にっぽん紀行「のれんに思い託して〜岡山 真庭市勝山〜」 2015.03.18


風情がある町並みですね。
案内人の伊藤かずえです。
私が来ているのは岡山県真庭市勝山地区です。
この街道はのれん街道と呼ばれていて100軒以上の軒先にのれんがかけられているんです。
のれんといえば商店などにかけられているものと思っていましたがこの町では一般のご家庭にものれんがかけられているんです。
その一枚一枚にはどんな思いが込められているんでしょうね。
ではちょっとのぞいてみましょう。
岡山県真庭市勝山地区は中国山地の山あいにある人口8,000人の町です。
真ん中に見えるのは瀬戸内海にまで続く旭川です。
江戸時代物流の要高瀬舟の発着点だった勝山地区。
町は川と共に栄えました。
中国山地の良質な鉄や木材と瀬戸内の塩や海産物が行き交う商業の町としてにぎわいました。
しかし昭和に入り舟が役目を終えるとともに町も活気を失っていきました。
人口はピーク時のおよそ半分にまで減りました。
町に活気が戻り始めたのは19年前。
若手の有志がのれんで町を盛り上げようと立ち上がりました。
当初は商売繁盛の願いが込められたお店ののれんが大半でしたが次第に一般家庭にも広がりそれぞれの思いが込められるようになりました。
800メートル続くのれん街道。
あっ面白そうなのれんですね。
コーヒー片手に鬼が笑っていますよ。
お邪魔します。
喫茶店のようですね。
でも何で鬼なんですか?私の祖父が絵描きだったもんですからそれをモチーフにした鬼さんの絵が残ってたので是非それを使わせてもらいたいという事でのれんにさせて頂きました。
よいしょ。
のれんの持ち主は片山方司さん62歳です。
デザインの基にしたのは画家だった祖父が50年ほど前に描いた鬼の絵です。
この絵が片山さんの人生を支え続けてくれたんだそうです。
片山さんは昭和27年に生まれました。
両親が共働きのため家を空ける事が多かったといいます。
そんな中祖父の五六さんがいつも一緒にいて親のように接してくれました。
高校を中退し憧れの京都で商売を始めたいと家を出た時にも優しく後押ししてくれたのは五六さんでした。
さみしいというかこれはいかんなという…。
五六さんは40年前に亡くなりましたが片山さんは鬼の絵を形見として大切に保管してきました。
残念なんですが…。
その後京都で開いた喫茶店はやむなく閉店しなければならなくなりました。
決して平たんな人生ではありませんでしたが見守ってくれたのはいつも笑顔の鬼の絵でした。
12年前に勝山に戻ってきた片山さん。
再び店をオープンしました。
のれんのデザインにと真っ先に思い浮かんだのが鬼の絵でした。
こんばんは。
いいですか?すいません。
これ…。
あ〜いつもすいません。
無農薬のレモン。
これはちょっと後で。
いつもどうもどうもすいません。
今では常連客も増え勝山の人たちに親しまれる店になりました。
もうこのあとはしばらくはゆっくりできるんですか?ゆっくりする…ですね。
本当は今週ゆっくりするつもりだったんですけど。
片山さんにはとりわけうれしい瞬間があります。
お客さんから鬼の絵に似ていると言われる時です。
そういえば太い眉毛や丸い目そっくりですね。
片山さんも地元の人たちを温かく見守っているのでしょうか。
私は好きですけどな。
よそが地味だからちいと派手に思うて。
お〜!
(拍手)超ピッタリ。
すごいいい!いい!30円。
そこのポストとは一緒の色になった。
そうよな。
わあ〜きれい。
かわいいね。
かわいい。
こんな感じ。
ちょっと持ってくるカメラ。
よかったな。
すごいな〜。
いいよ。
バッチリ!それこそ勝山一ののれんになる。
うれしい!うれしい!のれん街道の真ん中にあるお宅。
壁に昔ながらの風情が感じられる民家です。
こちらにものれんがありますね。
川面に映る花火ののれんです。
どんな思いが込められているのでしょうか。
町で住宅設備業を営む行藤修久さん55歳。
ただいま。
家のたたずまいにぴったりと活動が始まった19年前からのれんをかけ続けています。
のれんのモチーフになった場所を見せてくれました。
きれいじゃろ。
これ本当きれいなんよな。
小さな頃から家のすぐ傍らにあった旭川。
行藤さんは毎日のように遊んでいました。
あ〜懐かしい。
懐かしいな。
行藤さんはこれまで5枚ののれんを作ってきました。
1枚目ののれんは旭川がモチーフです。
今よりも水量が多く青々と輝いていた頃の川の色をイメージしました。
4年後行藤さんはのれんを作り替えました。
デザインはシャボン玉。
これも川での思い出です。
小学生の娘と息子とよく河原でシャボン玉で遊んでいた光景をのれんに刻みました。
このころからのれんは家族のその時その時の歴史を刻むアルバムのようなものになっていきます。
3枚目は高校生になった娘が主体となって作りました。
大きなハート。
それを引き立てる小さな白い円は川面に映る雪景色です。
子どもたちが独立し夫婦2人だけの生活になってから作った4枚目になると趣が少し変わります。
のれんに表現したのは手持ちの花火が川面に映る様子。
子どもたちが小さかった頃の光景に時は遡りました。
川しか最初に頭になかったものがだんだん変化してさっきあったハートのとかシャボン玉とかだんだんだんだんこう年を取ってくる事によっていろんな考え方が変わっていってやがてこういう花火のような形になっていくという何か…時代の流れというか変遷というかそういうようなもんが自分の中でもこうやって改めて見るとあるなっていうのを思いますね。
行藤さんは今年4年ぶりにのれんを作り替える事にしています。
しかし気になる事がありました。
のれんが日ごとに色あせるにつれ思い出も色あせてしまう寂しさを感じていたからです。
(行藤)のれんはやっぱり色あせてさみしくなるわね。
家族今2人住んどって息子や娘がこっから巣立っていったりいなくなるっていうさみしさと同じようなもんかもしれんね。
行藤さんは色あせる事のないのれんを作りたいと思いました。
勝山ののれんは全て一人の職人が手がけています。
デザインから染色まで思いを受け止めながら一枚一枚手作りで仕上げます。
この春新たに20枚ののれんが誕生します。
黄色とオレンジが…。
あっきれいに出てるじゃん。
うまくいってる。
こことつながってる。
ちゃんと。
ほら。
ねえ。
いいねここね。
きれいにいったわ。
この日町の集会場に多くの人が集まりました。
おはようございます。
おはようございます。
おはようございます。
新しく出来たのれんを町の人にお披露目する会です。
のれんに込めた思いを共有する事でみんなで町を盛り上げていきたいと10年前から始まりました。
(加納)おにのすみかさんののれんです。
あの鬼ののれんです。
4年ぶりに作り替えられました。
随分色鮮やかになって鬼もうれしそうですね。
(加納)おじい様がお描きになられた絵でいつも大事にかけたり外したりして下さいます。
(拍手)いよいよ行藤さんの番です。
(加納)行藤ののぶさんのお宅ののれんです。
(拍手)随分派手なのれんですね。
(加納)珍しいですよ。
もう往生しました。
濃いブルーからだんだんグリーン黄色オレンジピンク茶色ピンク赤。
グラデーションが花火すだれで川が表現されています。
3か月かけて丈夫で色あせにくいのれんに仕立て上げました。
なかなか私面白いのれんになったと思うんですがこれをもう一度次にやってほしいと言われたらひそかにお断りしようと…。
(笑い声)よろしくお願い致します。

(拍手)いいじゃないの。
あ〜随分派手になったね。
いいじゃない。
うん。
何か鮮やかで。
杉さんだ。
こんにちは。
お〜!すごく赤が映えます。
杉さんとこは今年は替えておられんのですね。
今年は駄目なんです。
はい。
おとうさんとね「緑と赤がいいな。
今度の時にはそれをして頂こうな」いうて話してたんです。
そしたら片山さんがね…だったから。
すごくいい!あっ。
今度は大きくなったから川で遊べるじゃん。
あっ本当?なあ。
うんとこしょ!じいじもここで泳いでたよ。
ずっと。
ちっちゃい時に。
一つ一つののれんに思いを託す町岡山県勝山。
また新しい春が始まります。
2015/03/18(水) 19:30〜19:57
NHK総合1・神戸
にっぽん紀行「のれんに思い託して〜岡山 真庭市勝山〜」[字]

“のれんの町”と呼ばれる岡山県真庭市勝山。歴史ある城下町にかけられた個性あふれるのれん。商店だけでなく、個人の家々にも掛かる“のれん”に込められた思いとは…。

詳細情報
番組内容
岡山県北部のまち、真庭市勝山。築250年以上の屋敷が残る情緒ある街道に彩りを添えようと、およそ20年前に一軒の酒屋がのれんをかけたのが“のれんの町”の始まりだ。今では100軒をこえる家がのれんをかけている。今はなき原風景を懐かしむのれん。子どもたちの幸せを願うのれんなど、のれんには、さまざまな思いが託されている。そして今年、初めてのれんを出す人も。のれんとともに、勝山に暮らす人々の思いを見つめる。

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

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サンプリングレート : 48kHz

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