日頃から地域でのつきあいを大切にし支え合う関係を作りましょう。
「NHK俳句」第3週の選者は櫂未知子さんでいらっしゃいますけれども今日の兼題は「種袋」という事で今お持ちでいらっしゃるんですね。
「種袋」というのは春の来た喜びを感じさせてくれる季語ですよね。
こう振ると音がするんですがまたそれは後で。
種袋を売っているお店は何て言うかご存じですか?種物屋ですね。
今冒頭の句がありました。
はい私の句にもありました。
「種物屋」もちゃんと季語になっているんですね。
一年中あるけれどもやはり春になると存在感が感じられるという事で春の季語になっていると。
「種袋」やっぱり春の来た喜びのある季語だと思われますね。
実はですねこれちょっと音を聞いてみましょうか。
(種袋を振る音)この音がいいですね。
いい音ですね。
大きな種は大きな音。
小さな種は小さな音がします。
実はこれ自分で取った…去年秋取った。
ご自身でお取りになり…。
そうなんです。
更に…。
このイラストが実は…。
この袋も…。
もちろんです。
この袋もご自分で。
そう。
わびしく自分で作りました。
この絵を描いて下さったのが…。
描かされました。
今日のゲストご紹介致します。
ご自身で今おっしゃいましたけれどもイラストレーターの村松誠さんにお越し頂きました。
どうもありがとうございました。
いえいえ。
絵も描いて頂きありがとうございました。
村松さんといえば本当に皆さんよくご存じのこちらご覧下さい。
猫や犬のイラストで人気漫画雑誌の表紙を担当されていましてもうこの表紙を描き続けまして何年に?34年目か…。
5年にはならないと思いますけど34年ですね。
犬や猫の背景にいつも季語を描いて…。
必ず表紙に俳句が出てましてその季語に合わせて絵を背景を描くようにやってます。
チューリップの中のこの猫。
櫂さん猫お好きですよね。
猫大好きですね。
猫を見るとなでたくなるというかね。
この今のイラストにあったチューリップの中のチョウチョウ。
猫は捕まえたがってるあの目に…。
あの目が本当そうですよね。
その村松さんといえば実は俳句歴も長いんですね。
ちょうど表紙始まった頃だから同じぐらいですね。
34年にはなってないかもしれないですけど32年ぐらいですかね。
ほとんどプロの俳人ですね。
いや〜長いだけです。
「種袋」という季語はいかがですか?「種袋」は知らなかったですね。
季語になってるっていうのは知らなくて。
この年になってねいろいろ勉強になります。
今回実を言いますと「種袋」をどういうイメージなのかイラストを描いてきて下さったんですね。
これです。
今家庭菜園がはやってますからそういう人が…。
専門の農家の人が買ったりするものじゃなくて普通の家庭の人が買う袋はこういう感じかなと思って描きました。
何の花とかあるいは野菜であるとかいう事は特定されてませんよねこの絵では。
大体発芽する時は双葉からこう成長しますからどんな野菜でもどんな花でもこの絵だったら使えるかなというふうに考えました。
全ての種袋に使えるイラストという事ですね。
その内容をちょっとここに書けば。
ひまわりだとかにんじんなどと書いとけばいい訳ですね。
1点で済むかなと。
村松ブランドの種袋という事になりますね。
よろしくお願いします。
また後ほど俳句もご紹介下さい。
よろしくお願い致します。
それでは入選句ご紹介してまいります。
まず1番です。
「強運の妻」ですよ。
とうとう新しい時代の女性が出てきたなという感じしません?「強気なる」ではなくて運がいいんですねこの奥さんは。
その妻が選んだ種袋なのだから絶対に発芽するし満開になると。
そういうたくましさのある句だと思います。
非常に新しい味わいのある「種袋」の句ですね。
種は全部が発芽すると思ったら違うんですね。
違うんです。
袋ごとに発芽率って書いてありますから。
そうですか。
この奥さん全部咲かしちゃうんです。
すばらしいと思います。
仲のよいご夫婦ですきっとね。
では2番です。
買う方が振るという句は多分2,000句ぐらい今回の応募句にはあったんですね。
しかし売る側も振るというのは多分この句だけだったんじゃないでしょうか。
面白いですね。
面白い句ですよね。
村松さんはこういう句はどうですか?振るっていうのはみんなやるところが面白いなと思って。
多分全員やりますね。
なぜ振るのかなと思っているんですけど。
中が見えないからじゃないでしょうかね。
でも音がまたいいですね本当にね。
3番です。
少し不思議な内容の句なんですね。
種袋自身が雨音を聞いているようななんとも説明のしづらい句なんですけどこの「やはらかき」っていうのが春らしくていいですよね。
何か「やはらかき」っていうお言葉が好きだって…。
よく使います。
よく使うそうです。
「やはらかき誠さん」という感じで。
そうですね。
違いますが…。
(笑い声)今度は4番です。
「売り出しにしては小暗き種物屋」。
「小暗き」ですね。
失礼しました。
「売り出しにしては小暗き種物屋」。
種物屋のイメージといいますと村松さんはどんなイメージ持ってますか?僕は種物屋を知らないんでね。
近所にもそういうのはないし。
まあ燃料店みたいなものはね昔昭和の僕の子どもの頃はありましたけど。
地方に行って何かこう…野山のそういうような農家のたくさんあるような所にあるんじゃないかな。
僕は知らないですね。
種物屋っていうイメージが湧かないです。
私の郷里にはありまして何となくこういう感じなんですよ。
セールをするというのにあんまりにぎわっていないし。
この「小暗き」という言葉が薄暗いという意味なんですけど。
私間違えましたけどこれ随分古い言葉なんだそうですね。
「源氏物語」の時代からある言葉でこれを持ってきた辺りがこの句のそれこそ売りでございますね。
なるほど。
今度は5番です。
非常にシンプルな作品ですね。
ラブレターを開くように封を切る。
しかしこの恋が実るのかどうかは分からない。
ちゃんと咲いてくれるかどうかは分からないというね一種の危うさもある句でなかなか面白い句だと思いました。
外れたりしてね。
ドキドキ期待感もある。
そうですね。
振られる手紙かもしれないですし。
6番です。
「お見合ひの写真」って言われてびっくりしました。
まさか「種袋」で。
ねえ。
村松さんどうですか?お見合いはなさった事は?ないですけどね。
実際に会うと驚いたりなんかするって事が…。
奇跡の一枚だったりしますもんね。
修整をしてね。
ずらっと並んでいて美しい方だなと思って会ってみようかなと思って会ってみたらというような…。
逆の場合もあるけどね。
そうですね…。
あるんですか?どうかね?これもなかなか気の利いたといいましょうかユーモラスな句だと思われました。
そうですよね。
種袋の写真がいっぱい並んでいる中で選ぶんですね。
そうなんです。
今度は7番です。
「耳元花ざかり」ってちょっと不思議な表現でしてね振ってる句はたくさんあるんですが耳元でいきなり満開になったかのような気がするというこういう句は私初めて見ました。
いいですね。
いいですよねめでたくて。
一番好きですね。
お好きですか。
今度は8番です。
間違っても自動ドアなどはないんですよ。
昔は戸の立てつけ悪かったですよね。
そうですね。
雨戸なんかもカンカンカンしましたけど。
大変でしたよね。
サッシもなかったし。
そうですね。
何か開けるのにコツがいるっていうんですか?そういう時代のちょっと古いお店っていうんでしょうか。
そういうのを感じさせてくれてで修繕もしないんですよこの店は。
この何とも言えず楽しい句ですね。
種物屋ですね。
まさにイメージが。
まさしくですね。
ほかの店では無理だと。
では今度は9番です。
この「乾ぶ」というのがちょっと古い言葉をうまく使ってくれていまして普通は「乾く」って言いますよね。
それを「乾ぶ」とした辺り…何て言ったらいいんでしょう。
今の言葉にはない叙情が生まれたように思うんですね。
種袋自身が潮騒を聞いているかのようなそんな切なさもちょっとありますね。
すてきな作品だと思います。
以上が入選句でした。
特選三句をご紹介する前に「俳人のことば」をご覧下さい。
斎藤さんは師山口青との思い出を大切にしまっています。
ある新聞社で企画がありまして山口青先生と私がその競詠を行う事になりました。
場所は上野の不忍池。
その時青先生は「モノレールはるかをゆけり蓮は実に」という句をお作りになりました。
先生も私も「蓮は実に」という言葉を下五に置いて絵合わせをして両方で合点がいったというふうに私は感じまして大変喜んだ事を覚えております。
山口青先生は昭和63年12月15日にお亡くなりになりました。
その15日前後になりますと「今年はいろいろお世話になりました。
来年もよろしく」。
挨拶に回って歩く人たちが増えてきます。
名残というものそれから深い慈愛というものそういうものの2つをこの句に込めて詠んだつもりです。
特選句です。
まず第三席はどちらでしょう?鈴木一成さんの句です。
二席の句はどちらでしょう?芝田太さんです。
一席です。
宗平圭司さんの作品です。
いや〜「強運の妻」というふうに言われると恐らく地上最強の妻といいましょうかね何をやってもきっと全ての物事がうまくいくんでしょうね。
それとそういう奥さんと種袋をセットにしたっていうのがまずないでしょうね。
類句がないですね。
全くないと思います。
で一席という事です。
今週の特選でした。
更に今年度のここで年間大賞を発表致します。
櫂さん今年度特選になった作品の中から最もよかった句はどちらでしょうか?鄭元彪さんの句です。
「鬱」という字は画数が多いですよね。
その字を一生懸命書こうとする間に水中花はあっという間に開いてしまう。
漢字の画数そして水中花をセットにした句というのはおよそ見た事がない。
そうですね。
水中花って意外と早く開くんですよね。
実際にスタジオでも。
実験致しましたよね。
ですからこの句の気の利いたところといいましょうか非常に斬新な発想というのはやはり評価したいと思います。
台湾の鄭さんおめでとうございました。
では本日の入選句とそのほかの佳作の作品はこちらの「NHK俳句」テキストに掲載されます。
俳句作りのためになる情報も参考になさって下さい。
続きまして…入選までのあと一歩を教えて頂きます。
今日は推敲のしかたをちょっと考えてみたいと思います。
「朝市で」の「で」があまりきれいではないんですね。
響きがあまりきれいではない。
そしてちょっと場所の説明のように聞こえてきますね。
日常的に使いますもんね。
ですからここはまず切れ字にしてみます。
「朝市や」に致しました。
ところがそうしますと「けり」もあるんですよね。
切れ字が2つあるとちょっとうるさいという事で「探しけり」を「探したる」にします。
ところがまだ中七が…。
「まず花種より」8文字でした。
八音ありますね。
中七女としてはどうしてもここを直したい。
ですからあっさりと「まず花種を」にします。
そうしますと非常に形の整った内容がうまく生かされている五七五になると思います。
こんなふうに1つずつあれなんですね推敲していくといいっていう事なんですか?やはり一字一音が大事ですから俳句というのは。
やはり一点一画漢字書く時におろそかにしないのと同じように丁寧に直して頂きたいなと思いますね。
どうぞ参考になさって下さい。
では続きまして今度は櫂さんの年間テーマの「日本の季語遺産」です。
今日は「種袋」ですね。
春が来た時やはり人は何をしたいと思うか。
つまり生き物も植物も全て活動を始める時ですよね。
そうするとどうするか。
「あっ花の種をまきたい」。
あるいは最近は菜園がはやってますので「野菜を作りたい」と思う訳ですよね。
その時に「あっやはり種が必要である」と。
かつては農家の方たちは全部自分たちで種を用意してしまっておいて春になって使ったといわれていますけれども今はみんな売ってますので。
そうですね。
この種袋を買ったり手に入れたりする事によってまた新たな植物っていうんですかその命を育んでいく。
そういう季語だと思うんですねこれはね。
そこでこちらの句をご紹介頂けますか?種袋を振っている句はたくさんありましたけれども普通はカサカサした音が聞こえるっていうパターンが多いんですね。
それに対してこの句はなんと「水音」という。
「水音」が出てくるんですね。
全く逆の発想をしていますよね。
この「水音」は果たして何だろうと。
つまりそのもしかしたら春の川の流れかもしれませんし雪解水の音かもしれませんしあるいはこの種袋の中にある…何て言うんでしょうね?生命力っていいますかね。
そうね。
そんなものを感じさせてくれるのかなと。
水を呼び込んでるんですかね。
水がないと発芽しませんからね。
発芽しませんからね。
なかなか大人の句だと思います。
とても繊細な句でした。
ありがとうございました。
今度は村松さんご自身の作品俳句ですね。
ご紹介頂けますか?いいですか?どうぞ。
どういう状況でお作りになられましたか?この出演の話があった時にたまたま表紙で折り紙でおひな様の絵を描いてたんですね。
それで俳句紹介してくれという事を言われまして「あっ折り紙でこんな句があったな」という事ですぐこれに決めました。
なかなかしゃれた句ですよね。
「ことりと」なんていうねオノマトペっていうんですがそれが非常にうまく効いてますね。
紙の感じが出てるんです。
あ〜なるほどね。
ただ傾ぐものなのかな?そう。
そこなんですよ。
それで実際に折り鶴を折ってちょっとこれが本当かどうかという試しを作って…折り鶴を作ったんですけども。
もともと折り鶴は傾いでるのね。
もう一度。
あそうですね。
まっすぐこうなかなか…。
さっきちょっと開いてやったんで立つんですけれども大体傾いでるんですね。
そうですね。
言われてみればそうですね。
そうですね。
それでこれはうそかというとそうでもなくてちゃんとここを開いて置くとまっすぐ立つ事は立つんです。
なんとすばらしい。
そこに春風が…。
春風が吹いてきてこれでコトッと。
例えばシュッシュッ…っていう感じでしょうか。
「ことり」って感じじゃなくす〜っといきましたね。
ちょっと強かったでしょうか?強いですね。
そういう繊細な感じを詠みたかったんですけれどもなかなか実際は違うなというような感じはしました。
何となくしゃれた句ですよね。
ですよね。
中七がいいですね。
そうですか。
中七を褒められました。
こういう形で本当に目の前にあるものそばにあるものでやっぱり詠んだり描いたりって事なさる?そうですね。
結構いろんなもの置いてありますからね題材には事欠かないですけど今回は折り紙をちょうどたまたまやってましたんで。
すごく器用でいらっしゃいますよね。
器用です。
絵描きは大体器用です。
器用ですか。
デッサンをする事っていうのもやっぱりイラスト描く前にはあるんですか?まあデッサンをちゃんとやる人もいれば感覚でスッとやっちゃう人もいるしまあ人さまざまですけども大体絵がちっちゃい頃から好きですからねみんな。
じゃあ俳句と絵とつながっていくものってやはりありますでしょうかね?俳句は言葉で絵を描くっていうような感じがとてもするのね。
なるほど。
だから絵描きの人俳句うまいんじゃないでしょうかね。
私を除いてね。
いやそんな事ない。
私の師匠がそうです。
そうですか。
どうもありがとうございました。
それではここで投稿のご案内をさせて頂きます。
新年度から選者がご覧のように替わります。
櫂未知子さんには引き続き第3週の選者をして頂きます。
こちらがその兼題の「起し絵」ですけどこれは立版古。
…とも言います。
立版古というのは関西の言い方だったようですが起し絵というぐらいですから立体紙芝居のようなね。
これは北斎の「赤富士」ですけれども。
奥行き普通のはもうちょっと短いんですがこれはちょっと特殊でして…。
ジャジャジャジャジャン!裏もあるという。
わあ〜すごいですね!裏の富士もあるという。
これもちろんご自身で立てられた訳ですよね。
はい。
平面になっていたものを切りまして一生懸命ピンセットを使ったりのりを使ったりして一生懸命貼って立てていく訳ですね。
どれぐらい?そうすると相当時間かかったんじゃないですか?これはちょっとダブルでしたので4時間半ぐらいかかりました。
でもやはり季語を組み立てるというか作るのが好きなんで。
今日の種袋もそうですしこちらもそうですけど。
この「起し絵」は意味といいましょうか…。
夕涼みの時にこの後ろにロウソクをともしまして皆さんで眺めて楽しんだようでございますね。
実は失われた季語だと思われていますが今でもちゃんとありますので是非皆さん一句作って送って頂きたいなと思います。
先ほどの種袋に比べるとこちらはちょっと作るの大変なんですけども是非試して頂きたいなと。
作る楽しみもありますもんね。
これ季語としてはそうすると夕涼みですから夏という事ですね。
夏になります。
ありがとうございました。
実は私4年間この番組の司会を担当させて頂いたんですけども今日が最後になりました。
ありがとうございました。
本当に先生ですとかゲストの方のお話伺うのとともに毎回毎回どんな作品が選ばれるのか本当にワクワク皆さんと作品を通してお目にかかるのが本当に楽しみでワクワクしている間にあっという間に4年間過ぎてしまいました。
本当にどうもありがとうございました。
なんと…。
今の様子を。
最後って聞いたんで。
サラサラと。
それを描いてて下さったんですか?そうです。
まあ!お疲れさまでした。
ありがとうございます。
似顔絵です。
実物よりかわいく…。
ありがとうございました。
仲良しで描いて下さいました。
村松さんありがとうございました。
そして櫂さん新年度もどうぞよろしくお願い致します。
どうもお世話になりました。
ありがとうございました。
では失礼します。
ごめんください。
2015/03/18(水) 15:00〜15:25
NHKEテレ1大阪
NHK俳句 題「種袋」[字]
選者は櫂未知子さん。ゲストはイラストレーターの村松誠さん。題は「種袋」春を感じた時、人は植物に目を向ける。種袋は春への思いが詰まった季語。振って音を聞く楽しみも
詳細情報
番組内容
選者は櫂未知子さん。ゲストはイラストレーターの村松誠さん。題は「種袋」春を感じた時、人は植物に目を向ける。種袋は春への思いが詰まった季語。振って音を聞く楽しみも。桜井洋子アナウンサー
出演者
【出演】村松誠,櫂未知子,【司会】桜井洋子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
趣味/教育 – 生涯教育・資格
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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