ハートネットTV NHK障害福祉賞(1)「我が人生 気力に託す」 2015.03.18


千葉県御宿町に住む…午後は必ず町歩きをします。
この日訪れたのは近所の電気屋さんです。
店の前のスロープ。
作られたのは滝口さんが店を訪れた事がきっかけでした。
こんにちは。
近所を回っては障害者のバリアとなるものを取り除いてもらうようお願いしているのです。
バリアをなくそうと努力する滝口さんが自費で出版しているのが町の…車椅子利用者だけでなくさまざまな障害者のためにきめ細かい情報が載っています。
マップを作るのは家に籠もりがちな障害者にもっと外に出てほしいという願いがあるからです。
細かい所もくまなく見て改善策を提案します。
「NHK障害福祉賞」に寄せられた滝口さんの手記です。
足が動かなくなった絶望から再び立ち上がるまでの心境がつづられています。
前向きに生きるための心構えとは何か。
滝口さんの手記を基に探ります。
こんばんは。
「ハートネットTV」です。
今日と明日は今回で49回目を迎えた「NHK障害福祉賞」の受賞者の方をご紹介します。
「NHK障害福祉賞」は障害のある人や障害のある人を支えてきた人たちが書いた体験手記を募集するもので今回は381の作品が寄せられ11点が入賞しました。
ご一緒して頂くのは菊池桃子さんです。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
菊池さんは大学の客員教授をされていてキャリア論の研究をされてるそうですね?そうなんです。
ラテン語でわだちの事をキャリアっていうんです。
車輪が通った跡?そうです。
車輪が残す跡ですね。
人間がオギャ〜ッと生まれてから車輪をつけて前に進んでいくとしたら人生でどんなわだちをつけていくのかっていうのがキャリア論なんですけれども。
人生生きていきますと時に壁となるものがあるんですね。
この壁の一つが障害と捉えるならばどんな乗り越え方をするのか是非たくさん勉強させて頂きたいと思います。
今日ご紹介する方どんなわだちを作っている方なんでしょうか。
紹介する方はこの方です。
車椅子で生活する滝口仲秋さんです。
手記のタイトルは…もともと小学校の先生でしたが病気で車椅子の生活となり仕事を辞めざるをえませんでした。
しかし一念発起して地域のバリアフリーマップを作るなど自らの人生を切り開いていらっしゃいます。
一度はふさぎ込んだという滝口さん。
どのようにして気力を取り戻したのでしょうか。

(「ラジオ体操第1」)朝6時半。
滝口さんの一日はテレビ体操から始まります。
(テレビ)「曲げて伸ばします」。
(テレビ)「腕と足の運動」。
手と足の運動ですが滝口さんテレビと違う事をしています。
常に自己流。
この日の体操はこれで終わりです。
新聞取りに行く。
新聞。
本当にもう…。
滝口さん夫婦は2人とも小学校の教師でした。
滝口さんが力を入れていたのは算数の授業です。
現役時代の滝口さんです。
子どものやる気を引き出すため日々工夫を凝らしていました。
その熱心さを買われ国立大学の附属小学校に籍を移します。
授業のかたわら論文も数多く発表。
更に算数の指導方法をほかの教師や教育実習生に伝えるなど力を注ぎました。
ところが34歳の時病が滝口さんを襲います。
足の指先にしびれを感じ病院に行くと脊髄腫瘍と診断されます。
根治が難しい難病でした。
手術を受けても症状は回復しません。
走る事ができなくなり滝口さんは教壇から降りる決意をしました。
教育庁で後輩の指導に専念しますが病状は更に悪化。
バリアフリーの職場がない当時働き続ける事はできませんでした。
58歳で仕事を辞めた滝口さん。
車椅子の姿を人に見られたくないと自宅に引きこもるようになってしまいました。
家で滝口さんの様子を見ていた妻の雅子さん。
それまで見た事もない気弱な夫の姿に心配が募りました。
夫を前向きにさせたい。
雅子さんはある計画を立てます。
それまで住んでいた家の隣に新しくバリアフリーの家を建てたのです。
自由に動ける環境が整うと雅子さんは滝口さんに家事を勧めました。
何でも熱心に研究する滝口さん。
どうすれば車椅子でもうまく家事ができるのか。
自分で工夫する事が楽しみになっていきます。
家に閉じ籠もる生活は続いていましたが少しずつ自信を取り戻していきました。
(雅子)弱者がいるなんて思った事ない。
自立への一歩をつかんだ滝口さん。
思い切って家の外に出ようと思ったのは20年前のある人との出会いがきっかけでした。
それは隣町に住む難病を患う人です。
(仲秋)こんにちは。
(電子音)筋萎縮性側索硬化症の照川貞喜さん。
筋肉が次第に動かなくなる病気ですがパソコンや囲碁旅行などやりたい事に挑戦し続けています。
滝口さんが訪ねたきっかけは照川さんの本を読んだ事です。
助けを借りながらも各地に出かける姿に驚きました。
自由が少なくても諦めない照川さん。
自分もそうありたいと滝口さんは考えました。
初めて出会った時滝口さんは照川さんから大切な言葉をもらいました。
その時の様子をこう記しています。
スタジオには滝口仲秋さんそして雅子さんご夫妻にお越し頂きました。
よろしくお願い致します。
病気でつらい時期や残念ながら中途退職せざるをえなかった時の心境というのはどうだったんでしょう?ね〜…う〜ん…。
寝てますとね何か目がさえてきて昔の事が次々思い出されてくるんですね。
しかも昔はよかった。
あ〜よかった。
もう本当にこの…昔のよさが出てきます。
そうすると今の現実がいかに惨めな事。
もうこのままず〜っと足が動かないまま一生を送るとなると本当にもう人生駄目なんだ。
駄目なんだ。
駄目駄目っていうような意識が次から次に出てきましたね。
隣で雅子さんご覧になっててどんな事を感じてました?何もできなくなってしまって…う〜ん…まあ助けを得なければ日常の生活さえも満足にできないという姿を見てたんですけれどもこれはなんとか解決しないと2人の生活の上でも解決していかなきゃいけないというふうにすごく感じちゃったんですね。
その中で前向きになるきっかけとしてバリアフリーの家を造ったっていう事でね。
菊池さん結構お手伝いされてましたけどもね。
そうですね。
特に印象的なのが「対等の関係」っていう言葉でありましてあの新築なさったバリアフリーのおうちがまさにその対等をつくるために必要だったんですか?
(仲秋)結局…人にやってもらっても何か自分の生きがいにならないんですね。
だから何か…妻とその当時勤めてましたからいなくなっても勤めへ出ても自分でおさんどんいくらかできる。
それからトイレにも行ける。
お風呂にも入れる。
泊まり行ってもそういう状態で自分がある程度自立できるってのがうれしかったですね。
家を建てたっていう事はする者とされる者の関係ではなくて2人で共同でできるのだよっていう事なんですよね。
それはやっぱり夫婦じゃなくても一人の人間として考えた時もそれは大変必要な事ではないかなって思って。
それができたって事は大変よかった。
今写真でありますけども台所で…少し低くされているんですか?洗いやすいように高さを。
低くなってる事もそうなんですけれども車椅子がそのまますっぽり入るというそういうシステムになってるんですね。
そうするとできないできないと思っていた事がちょっとずつできるようになってきた。
それが増えてきた。
それからできるだけではなくて私の生活空間が広がったんですね。
今までは古いうちでベッドの…応接間のベッドだけでしたけど今度新しいうちが出来るとそこまで行ってガラスぶつかるこっちへ行くと…。
それだけ自分の行動半径が広がってきて生きがいにつながってきましたね。
そしてもっと外に出られるようになったと。
海外旅行まで出られるようになった訳ですよね。
(仲秋)障害者だけの旅行。
今いっぱいありますからね。
それに乗って毎日添乗員の後追っかけてハワイ行ったりインド行ったりなんかしまして。
今度はもう少し自分で自立するところはあるかなと思って今度は自由時間の多い海外旅行行きたくなりました。
そして近頃はニュージーランドとか去年はベトナムですか1人で計画立てて。
自分でとにかく自分の能力に合ったちょうど背伸ばしできる程度。
私に今1人でアフリカへ行けって言っても怖いんですけど。
ちょっと背伸ばしでできるやつをどんどん狙って旅行してます。
挑戦の幅を広げていかれてそばで見てらっしゃる奥様はその様子はどんなふうに見てらっしゃるんですか?ちょっと私も心配なんですね。
…ですよね。
何泊か帰ってこないですからね。
だけれども一度だけ一緒して一緒に旅行をしたんですね。
その姿を見て「この人大丈夫」っていう確信を得たんですよ。
1人で行っても大丈夫という確信を得たのでもうそのあとはどこでも行ってらっしゃいっていう事で。
ただ帰ってきてから体調崩さないでねってそれだけは話をして出しましたけどね。
心配ですよね。
そんな前向きな姿勢を取り戻した滝口さん今もチャレンジし続けています。
月に1度御宿町ではさまざまな障害者が集まる親睦会が開かれています。
滝口さんは今この会の会長を務めています。
会の仲間は障害のためになかなか外出する事ができません。
(笑い声)この会は家族以外の人と話す数少ない機会です。
(笑い声)積極的に声をかける滝口さん。
聴覚に障害のある人とは筆談でやり取りします。
この会に来た時には楽しんで帰ってもらえるようみんなを気遣います。
地元の障害者のために自分にできる事は何か。
そう思って始めたのがバリアフリーマップ作りでした。
滝口さんがバリアフリーマップを作り始めたのは13年前。
マップはホームページで公開。
新しい設備が出来る度に更新し続けています。
冊子も自費出版しました。
障害者からの評価が高く町役場や社会福祉協議会でも配られるようになっています。
マップには聴覚や視覚などさまざまな障害に合わせてきめ細かい情報を載せています。
一人でも多くの障害者に町へ出てもらうためです。
マップ作りにはもう一つのねらいがあります。
それは町に住む健常者の意識を変える事です。
この日訪ねたのは老舗の旅館。
小さなスロープは滝口さんのアドバイスをもとに用意してくれました。
先代からつきあいのあるこの旅館は滝口さんの意見を積極的に取り入れてくれる心強い味方です。
バリアを取り除くため設備にお金をかけるのは限界があります。
そこで滝口さんは別の方法を提案しました。
今では住民の方から滝口さんに意見を求めるように変わってきました。
誰もが暮らしやすい町とは何か。
住民一人一人が自主的に取り組む社会になってほしいと滝口さんは考えています。
実際に町を歩かれてもう近所が変わっていってるんですね。
既に。
そうですね。
それはやっぱり一番私のねらいでしたね。
私の町は…8,000弱の町ですけど高齢化率ですか42.5%で千葉県一なんです。
それから障害者も400いますからとても高齢者障害者が多い町じゃないかと思います。
それでまあ私一番うれしかったのはあの〜私が「作りなさい」って言わなくてもマップにマークをつけたせいでしょうかね次々それが表れてきてるようですね。
ですから年寄りの町ですから商店なんかも今出てきましたけど各商店にベンチだとか海岸にもベンチがいっぱいありますけどとにかく昔は商品はいっぱい並べればいっぱい売れるって考えが何か…ベンチを置いたために商品少なくなりましたけど売り上げ聞きますと何か変わらないと言ってましてね。
だからいいんじゃないかと思って。
だから年寄りっていうのは買い物来て「よいこらしょ」と言ってまず掛けてそれから商品を眺めてあれがいいなんて事でなってますので喜ばれてるような気がします。
傍らで見てていかがですか?ええ。
あの〜町じゅう車椅子でいろんな所をほぼ歩いてますのでそれを見た住民の方の中にね自分も車椅子使っている方がこう…出ていいのかなっていう感じで動くようになったんですね。
ですから私も今2人ほどスーパーなどにお買い物に来られる車椅子利用者がいるんですけれどもそういうふうに…ソフト面でもね何かこう変わりつつあるというような事を感じています今。
滝口さんが動く事によって町が社会が変わっていっているという事なんですね。
これからどうですかマップ作り続けていかれますよね?一応13年度に作って20年に作って25年それから5の倍数で来ると…何年になりますか?私82になるんです。
平成30年。
果たして82でできるかどうか疑問ですけど気力だけは…作ってその変容を見たいという気持ちはございます。
これからも町のために人のために頑張って頂きたいと思いますけども体には十分気を付けて…。
ありがとうございます。
今日はいろいろどうもありがとうございました。
ありがとうございましたどうも。
一度は教壇から降りた滝口さん。
3年前から再び子どもたちの前に立っています。
これまでの体験を伝えてもらいたいと地元の中学校から招かれるようになったのです。
(生徒たち)お願いします。
困難にめげず人生を歩んでほしいとメッセージを贈ります。
「ぼくにもまだできることがあるはずだ。
ぼくだからこそまだできることがあるはずだ」。
可能性を信じて生きる。
それが滝口さんのメッセージです。
「きょうの健康」です。
今週は2015/03/18(水) 20:00〜20:30
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV NHK障害福祉賞(1)「我が人生 気力に託す」[解][字]

障害者の優れた実践の記録に贈る「NHK障害福祉賞」。受賞者の滝口仲秋さんは78歳の車いすユーザー。失意の日々を乗り越え今はバリアフリーマップ作りに励んでいます。

詳細情報
番組内容
障害のある人自身のすぐれた実践の記録に贈る「NHK障害福祉賞」。今回は矢野賞に選ばれた滝口仲秋さん78歳。滝口さんは30代で脊髄腫瘍のため車いす生活になりました。妻・雅子さんとの新居作りをきっかけに人生に対して前向きになり、今や地域のバリアフリーマップ作りに励む充実した日々を送っています。番組では、失意の日々からどのようにして、生きる気力を得ることができたのか、夫婦二人三脚の再起の物語を伝えます。
出演者
【ゲスト】菊池桃子,【司会】山田賢治

ジャンル :
福祉 – 障害者
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
福祉 – 音声解説

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32721(0x7FD1)
TransportStreamID:32721(0x7FD1)
ServiceID:2056(0x0808)
EventID:26091(0x65EB)

カテゴリー: 未分類 | 投稿日: | 投稿者: