴美さんお母さんのこと好きでしょう?えっ!?あなたは中学生の頃はお母さんに反抗ばかりしてた。
そんな時お母さんが殺人犯になったらもっと憎むはずよ。
…でもあなたは違う。
どうして?本当はお母さん優しい人なんじゃないの?あなたのことを側で見守ってくれてるからじゃないの?…何言ってるんですか?私の旅館で働いていた仲居の江田和代さん…おそらくあなたのお母さんよ。
〜やっぱり…!え?この人…昨日うちの店に来たんです。
その時にもしかしてって思って…。
和代さんあなたに何か言いにきたの?いいえ…。
きっと別れを言いにきたんですよ。
話したいこと山ほどあったのに何も言えなかったんですよ。
和代さん天童結衣さんを殺したのは自分だって言っていなくなったの。
え…!?でも私は和代さんはあなたを庇ってるとそう思ったんだけど。
私を?私は何もしてない…!ほんとに殺してなんていないんです!ね琴美さん…今回の事件のことでまだ何か話してないことがあるんじゃないの?それが何なのか話してちょうだい!このままだったらあなたのお母さんどうなるかわからないわ!あなたを犯人だと思っている以上その罪を被って死ぬかもしれないのよ!琴美さん…誰かを庇ってるんですね?俊一さん庇ってるんでしょう?そうなんですよね!?〜
(俊一)いらっしゃいませ。
こんにちは。
天童結衣の夫の…智彦です。
俊一さんが天童結衣を殺したんですね?それはわからない。
でも私でないならもしかしたら彼かもしれないと思って。
まずそのへんからあたってみましょう。
えぇ。
俊一さん今どこに…?お店にいます。
行きましょう。
真弓さん俊一さんは?
(真弓)出かけました。
出かけたの?はい。
30分くらい前に天童さんという男性の方が訪ねて来てそこでお話してたんですけどついさっき一緒に出かけました。
天童って天童結衣さんのご主人ですよね?何しに来たんだ?あぁちょっと!〜何だこれ?〜これだ!どうしたの?女将さん犯人がわかりました。
天童です!どういうこと!?この紙縒りですよ。
これ「くわの」の表にも京都にもあったんです!天童は奥さんの行動をずっと監視してて最後に殺したんです!あっひょっとしたら俊一さんに罪擦り付けて殺す気かも…!えっ!?もしもし?番場さんお願いします!あ番場さん。
番場だよ。
あすみません。
はい電話代わりました。
番場さん久保です。
久保隆です。
なんだ居候君か。
俺はなお前と遊んでる暇なんかないんだよ。
いいですか番場さん!犯人わかりました。
何!?犯人は天童結衣の夫です!松田俊一さんに罪を擦り付けて殺害するつもりなんです。
さっきまで俊一さんの店にいたんですが二人でどっか行っちゃいました。
いろんな事件が起きた現場には必ずといっていいほど犯人の痕跡があるんです。
「くわの」の表それから京都の殺害現場にもあったんですよ。
あ…とにかく今回ばかりは僕の言うこと信用してください!犯人は天童結衣の夫です!わかった…居候君。
お願いします!我々も捜しましょう。
えぇ。
〜番場さんです!はいもしもし?たった今匿名の電話があった。
天童智彦と松田俊一の乗った車が逗子方面に向かってるらしい。
逗子には天童の実家が持っている別荘がある。
どうやらお前さんの言ったとおりかもしれんな。
〜事件に関する重要な証拠ってどこにあるんですか?そう慌てないで。
琴美が犯人なんて嘘ですよね?あっ!そこから動かないで。
見て。
〜このスイッチを押せばすべての矢が君に突き刺さる。
どうして…。
どうして?お前自分がしでかしたことわかってないのか?お前結衣を僕から奪っただろ?俺は何もしていない!〜今のは足元。
残りの3本は間違いなく君を射抜く。
(智彦)お前は結衣の心を奪ったんだよ!島谷の馬鹿はまだいいよ。
結衣が夢中になったのは身体だけだから。
遊びだから。
お前は何?結衣の心をもってっちゃったわけ?まずいよねそれって!とってもまずいよね!夫である僕的には許せないよね。
プライド踏みにじられてぐちゃぐちゃだよね。
俺と彼女の間には何もない。
写真を持ってたんだよ結衣は!!
(智彦)お前なんかの写真隠し持ってたんだよ!3分の1は切り刻んでやったよ。
もう3分の1は燃やしてやったよ!残りの3分の1は警察に渡してやった。
あんたが彼女を殺したのか!?当たり前でしょ。
僕は結衣の夫だよ。
あんな出来損ないの妻を処分するのは夫である僕の役目だ。
夫はいるわ。
でもあんなの男だと思ってない。
(結衣)私が好きなのは俊一さんだけ。
(高笑い)〜あなた!?
(智彦)苦しい?苦しいだろ?でもね僕のほうがもっと苦しかったんだよ。
僕は男だよ!男らしいだろ?さあもう逃げられないぞ!
(智彦)結衣が死んだのはお前のせいだ。
お前さえ現れなければ結衣は死なずにすんだんだ。
お前が結衣を殺したんだ。
この人殺し野郎!
(智彦)死んで詫びろ。
〜逃げて!何だお前は…!?おい!おいやめろ!
(智彦)来るな!!和代さん!
(智彦)来たらこの女殺すぞ!お前こっち来い!殺してやる。
〜早く来い!わかった。
帰るよ帰るよ。
貴様!〜離せ!離せ!
(番場)連れていけ!
(山越/六波羅)はい!大丈夫か?警察に電話をしてこの場所を教えてくれたのは和代さんあなたでしょ?あなたは琴美さんの大切な人を命がけで守ったんですよね?いつもあなたはこうやって琴美さんのことを見守ってきた。
琴美さん…14年前の事件の真相を話してちょうだい。
まだ何か隠してることがあるでしょう?もういいんです!自首します。
私が14年前あの男を殺しました。
私が江原恵美子です。
刑事さんお願いします。
和代さん!あなたは娘さんへの愛し方を間違ってる。
琴美さんあなたもこのままでいいの?あなたたち二人この14年間とっても辛かったでしょ?もう終わりにしましょうよ。
親子なのに名乗りあえないなんておかしいわ。
抱き合えないなんて悲しすぎる!私です。
琴美!私が…14年前あの男を殺したの。
やめなさい琴美!私はあの男も許せなかったけどあんな奴の言いなりになってるお母さんが大嫌いだった!だからあの夜家を出ようとしたの。
西本仁:おい!何やってんだお前!
(西本)どこ行くつもりだ!?ほら!きゃっ!琴美!!来ないで…来ないでよ!刺せるもんだったら刺してみろ!待てこら!!〜待て…ってんだこら!やめて!近寄らないで!来ないで!貸せって言ってんだ!おらっ!!〜琴美!〜琴美それを渡しなさい!それを早く!お母さん離してよ!あっ!おか…お母さん!〜いい?よく聞くのよ!これはねみんな全部私がやったことなの。
母さんが悪かったの。
母さんが悪かったの母さんが…。
お前はちっとも悪くないのよ。
お母さん…お母さん…。
琴美…約束して。
母さんの分も精一杯生きていくって約束して。
必ず幸せになるって…幸せになるって約束して。
わかったね?お母さん!琴美!
(号泣)お母さんは何もやってない。
全部私がやったの。
琴美の人生はこれからでした。
やっと始まったばっかりでした。
この長い人生人殺しの烙印を押されて生きていかせるわけにはいきませんでした。
もし私が罪を被らなければいずれ警察は琴美に気づいてしまう。
だから逃げたんです。
取り調べを受けたら顔の傷も説明できませんしだから逃げるしか…逃げるしかなかったんです!顔の傷を消すために整形手術をしたんですね?名前も顔も今までの人生も人並みの幸せもすべて捨ててあなたは一人で生きていくしかなかった。
それぐらい当然です。
この子は私の子です。
私が産んだ子ですもの。
お母さん…。
琴美…お前を一人にするのは不憫だったけどでも母さん逃げててちっとも不幸せなんて思わなかったよ。
お前との約束と…これ…これがあったもの。
これを支えにして生きてきたの。
「くわの」で再会したときは驚いたわ…。
少しでも側にいたくて働かせてもらった。
琴美約束を守ってくれてた。
幸せになろうとしてくれてた。
精一杯生きててくれた。
嬉しかった…。
この14年間どんな無様な姿でも生きててよかった死ななくてよかったって思った。
それなのに…。
お母さん…。
〜琴美…。
〜どうしますか?もちろん待ってます。
待つのはそんなに長い時間にはならないさ。
あの二人が耐え続けた時間に比べればあっという間だよ。
〜和代さん琴美さん今度は三人で「くわの」に来てくださいね。
心よりお待ちしてます。
(和代)ありがとうございます。
〜今度こそ間違いない。
(敏子)何が?懸賞小説だよ!自信作!賞取るよ力作!
(珠子)なんで自信あるの?まあ今までは推理作家といっても毛が生えた程度でしたけど…。
あんた毛が生えたの?やっと…。
やっと…?これですよ見てくださいよ!わかってるわよ。
汚い字ね。
お客様がいらっしゃる時間です。
(珠子たち)はい。
ん?どうしたの?作家人生かけた力作出来上がりました。
そう。
出すだけ出したら?はい!〜お似合いですよね…。
我々もいつかああいうふうに…。
ん?何か言った?〜女将の桑野厚子でございます。
2015/03/18(水) 13:00〜15:00
テレビ大阪1
佐野洋サスペンス「密会の宿4〜京都・箱根・鎌倉不倫カップル失踪殺人〜」[字][解]
京都、箱根、鎌倉を結ぶ、「くわの」始まって以来の大事件に、美人女将と推理作家志望の番頭が挑む!
詳細情報
番組内容
北鎌倉の宿『くわの』には、人目を忍ぶ男女が多く訪れる。「田中一郎・明子」の偽名で宿泊していた不倫カップルが姿を消し、男性が箱根で刺殺体となって見つかった。騒ぎが収まる間もなく、「本宮琢磨・小雪」と記名した宿泊客もいなくなり、京都で女性が絞殺体で発見される。小雪は偽名で本名・天童結衣、2人はW不倫旅行中だった。相次ぐ失踪殺人事件に女将・桑野厚子と番頭・久保隆らは頭を抱える。
番組内容続き
その頃、謎の多い女性・江田和代が宿を訪れて…。
出演者
桑野厚子…岡江久美子
江田和代…栗原小巻
久保隆…東幹久
井上琴美…遠山景織子
天童結衣…大西結花
松田俊一…大橋てつじ
天童智彦…神保悟志
島谷貴明…菊池隆則
井村勝…池田政典
西本仁…志水正義 ほか
原作脚本
【原作】佐野洋
【脚本】深沢正樹
監督・演出
【監督】和泉聖治
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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2/0モード(ステレオ)
解説放送あり
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