(男の笑い声)
(深山育洋)お前まさか…。
うっ…。
(鐘の音)
(救急車とパトカーのサイレン)
(角田六郎)IT関連事業で成功してセレブの仲間入りを果たしたが…。
その深山っていうのは実はホワイトタイガーのOBだ。
知ってるだろホワイトタイガー。
(杉下右京)ええ。
5年前に解散した暴走族ですね。
OB連中がいわゆる半グレとして色々事件を引き起こしてる。
警視庁も一昨年から彼らを準暴力団と位置づけて警戒態勢を強化してるが何しろ連中の質の悪いのは暴力団と違って明確な拠点や組織を持たずに行動してるとこだ。
携帯で連絡を取り合っていざ事を構えようって時には集結する。
おまけに暴力団以上に凶暴ときてるからな。
とするとゆうべエレベーターでこの深山育洋を襲ったのは対立するグループか何かでしょうか?う〜ん捜査員も初めはそう踏んだようだがどうも違うようだ。
違う?
(甲斐享)おはようございます。
おはようございます。
おはよう。
また出たぞ。
え?ダークナイトだよ。
本人の証言と防犯カメラの映像からダークナイトの仕業で間違いないようだ。
この記事です。
ダークナイトの仕業ですか…。
深山育洋は一体何を?ホワイトタイガーのOBの中には事業で成功した者も多い。
不動産芸能風俗。
深山もその一人だ。
でそういう連中の儲けた金がグループの資金源になってる。
まあ深山も当局から目をつけられていたがなかなか尻尾を出さずにいたところだ。
なるほど。
警察が手を出しづらい隠れた悪党を成敗してるのがダークナイトだからなあ。
要するにヒーロー気取りの跳ね返りだが…。
まあこんな事を続けていたらそのうち痛い目に遭うだろうな。
これで5件ですか…。
え?ダークナイトの犯行ですよ。
およそ2年足らずの間に5件。
そうでしたっけ?最初の犯行が平成25年の8月26日です。
襲われたのはいわゆる危険ドラッグを繁華街の複数の店舗に卸していた元暴力団員。
組を破門になったチンピラでしたねぇ。
よく覚えてますね正確な日にちまで。
もっともこの時はまだダークナイトの犯行という認識はありませんでしたが。
そもそもダークナイトという言葉が生まれたのは2件目の闇金業者のボスが襲われた時ですから確か犯行は12月の1日でしたかね?サングラスとネックウォーマーで顔を隠した赤いジャンパーの男という犯人の特徴から1件目と2件目が同一犯と認定されて誰が言ったかダークナイトという呼び名がネットを駆け巡る事になった。
あくまでも傷害事件の犯人でしたがその相手が法律の目をかいくぐるようにして悪事を働いていたいわゆる悪党であった事から世間はこの2件の犯行を好意的に受け取ったようですねぇ。
みたいですね。
そして翌年平成26年の5月12日ダークナイトは3件目の犯行に及びました。
この時の被害者は正真正銘暴力団員。
家出少女たちを覚醒剤漬けにして売春を共用していた卑劣漢です。
確か捜査の手が伸びた時舎弟を身代わりに出頭させた卑怯な奴でしたね。
ええ。
巧みに逮捕を逃れたあとダークナイトにあばらを3本へし折られました。
あと前歯を2本。
ええ。
そして4件目ですが同じ年の10月24日。
貿易会社の社長が襲われました。
確かその会社は暴力団のフロント企業でしたね?ええ。
社長も表向きは足を洗っていましたが裏ではずっと組織と繋がっていた人物です。
海外ルートとも繋がりがあり人身売買および臓器売買に手を染めていた疑いが持たれていましたが証拠がつかめず野放し状態になっていたところをダークナイトの餌食となったわけですね。
そしてゆうべが5件目か…。
ええ。
今年になって初めてのダークナイトの犯行ですよ。
鼻骨骨折だそうですねぇ。
これまでの被害者同様重傷を負わされていました。
それにしてもよくもまあダークナイトの犯行の詳細をそらでスラスラと。
ある意味興味がありますから。
興味?ダークナイトと称される人物が一体何を目指しているのか。
あるいは正義の味方かもしれませんがそういうはき違えた正義を遂行するようになったのはなぜなのか。
確かめたい事は色々とありますよ。
残念ながら今のところ尻尾をつかませませんがいずれは…。
杉下さんに興味を持たれるなんてダークナイトも不運ですね。
(甲斐峯秋)緊急入院とは予想だにしなかった。
(甲斐)しかも病状は深刻だな。
お願いがあります。
お願い?とにかく彼女…僕とあなたが和解する事を望んでます。
自分の体の事よりそっちを気にしてる。
芝居で構わないんで彼女の前では和解した事にしてくれませんか?お願いします。
わかった。
彼女の回復の手助けになるんだったらそうしよう。
(読経)おう。
(梶祐一郎)今日はサンキューな。
ん?当たり前だろう。
年上の彼女元気か?なんだよこんな席で。
こんな席もあんな席もねえよ。
久しぶりに会ったんだから聞いたっていいだろう。
今は入院中なんだ。
入院?どうして?怪我か?いや…。
白血病。
白血病?大変だな。
まあおかげさまで治療は順調だけど。
そうか…。
うん。
(笛吹悦子)妹さんの三回忌…。
その足で見舞いってのもどうかと思ったんだけど。
ううん。
あっ梶さんって高校の時の同級生だっけ?そう。
やんちゃ仲間。
やんちゃって享よく言うけどどの程度やんちゃしてたの?俺はほどほどだったけど梶祐一郎は筋金入りのやんちゃ坊主だったなあ。
ボクシングやってたし。
ふ〜ん。
敵対する学校の奴らを片っ端からぶちのめしてた。
えっ享も一緒に?だから俺はほどほどよ。
後ろでワーワー言ってただけ。
本当かな?ねえ本当?本当だよ。
(ノック)これ全然出来ねえな。
はい。
(悦子)あっ…。
来てたのか。
来てくれたんだ。
具合はどうですか?顔色はいいようだね。
はいおかげさまで。
わざわざすみません。
ハハハ…もっと早く来ようと思ったんだがねなかなか時間が取れなくてフフ…。
親父。
ありがとう。
礼には及ばん。
享運のある人間というのはひとつのきっかけでとんとん拍子に事が運び全てうまくいく。
ところがな運のない人間というのはうまく転がり始めたと思った矢先予想外の出来事でつまずき全て台無しになってしまう。
いやそれは本人のせいじゃない。
そういう星の下に生まれている。
まあいわばその人間の宿命といったもんだな。
本人には変えられようがないもの。
それによってこの世の中勝負が決する。
勝つ者は勝つべくして勝ち負ける者は負けるべくして負けているという事だね。
これはこれは…。
ああ。
見舞いかね?次長も?うん今。
ちょうど享も来ているよ。
そうですか。
うん。
なんか法事の帰りらしい。
法事?高校の同級生の妹さんの三回忌だったそうだ。
高校の同級生の妹さんというと随分お若くして亡くなられたんですねぇ。
ご心配おかけして申し訳ありません。
いえ本来ならばもう少し早く来るべきでしたが…。
いえいえ…。
杉下さん苦手ですもんね。
人のプライベートに関与するのは。
性分です。
こればかりはいかんともしがたい。
こと犯罪となると平気でプライベートまで土足で上がり込むくせに。
それも性分ですねぇ。
いかんともしがたいです。
(3人の笑い声)あっそういえばまた出ましたねダークナイト。
はい?なんだよ急に。
いや病院ってやる事ないから。
暇つぶしにネットざんまいなんですけどまた久々にダークナイトが出現したってなんか話題になってたんで。
まあ相変わらず賛否両論渦巻いてるようですけど。
正確に分析したわけではありませんが否定派よりも肯定派のほうが多いようですねぇ。
7対3ぐらいでしょうか?捜査は進んでるんですか?まあ僕が捜査を担当しているわけではありませんから進捗状況についてはなんとも言えませんねぇ。
でも気にはなってますよね?許せないんじゃないですか?こういうの。
とおっしゃると?いやこういう人がまるで正義の味方みたいに少なからず世間の喝采浴びてるっていう状況です。
まあ安心しろよ。
いずれ捕まえるってさ。
ねえ。
ええもちろん。
そうなんだ。
享も一緒に?ん?ダークナイト捕まえる?う〜ん…。
まあ俺は杉下さんほど純粋に正義を信じてるわけじゃないからね。
ねえそれって何?ダークナイトに共感出来るって事?場合によってはね。
(脇坂伸子)じゃあ先に帰るね。
(堂匡臣)気をつけて。
うん。
何も心配いらないから。
わかった。
ありがとう。
や…や…やめてくれ。
乱暴しないでくれ。
わかってる…わかってるあんたの事は知ってる。
でも僕はあんたに狙われるような事は何も…。
うっ…!うう…。
(堂)誤解なんだよ。
政務活動費を不正に流用したなんて言い掛かりだ。
愛人に貢いでるなんてそんな事実はない。
正当な支出なんだ。
(堂)本当なんだ…どうして殴るんだよ。
許してくれ…。
わ…わかった。
不正流用を認めるよ。
もちろん全額返納する。
だからもう乱暴は…。
反省してる。
(パトカーのサイレン)
(捜査員)お疲れさまです。
(芹沢慶二)お疲れさまです。
ご苦労さまです。
(米沢守)ある意味時の人ですよ。
(芹沢)ああこの間会見してた都議会議員。
(伊丹憲一)政務活動費の不正流用疑惑の奴か。
会見でのふてぶてしい態度が都民のみならず全国民の反感を買った御仁です。
で死因は?解剖してみないとわかりませんがご覧のとおりです。
(芹沢)確かにダークナイトでした?
(運転士)ええ間違いないと思います。
バスの発車時間間近だったんですがいやあ特徴的な目立つ格好でしょ?あれ?と思って。
(運転士の声)そうしたら駐車場で人が殺されてたっていうからね。
こういう服装の男で間違いないですか?ええ間違いないです。
はい。
(ため息)ダークナイトがとうとう人を殺したか…。
(米沢)殴る蹴るの暴行を加えて死に至らしめた。
ご覧のとおりの無残な有り様です。
これは本当にダークナイトの犯行ですか?犯行が行われたと思われる時刻に犯行現場付近でダークナイトの姿が目撃されてます。
まあもっとも目撃者も犯行そのものを見たわけではありませんが状況からいってダークナイトが無関係だとは思えませんね。
ええ。
目撃者が見たのは本当にダークナイトですか?これまでダークナイトが残していった数少ない手掛かりがこの写真ですね。
中池袋トンネル向け防犯カメラ映像。
港区マンション出入り口防犯カメラ映像。
中野区駐車場出入り口防犯カメラ映像。
間違いなくこの姿だったと目撃者は証言してます。
この写真はネットにも出回ってますよね?ええ。
これはたまたま携帯で撮影した住民から警察に提供されたものです。
つまり誰もがダークナイトの姿を知っているという事はまねしようと思えばまね出来ますよね?何が言いたいのですか?え?君はずっとゆうべのダークナイトが本物かどうか疑っているようですが。
模倣犯の可能性もありますよね?もちろんその可能性を否定するつもりはありませんよ。
ですが君のようにはなから本物かどうかを疑ったりもしませんよ。
何かを判断するにはまだ材料が乏しすぎますからねぇ。
そう思いませんか?確かに。
君の模倣犯説を全面的に支持はしませんが…。
はい?今回の犯行にはいささか違和感を感じますねぇ。
違和感?まず明らかに質が違う。
質…。
ええ違和感の正体はターゲットの質の違いです。
これまでの5件のダークナイトのターゲットは皆暴力的な連中。
文字どおり暴力団関係の人間あるいはそれに準ずる人間でした。
つまり暴力的な連中に対して暴力によって制裁を加えてきた。
いわばこれがダークナイトの本質だったような気がします。
だからこそダークナイトの振る舞いに嫌悪感を感じる人間も少なく7対3で賛同派が多かった。
ところがゆうべの被害者はこと暴力という意味においてはかけ離れたところにいる人物でしたからねぇ。
しかも今回は殺してます。
ええ。
それも違和感の大きな要因。
(中園照生)おはようございます。
(内村完爾)おはよう。
(一同)おはようございます。
(中園)どうぞ。
(中園)本日こうして部長がわざわざお越しくださったのは捜査会議に先立ち諸君らに話しておきたい事があるからだ。
部長どうぞ。
ダークナイト事件の帳場がここに立ってからまもなく2年になるがその間捜査に大した進展はなかった。
やむなく捜査規模が縮小されてはまた事件が起こりそれを何度も繰り返してきた。
そんな情けない体たらくにもさほど世間の非難がなかったのはダークナイトに対する世間の目が寛容であったからに他ならない。
だが昨夜の犯行をもってその潮目は変わった。
ついに被害者を死に至らしめたダークナイトに対する世間の憎悪は凄まじい事になっているらしい。
ついてはだここでダークナイト事件に決着をつけなければ我々警察に対する世間の非難も凄まじい事になるだろう。
それだけはなんとしても避けねばならん。
いいか警察の威信にかけてダークナイトを検挙しろ。
わかったな。
(一同)はい!殺すつもりはなかった?最初から殺すつもりなら何か凶器を用意してそれを使ったと思うんです。
だって素手で人を殺すなんて容易じゃありませんからね。
つまり意に反して被害者が死んでしまったというわけですか。
調子に乗って暴行を加えた結果被害者を死に至らしめてしまった。
多分人を殴り慣れていないひょっとしたら初めて人を殴ったような奴なんじゃないかと…。
そういう奴は相手を痛めつけてるうちにどんどん興奮して歯止めが利かなくなる。
そして殴り疲れたあと…。
(堂)うわあ!ようやく相手が息をしていない事に気がつくんです。
けんか慣れしてない奴の犯行だと思います。
人を殴った事がないから加減がわからない。
逆に殴られた事もないから一発がどれだけの痛みとダメージを相手に与えるのかもわからない。
確かにこれまでのダークナイトの犯行を見ると最初の一撃で確実に相手の急所を捉え戦意を喪失させた上でほどほどに痛めつけていますからねぇ。
むしろけんか慣れしている人物の犯行のように思えます。
ええ。
そこがポイントですね。
いずれにしても君のその考察でひとつすっきりします。
すっきりですか?ええ。
ダークナイトが目撃された訳ですよ。
今回なぜダークナイトがわざわざ目撃者を作るようなまねをしたのか実は引っ掛かっていましてね。
しかし君の言うような状況であったならばそれもうなずけます。
相手が死んでしまったとなるとこれがダークナイトの犯行だと証言するものがいなくなってしまいますからねぇ。
下手をすれば全く別件の殺人事件あるいは暴行傷害事件として扱われてしまいます。
少なくともこれまでダークナイトが意図的に目撃されるようなまねはした事がないはずです。
図らずも防犯カメラに映ってしまった事が数回。
それと市民の携帯に撮られてしまった事が1度だけ。
ダークナイトの犯行だと証言したのは全て被害者ですからね。
模倣犯であればダークナイトの犯行として扱われないというのは最悪の事態です。
だから是が非でも目撃者を作る必要があった。
すなわちそういう事になりますかね。
やはり今回の犯行はダークナイトとは別人。
模倣犯の仕業で間違いないんじゃないでしょうか。
まあ模倣犯であるかどうかは捕まえてみればはっきりする事ですがね。
徒労に終わるかもしれませんがひょっとしたら犯人にたどり着けるかもしれません。
はい?
(チャイム)
(種村和真)はいどなた?警察です。
ちょっとお話が。
開けてもらえます?
(種村)警察?警視庁の杉下です。
同じく甲斐です。
よく見せて。
はい?こういうのって模造品とか出回ったりとかしててすぐ手に入るからね。
気が済んだ?種村和真さんで間違いありませんか?なんでしょう?その拳どうなさいました?昨夜ホテルメルパルクの駐車場で起こった事件をご存じですか?ダークナイト?ええ。
僕がそのダークナイトだけど?よく来たね。
(種村)平成25年8月26日。
池袋のトンネルで元組員の加藤実を痛めつけたのが最初だった。
ドラッグの卸しをしのぎにしてたチンピラさ。
次が同じ年の12月1日。
闇金の親玉の岡田治仁を自宅マンションの駐車場で成敗してやった。
それから翌年だね。
平成26年5月12日。
渋谷のホテルベージュってラブホの裏手の階段で矢口力也をコテンパンにしてやった。
こいつがまた本職でね。
女を食い物にしてたゲス野郎さ。
その次が10月の24日だったのかな。
本村交易社長本村正義を奴の事務所の前で退治してやった。
で今年に入って先週だ。
3月4日。
深山育洋を自宅マンションのエレベーターで襲って鼻へし折ってやった。
それからゆうべは…。
都議会議員堂匡臣さんを襲ったわけですね?我々の血税を愛人に貢いでたなんて最低だろ。
しかし今回に限っては前の5件と違い相手を殺していますね。
まあ殺したほうがより抑止効果を見込めると思ってね。
今回はそうした。
つまり故意に殺したと。
そりゃもちろんだよ。
けどそれによってさすがの僕も負傷してしまってね。
まさかこんなところから足がつくなんてね。
加減のわからない奴は往々にして…。
拳を骨折する。
あっ痛っ…!都内の医療機関をしらみ潰しに当たったら昨夜から今朝にかけて拳の骨折で治療を受けたのは君だけだったからね。
痛いだろ離せよ!警部殿また勝手なまねを!先輩。
おいおい…。
まさかこんなもん持ち歩いてねえだろうな?モデルガン。
はあ…。
けっ…。
あっ!こ…これこれちょっと…。
(芹沢)あっ!けっ…。
こいつで決まりだな。
何はともあれご苦労だった。
ダークナイト早期検挙にあたってのお前たちの働きについてはそれなりに評価しよう。
褒めてやる。
(中園)なんだ?その態度は。
部長直々のお褒めの言葉だぞ。
俺は常々フェアでありたいと願いまたそれを実践している。
どんなに気に入らない相手でもその功績については素直にたたえるのが信条だ。
それは恐れ入ります。
もうこれで十分だろう。
お前たちの役目は終わった。
これ以上余計なまねはせず部長のお褒めの言葉を噛みしめながらおとなしくしていろ。
わかったな?でも彼はダークナイトではないと思います。
何?お前たちが勝手に逮捕してきたくせに何言ってんだ!
(米沢)これらからは血液反応が出ました。
殺された堂匡臣さんの血液と一致してましたから供述どおり堂匡臣さん殺害の犯人と見て間違いなさそうですね。
でもこれはネットに上がったダークナイトの格好を見てまねしたものじゃないかと思うんですが…。
ああそれはなんとも言えませんね。
ちょっとこれ…。
これ極めて不鮮明な画像です。
この画像のダークナイトの衣装とこの衣装が同一かそうでないかは判断つきかねますな。
まあ一見したところ同じに見えますが…。
身長についても調べて頂けましたか?ええこの画像のダークナイトの身長が175センチ。
でお二人が検挙なさった種村和真の身長が171.5センチ。
でこのブーツのかかとは約3センチありますからこれを履くと174.5センチ。
誤差も考慮に入れますとこの画像のダークナイトが種村和真とは別人であるとただちに断定は出来ません。
出来ない…。
(中園)ダークナイトであるという事は認めてるわけだな?過去の犯行についても日時場所その他供述は正確です。
これで一件落着だな。
これも部長の檄のたまものです。
ですが…。
なんだ?ただ…。
えっ…ええ〜?いやですからあの…特命係が異論を唱えてまして…。
種村和真は模倣犯だと…。
ダークナイトは別にいると言っております。
まだそんな事を…。
あいつらのあまのじゃくにも困ったもんですなあ。
いかがいたしましょう?僕と一緒?ダークナイトの過去の犯行については杉下さんだって正確に覚えていたでしょ。
日時や場所まで正確に。
種村もまた収集した情報を覚え込んでそれを語っているだけなんじゃないですか?僕は今のところそれを否定するような材料を持ち合わせていませんがそれにしても君はいつになく自信満々ですねぇ。
当初から一貫して模倣犯を主張している。
杉下さんも言ってましたけど最新の犯行は過去の犯行と質が違うって。
しかしこうなってくると過去の犯行においてダークナイトが手掛かりらしい手掛かりを残していない事があだになりますねぇ。
種村の供述を検証しようにも警察にもそれ以上の情報がない。
つまり彼の供述を丸のみしてダークナイトと断定してしまう事も出来るわけですよ。
その上厄介なのは種村和真本人がそれを望んでいる。
俺はダークナイトだ。
必ず証明しますよ。
彼がダークナイトじゃない事は。
(江本)どうぞこちらへ。
種村くんが辞めたのはひと月ほど前ですかね。
どういう理由で?上司である班長と折り合いが悪くなりましてね。
いや…ほんのささいな出来事がきっかけだったようなんです。
グループの飲み会で班長が支払いをまとめて自分のカードでしたんです。
ほらカードを使うとポイントがたまるでしょ?ええ。
それを知った種村くんが怒りだしましてね。
怒った?ポイント目当てでカードを使うならばきちんとみんなに了解を取った上でしろって班長に食ってかかりましてね。
そりゃあすごかったですよ。
種村さんは非正規雇用だったそうですね?はい。
仕事は真面目ですがただ度が過ぎた正義感の持ち主なもんで…。
あれじゃあどこ行ってもうまくいかないような気がしますよ。
度が過ぎた正義感の持ち主ですか…。
(笠松)どうぞ。
種村和真の事ですよね?ええ。
かなり変わってました。
歴史に名を残すような人物になるって書いてましたよ。
中学の時の卒業文集に。
歴史に名を残す…ですか?正義感が強い方だとお聞きしたんですが子どもの頃からそうでしたか?ウルトラマンとかヒーローが大好きでよくごっこ遊びをしてました。
でも自分の思うようにならないと半端なく切れるからみんなに怖がられてましたよ。
おお見たか?これ。
え?どこから情報つかんだのかこの1誌だけだ。
スクープだな。
種村和真をダークナイトとして送検するんですか?ダークナイトとしてではなくダークナイトを名乗っている男としてだよ。
奴は模倣犯です。
送検するならそこら辺をはっきりさせた上でないと…。
うん?なんか証拠でも見つかった?いえそれはまだ…。
堂都議殺害については間違いない。
それ以前の犯行についても本人の正確な自供がある。
まあ心配しなくてもダークナイトか否かは送検後の追加捜査で確認出来るよ。
新聞にでかでかとダークナイトと出てしまった以上世間も含めて彼がダークナイトであるという既成事実が出来てしまう。
ましてや本人がダークナイトになりたがってるんだからこんな状態での送検は奴の思う壺ですね。
そこまで言うならさなんか証拠持っておいでよ。
彼が模倣犯だっていう証拠。
そういう事だ。
わかってます。
(アナウンサー)「警視庁は無職の種村和真容疑者33歳を都議会議員堂匡臣さん殺害の疑いで逮捕しました」「種村容疑者は2年ほど前から世間を騒がせているダークナイトは自分であると供述しており警察は過去の犯罪についても慎重に調べを進めています」「このため過去2年間に起こった連続傷害事件が…」先ほど送検されたようですよ。
検察官が冷静に吟味してくれる事を祈りますよ。
祈る?他力本願とは随分弱気になりましたねぇ。
君は確か彼がダークナイトでない事を必ず証明してみせると息巻いていませんでしたか?だってこれ以上追いかけられないでしょ。
(ため息)
(小山誠二)殺人1件傷害5件全ての罪を認めるわけですね。
はい。
間違いなく私がダークナイトです。
なんか腰紐ゆるんだみたいで…。
え?壁に手をついて立ちなさい。
うっ…。
ああっ!ああっ!ああっ!捕まえろー!種村!種村!待て!種村!待て!何?検事調べのあと逃走しただと?はい!現在緊急配備を敷いて行方を追っています。
要するに種村は途中階の廊下を逃走したって事ですか。
どうやらそうだったようで…。
あなた方はそれに気づかずに階段を下まで追っていったわけですね?種村!待て!おい!誰か逃げてこなかったか!?いえ何かあったんですか?で途中階の廊下を逃げた種村はそのままエレベーターで1階まで下りた。
それは先ほどエレベーターの中の防犯カメラの録画映像で確認されました。
でも種村は腰縄をつけたままだったんでしょ?まあそんなものは上着とズボンで隠せるだろ。
(検察事務官)いずれにしても種村はゆうゆうと1階の玄関から逃走したんです。
(角田)種村が途中で逃げ込んだ3階っていうのが会議室やら接見室やらのある階で人の出入りの極めて少ない階だ。
ある意味それが幸いしたと言えるだろうな。
なるほど。
ところでカイトは?病院です。
病院?ああ彼女の見舞いか。
ええ。
ん?お出かけかい?ちょっとそこまで。
(角田)ああ。
(伊丹・芹沢)おおっ…。
どうも。
(伊丹・芹沢)どうも…。
珍しくお一人ですか。
ええ。
それより何か手掛かりはつかめましたか?
(芹沢)いいえ。
特には…。
決断?ええ。
逃走経路を歩いてみましたが彼には途中いくつかの決断に迫られる場面があったはずなんですよ。
例えばトイレを出た時に最初の決断がありました。
右へ行くか左へ行くか。
彼は左を選択しその先に非常階段があったわけです。
非常階段を駆け下りる途中もそうです。
どの階の廊下へ飛び込むか彼には決断が必要でした。
そして彼は3階を選んだ。
ここでもまた選択肢があり彼は右を選びエレベーターホールにたどり着きました。
それから最大の決断がエレベーターです。
(伊丹)最大の決断?逃走にエレベーターを使うというのはなかなか勇気のいる決断だと思いますよ。
そうは思いませんか?確かに。
エレベーターの到着を待つ間追っ手が来ないかどうか気が気ではなかったはずです。
逃走中の心理状態ならばエレベーターを待ちきれずに廊下の先にあった階段を使って逃げてもなんの不思議もありません。
しかし彼はエレベーターを使う事を決断した。
逃走経路としては一種の盲点ですよね。
おっしゃるとおり。
すなわち彼は逃走中のいくつかの決断を間違えずにエレベーターにたどり着き追っ手の盲点をつく形で地検城北支部を脱出したわけです。
初めて入ったであろう建物で一度も決断ミスを犯さなかった彼はたまたま運がよかっただけなのかあるいは…。
あるいは?ああ戻ってたんですか。
種村が逃走したって聞きました。
ええ。
課長たちは何か事件でしょうかねぇ?みんな出払っているようですが…。
さあそうじゃないですか?俺が戻った時にはもう空っぽだったんでまあよくわかりませんけど。
そうですか。
それより種村は…。
ええ逃走中です。
今のところその足取りはつかめていないようですが…。
そうですか…。
(アナウンサー)「次のニュースです」「検察官の取り調べの直後東京地検城北支部から逃走した種村容疑者は逃走直後の姿が大崎線江原駅の防犯カメラに…」ううっ…!
(人々の話し声)もしもし人が倒れて…けがしてます!開けます!下ろします!お願いします。
(救急隊員)鼻出血が認められます。
(救急隊員)血圧110の56。
脈拍108。
サーキュレーション96です。
こちらです。
これはこれは…。
ご覧のとおりですよ。
ほんのかすり傷だよ。
鼻へし折られたくせして…。
ダークナイトにやられたって聞いたけど?どうだろう?要するに君は模倣犯だった。
いいや。
確かにダークナイトの格好はしていたが彼はダークナイトじゃない!彼は真っ赤な偽者だよ。
偽者だよ…。
ずっとこの調子だよ。
悪あがきですよ。
ダークナイトの名前を騙ったせいで本物のダークナイトに襲われた。
でもそれを認めたくない。
そうかもしれませんがねぇ…。
杉下さんだってそもそも種村がダークナイトだなんて思ってませんよね?ええ。
だったら…。
しかし今回の一件で種村が模倣犯である事を認めたならばまだしもあの調子ですからねぇ…。
結局のところ本物のダークナイトを捕まえない限り今回の件は決着がつきそうにありませんねぇ。
(ノック)おはよう。
おはよう。
調子はどう?うんいい感じだよ。
そうですかそうですか。
あっねえねえ…。
捕まった人はさダークナイトじゃなかったの?ああまた掲示板見てるんですか?ねえねえ…本物が現れて捕まった人襲ったんでしょ?お前はいちいち気にしなくていいんだよ。
なんで?あれ?うん?これは?ああ杉下さんが来たの。
いつ?今朝早く。
何しに?ああそばまで来たからちょっと寄ってみたって。
そばまで来たものですからちょっと寄ってみました。
すみません。
ああ…。
これは食欲はおありだと聞いたので甘いものをほんの少しですが…。
ありがとうございます。
フフッ…。
フフッ…。
それでは僕はこれで。
もう?ですから申し上げたとおりそばまで来たのでちょっと寄っただけですから。
ああ…。
あっわざわざすみません。
ああ…。
ひとつだけ…。
はい。
昨日カイトくんがお見舞いに来たと思いますが彼は午後までずっとここに?杉下さんがそんな事を?うん。
でお前はなんて答えたの?ずっと一緒にいました。
そう答えた。
そっか。
うん。
おはようございます。
ああおはよう。
杉下さんはまだですか?みたいだね。
手引き?そう。
何者かがお前の逃走を手助けしたんじゃねえのか?例えば逃走経路について指示があったとか。
どうなんだよ?意外と僕の味方は多いと思うよ。
(伊丹)何?表立って僕を支持するとは表明出来ないが心の中では応援してる。
そんな連中がたくさんいるんじゃなかろうか。
すなわちねダークナイトというのはそういう存在なんだよ。
つまりイエスだな。
何が?何者かがお前の逃走の手助けをした。
そんな事は言ってない。
単に僕を取り巻く状況を解説したまでだよ。
疑うなら僕と接するあらゆる人間を疑いなさいと助言してるんだよ!例えば僕を検察に連れて行った留置管理課の警察官。
彼の手助けだったかもしれない。
なんだと?いや一緒にいた検察事務官かはたまた僕を取り調べた検事が逃走を助けたのかもね。
(芹沢)おい!お前いい加減にしろよ。
本当は君だったね。
ああ?僕の逃走助けてくれたじゃないか。
お前何言ってやがんだ…。
「
(笑い声)」「
(種村の笑い声)」
(月本幸子)そうですか。
順調ならばよかった。
すみませんご心配かけちゃって…。
いいえ。
本当なら毎日でもお見舞いに行きたいんですけどでも入れ代わり立ち代わり人が来るのも悦子さんも大変かなあと思って…。
悦子も幸子さんには殊の外感謝してます。
いえそんな…。
本当色々ありがとうございました。
いいえ。
あっいらっしゃいませ。
あっ杉下さん。
おや来てたんですか。
ええ。
こんばんは。
いつもので?ええお願いします。
今日は一日どちらに?ちょっと調べものを。
はいどうぞ。
どうもありがとう。
調べものって?はい?あっすみません余計な事を。
でもあれですよね?杉下さんが調べものっていうと世間を騒がせているあれダークナイト?フフフ…。
自称ダークナイトの様子はどうでしたか?え?今日改めて事情聴取が行われたと思いますが君は立ち会うなり覗くなりしなかったのですか?相変わらず人を食ったような受け答えに終始していました。
依然として模倣犯である事を認めませんか。
ええ…。
我こそはダークナイトであるっていう態度でしたね。
なるほど。
それより調べものって?ちょっとひとつふたつ気になる事を…。
ささいな事です。
ささいな事が気になってしまう僕の悪い癖。
お待たせしました。
はいどうぞ。
で収穫は?僕の収穫よりも何かちょっとおつまみをお願い出来ませんかね?あら失礼いたしました。
で…収穫は?
(携帯電話)失礼。
(携帯電話)もしもし。
ああ俺だ。
おうどうした?ちょっと会えるか?え?昼間杉下さんって人が来た。
そうか。
わかった。
すぐ行く。
俺そろそろ失礼します。
そうですか。
ごちそう様でした。
あっあら…。
(サンドバッグを殴る音)梶。
おう。
なんで杉下さんがお前のとこに?警視庁の杉下と申します。
杉下さん?ええ。
お前の上司だって言ってちょっと話を聞きたいと言われた。
話って?
(梶)なんでしょう?先日妹さんの三回忌だったそうですねぇ。
甲斐享も出席していたようですが…。
妹の事を聞かれた。
景子ちゃんの?まあ調べりゃすぐわかる話だし。
聞かれるまんまに答えたけどな。
他には何を?いやそれだけ。
ただ…。
うん?なんも知らないそぶりで俺の話聞いてたけど本当はもう景子の事をすっかり調べ上げた上で俺のとこに来たような気がする。
裏取りみたいな感じかな。
なあ享。
けんか必勝法覚えてるか?絶対にけんかに負けない方法。
ああ。
勝ち目のない相手とは最初から事を構えるな。
あの人はやばい気がする。
ああ知ってる。
梶祐一郎を訪ねたそうですね。
梶さんは君の親友だそうですねぇ。
ええ。
景子ちゃんの事を聞きに行ったんですか?話を聞いているうちに僕も思い出しました。
痛ましい事件でしたねぇ…。
ええ…。
(すすり泣き)
(梶)きれいなのは顔だけだ。
体見てみろ。
三十数か所めった刺しだ。
なんでこいつがこんな痛い目に遭わなきゃならないんだよ?
(梶の声)ただ歩いてただけだぞ。
いつものように仕事帰りの道を…。
通り魔殺人。
ある日突然ありふれた日常の中でなんの脈絡もなく奪われる無辜の命。
不運と言ってしまえばそれまでです。
その言葉は決して間違いではない。
しかしそのむなしい響きからは汲み取りようのない無念悲しみそして憤りがそこにはあります。
当人はもちろんの事残された者の…。
ちょっといいか?ああ。
なんだって?担当刑事がそう言ってた。
まあいいさ。
それならそれで…。
代わりに俺がやる。
俺の前でそんな事言うな。
お前の前だから言ってんだよ。
何?ポンコツの警察なんかに任せておけねえってな。
梶落ち着けよ。
なんも出来ねえくせに偉そうな顔するな!落ち着けよ!どうしたらいいんだよ…。
享!このまんま…。
泣き寝入りしろってのかよ…?どうしたら…。
すぐに検挙された犯人ですが結局無罪放免となって…。
(ため息)犯行時はドラッグによる心身喪失。
しかもそのドラッグは当時脱法ドラッグと言われていた取り締まり対象外の薬物でしたから担当刑事も最初からさじを投げた状態だったそうです。
犯人はその後…。
浜中忠弥です。
当時27歳。
ええ浜中忠弥。
薬物依存の治療のために通院していたようですが釈放されておよそ1か月後でしたねぇ。
暴漢に襲われて大けがをしているんですよ。
もちろん覚えています。
当時それなりに大きなニュースになりましたからね。
週刊誌の一部などでは正義の鉄槌だの天誅だのといった見出しでむしろ暴漢をたたえるような記事が出ましたねぇ。
ええ。
その暴漢はいまだ捕まっていません。
事件を担当した捜査員たちも心情的に捜査に身が入らなかったのかもしれませんね。
今回改めて調べてみました。
え?当時の捜査資料をです。
何かわかりましたか?似ているんですよ。
似てる?痛めつけ方がその後に出現したダークナイトと。
最初の一撃で確実に相手の急所を捉え戦意を喪失させた上で致命傷を与えないように痛めつける。
そのやり方がです。
もちろん当時の浜中忠弥の目撃証言によればその時の暴漢は現在世間が認知しているようなダークナイトの格好では全くありませんがね。
黒か紺のニットキャップ。
濃いサングラス。
黒か濃紺のパーカー。
ベージュのチノパン。
そもそもダークナイトは最初からダークナイトだったのでしょうか?え?つまり最初からダークナイトである事を自覚して出現したのかという事です。
そうであればダークナイトの最初の仕事は今我々を含めて世間が認識しているとおり平成25年8月26日の加藤実を襲った事件という事になりますが…。
そうではないと?その前に例えば前哨戦のごとく本人がダークナイトである事を自覚するような事件があったと考えるのはどうでしょうねぇ。
つまりダークナイト誕生のきっかけとなったような事件があった。
いやその事件によって思いがけず浴びた世間の喝采がダークナイトを生み出したと言ったほうがわかりやすいでしょうかねぇ。
要するに杉下さんは浜中を襲った暴漢こそがダークナイト言うなればダークナイトの前身だった。
そうおっしゃってるんですか?ダークナイトの最初の標的はなぜ加藤実だったのでしょう?と言うと?世間には様々な種類の悪党がいます。
その中でダークナイトは加藤実を選んだ。
それは全くの無作為だったのでしょうか?いや選んだからには選んだ理由があったはずです。
人間厳密にはなんのよりどころもなく何かを選択するという事は出来ませんからねぇ。
浜中忠弥はドラッグの常用によって罪もない命を奪うという重罪を犯しました。
そしてその後突如として現れたダークナイトの最初の標的はドラッグ卸しをしのぎとしていた元暴力団員加藤実。
このあたりの微妙なリンクが僕は気になってしまうんですよ。
なるほど。
まあそれもこれも本物のダークナイトを捕まえれば全てはっきりする事ですがね。
はいいいですよ。
はい。
(ノック)はい。
おはよう。
おはようございます。
(ため息)杉下さんは?ああ今しがた出かけたね。
どこに?知るか。
「俺の事は置いてきぼりですか」少なくともダークナイトの件について君とは行動をともに出来ません。
え?僕は純粋に正義を信じていますから。
まあ俺は杉下さんほど純粋に正義を信じてるわけじゃないからね。
ねえそれって何?ダークナイトに共感出来るって事?場合によってはね。
もちろんダークナイトには1ミリも共感出来ませんしむしろ哀れに思えてきます。
哀れ?世間の喝采を糧に思い上がっているその姿がですよ。
「彼は一体何を成し遂げようとしているのでしょうねぇ…」そのあたり君はどう思います?いずれにせよもしもその気があるならば君は君のやり方でダークナイトを追い詰めればいい。
出来るならば…ですがね。
お前一体何やった?えっ?怒らせちまったんだろ?杉下を。
話してみろ。
なんなら一緒に謝ってやってもいいぞ。
ありがとうございます。
そのお気持ちだけで。
そうか。
まあ好きにしろ。
もはや修復不能かもしれませんが…。
そうか…。
えっ?おい!
(大河内春樹)なんですって?大至急調べてくれたまえ。
ボス。
ああ?お客さんです。
浜中忠弥が暴漢に襲われた事件についてなんですが…。
(梶)ああ…浜中の事件ですか。
ハッ…当時真っ先に疑われましたよ。
そうでしょうねぇ。
動機という点から考えればいの一番にあなたが浮上しますから。
(捜査員)妹さんのあだ討ちのつもりだったんじゃないの?
(梶)だから俺はそんな事してないってば!したい気持ちはあるけどね今だって。
しかし疑いようのないアリバイがあってあなたの疑いはすぐに晴れたようですねぇ。
おかげさまで。
それにしても暴漢は一体誰なのでしょうねぇ?浜中忠弥を襲いいまだ捕まらない犯人というのは…。
当時それも聞かれましたよ。
心当たりはありませんか?あったらとっくに話してるでしょ。
そうでしょうねぇ。
知ってて隠しているのでない限りとっくに話してますよねぇ。
ところで一昨日の夜午後5時から6時の間あなたはどちらにいらっしゃいました?え?3月13日の午後5時から6時の間です。
あっ具体的に申し上げましょうか。
自称ダークナイト種村和真が逃走後潜伏先の上野のホテルで襲われた夜その時刻あなたはどちらにいらっしゃいました?そいつはダークナイトじゃありませんよ。
よくここが。
あんな話をした後です。
ここに決まってるじゃないですか。
杉下さんはこいつがダークナイトだって疑ってるみたいですけどそれは見当違いです。
誰も梶さんをダークナイトとなど言っていませんが。
今アリバイを確認してましたよね?種村が襲われた時の。
ですから種村襲撃犯だと疑ってはいますが…。
種村を襲ったのはダークナイトでしょ?いえ種村を襲ったのもまた模倣犯。
いやこういう言い方をすると語弊がありますねぇ。
つまり偽者のダークナイトですよ。
それは種村が言ってたじゃありませんか。
確かにダークナイトの格好はしていたが彼はダークナイトじゃない!それは奴が模倣犯である事を認めたくないから。
ええ認めたくないというのはそのとおりでしょう。
しかし彼のあの自信満々の物言いはマニア特有のものですよ。
彼は真っ赤な偽者だよ。
自分こそがこの世で最もダークナイトの事を知っている。
だから偽者はたちどころに看破出来る。
ダークナイトの完全なる模倣を企てたマニアだからこその慧眼とでも言うのでしょうかねぇ。
いずれにしても模倣犯である事を認めたくないという気持ちとは切り離して考えるべき証言だと思っています。
あなたは種村を襲った。
しかし今カイトくんが言ったとおりあなたはダークナイトではない。
つまりどういう事でしょう?本物のダークナイトは種村が模倣犯である事を証明するために偽者のダークナイトを送り込んだ。
ではその時本物はどこで何をしていたのでしょう?何をしていたのでしょう。
あなたと一緒にいました。
本物は…種村が襲われた時杉下さんあなたと一緒にいました。
ええ。
種村が襲われたと聞いて僕と一緒に病院に駆けつけましたからね。
種村襲撃に代理を仕立てたのはなぜですか?犯行時に杉下さんと一緒にいるのが一番安全でしょアリバイ的には。
あんな状況の中最も重大な局面で姿をくらませていたらすぐにあなたに見破られてしまうと思った。
しかしその日の昼間僕の前から姿を消していましたねぇ。
悦子さんのお見舞いという事でしたが本当は種村の逃走を手助けしていたんじゃありませんか?ええ。
警察内のダークナイトシンパを装って種村をそそのかし逃走を助け…。
悦子さんも君の異変に気づいていたのでしょうかねぇ。
僕が尋ねた時ずっと部屋で一緒にいたと答えましたよ。
君をかばったのでしょうかね?翌日杉下さんが確認に来たって悦子から聞いた時…。
俺は覚悟しました。
覚悟はしたけど打ち明ける勇気はなかった。
杉下さんだって人間だからひょっとしたらどこかで間違えてくれてそのままうやむやになるかもしれない。
そんな甘い期待をどこかでしていたのかもしれません。
どこで俺を疑いました?どの時点で俺がダークナイトだって確信しました?種村を模倣犯だって決めつけた時ですか?教えてください。
種村を模倣犯だと決めつけた時確かに違和感を感じました。
しかしそれをもってただちに君を疑うほど君への信頼感が薄かったとでも思いますか?考えなさい。
君ならわかりますよ。
自分がどこでしくじったか…。
3年も一緒に…僕といたのですから。
固い友情で結ばれているとはいえダークナイトの代理を引き受けるというのは決して簡単な事ではありません。
普通ならば躊躇するでしょう。
しかしあなたは代理を務めた。
ううっ…!それは浜中襲撃を代わりにしてくれた事への恩返しだったのでしょうか?こいつが代わりにしてくれなかったら俺は今頃刑務所の中ですよ。
殺人犯として。
なるほど。
(梶の声)俺が人生を踏み外すのを享は救ってくれたんです。
危ない橋を渡って…。
決して渡ってはいけない橋ですねぇ。
それはどうですかね?はい?警察官としては確かに言語道断絶対に渡っちゃいけない橋かもしれない。
でも人としては…思い切って渡る事だってあると思う。
そして享はそうしてくれた。
俺のために!その恩にはどんな形であれ報いたいと思いますよ。
あの時か…。
わかりましたか?杉下さんが地検から戻ったあの時…。
種村が逃走したって聞きました。
ええ。
課長たちは何か事件でしょうかねぇ?みんな出払っているようですが…。
さあそうじゃないですか?俺が戻った時にはもう空っぽだったんでまあよくわかりませんけど。
ええあの時点ではまだ種村逃走を知っていたのは警察内部のごく限られた人間だけです。
病院へ行っていた君がどこでその情報をつかんだのか。
地獄耳の角田課長でもいれば課長からという事もあるでしょうが課長はあの時君が戻るよりも前に出かけていたようですからねぇ。
君を決定的に疑い確信が芽生えた瞬間でした。
(ため息)まぬけだな…。
お話にならない。
君が悔いるべきはそこじゃないだろう!君が反省すべきはそこじゃないはずですよ。
ええ…。
(芹沢)本物…?ええ。
まさか俺たちを担ごうってんじゃねえだろうな?甲斐享彼こそが正真正銘のダークナイト。
そしてその親友の梶祐一郎。
甲斐享の依頼でダークナイトを装い自称ダークナイト種村和真を襲った犯人です。
あとはあなた方にお任せします。
わかりました…。
はい…。
(チャイム)この案件ひとまずこちらで引き取ります。
はい?
(大河内)次長の命令です。
(甲斐)現役警察官の不祥事を監察官が調べるのに異存はあるまい?ええもちろん。
それとも何かね?私がよからぬ事を考えているとでも?例えば調査に手心を加えさせるようにとか。
とんでもない。
次長に限ってそんな事はなさらないと思います。
ただ考えられるとすれば…。
なんだね?まあ…。
監察官による内部調査案件は処分が決定されるまで公表されません。
また処分決定後の公表についても氏名等は伏せて行われるのが慣行となっています。
身内に甘い悪しき慣行と批判されてるがね。
もっともこれだけ世間を騒がせたダークナイトの事件だ名前を隠し通すのは無理だろう。
ええ。
しかしただちに逮捕するのに比べると内部調査であれば随分時間が稼げます。
次長にはその時間が必要だったのではないかと。
疑問はそれだけかね?最大の疑問が…。
次長はどこから情報を得たのですか?そんなもの君なら即座にわかったと思うが?やはり彼女は知っていましたか。
ずっとそばにいた女性だからね。
「ダークナイトは自分であると供述しており警察は過去の犯罪についても慎重に調べを進めています」「このため過去2年間に起こった連続傷害事件が立証されると今後警察は…」随分と気を揉んでいたよ。
享さん…享さんを助けてください。
そして君を恐れてもいた。
はい?君は容赦なく真実を暴くだろう。
それがたとえ誰であろうとも…。
そう言って彼女はおびえていた。
だから僕にすがったんだ。
無論僕だって息子を助ける事なんか出来やしない。
ただ…君よりはいくらか穏やかに着地させてやる事は出来る。
そう彼女には答えた。
そうですか。
後悔してるかね?息子を君のそばに置いた事を。
大いに後悔していますねぇ。
いえ手元に置いた事ではありません。
僕のそばにいながらむざむざ渡ってはいけない橋を渡らせてしまった事をです。
悔やんでも悔やみきれません。
(ドアの閉まる音)
(笑い声)何がおかしい?いや…ごめん。
思い出したんだ。
何を?中学の時さ。
けんかして補導されて親父がガラ受けに来てくれた時あの時もいきなりぶん殴られたなあと思って。
お…落ち着いてください!落ち着いてください!お願いします!申し訳ない事をしたと思ってる。
今度こそ決定的に親父の顔に泥を塗ってしまいました。
フン…うぬぼれるな。
お前ごときに塗られた泥なんかすぐに洗い落とせる。
お前が目障りで警察から消えてくれる事を望んでいたがこんな形で自滅するとは思ってもいなかったよ。
お前はいつも驚かせてくれるな。
当然の事ながら懲戒免職は免れん。
それに実刑も覚悟しておけ。
わかってます。
親子のよしみだ送検までの間多少の便宜は図ってやる。
何か望みがあったら言ってきなさい。
年取ったね。
ん?年取ったね親父。
ビンタ…昔のほうが痛かった気がする。
(大河内)親友に成り代わって敵を討つ。
聞こえはいいがあまりにも愚かな行為だと思わなかったのか?警察官としても人としても。
思いました。
思ったからそうしたんです。
何?怒りに任せた復讐がどれほど愚かな事か目の当たりにしないとわからないんですよあいつは。
馬鹿だから。
昔からそうでした。
でもそうしてやれば間違いなくあいつの怒りをしずめる事が出来る。
まさに「人の振り見て我が振り直せ」。
人の愚かな行為を見て自分の愚かさに気づくんです。
わかった。
納得は出来ないが理解はする。
ありがとうございます。
しかしそれがどうしてダークナイトへと発展していったのか理解に苦しむ。
親友のための敵討ちその1件だけでなぜ終わらせなかったんだ?自分でも…それがよくわかりません。
浜中忠弥を襲った時の世間の反応が君の心に火をつけたとか?そうかもしれません。
正直ダークナイトに対する世間の反応は心地がよかった。
それでやめられなくなった。
2度3度とまるで麻薬のように。
ええそうかも…。
でもよくわかりません。
ある意味自分はヒーローであると誇らしく感じていたのか?そんな単純な思いはありませんでした。
でも時々この俺がダークナイトだって叫びたい衝動に駆られる事はありました。
(大河内)「自分の行いが法治国家の根幹をないがしろにする行為だという自覚は?」もちろんありました。
葛藤は常にありました。
僕が彼をダークナイトに仕立てたと?いや…戯言として聞いてほしい。
無論君が意識的にそうしたと言ってるわけでもない。
よく意味が…。
どうにも太刀打ち出来ない君への嫉妬焦りがあいつをダークナイトへ追いやった。
ふとそういう思いが頭をよぎったんだよ。
あいつは不純な正義を遂行する事によって君に対抗していたんじゃないかと。
本人にその自覚があったかどうかはわからない。
けれど法を犯しつつも一方では世間から喝采を浴び警視庁の捜査の手を逃れ続けているダークナイトになる事によって目の前の越えられない巨大な山のごとき杉下右京を出し抜いた気分になっていた。
そういう事じゃないかと…。
お言葉ですが言いがかりのように聞こえますねぇ。
杉下右京は人材の墓場…。
はい?かつてそうささやかれていたそうだね。
下についた者はことごとく警視庁を去り多くの警察官が君の犠牲になったと聞いている。
犠牲…つまりカイトくんも僕の犠牲者の1人ですか。
白状しよう。
僕もせがれが君の犠牲になる事を望んでいた。
警察官としての自信をなくして自ら警視庁を去る事をね。
だから君がせがれを選んだ…その時はほくそ笑んだものだよ。
そしてせがれは警視庁を去る事になったがそれは僕の想像をはるかに超える結末だった。
君は想像以上の劇薬で恐らくせがれはそれに過剰に反応したんだろうな。
ひとつの見識として承っておきますが。
僕は君を責めているわけではない。
むしろ自分の読みの甘さ浅はかさを恥じているんだ。
でもね杉下くん君は自分の思ってる以上に危険な人物かもしれないよ。
あなたにも上司としての責任を取って頂かなければなりません。
追って懲戒処分が下ります。
恐らく無期限の停職処分というところで落ち着くと思いますが。
わかりました。
(記者)つまりダークナイトの正体は現役の警察官だったという事ですか!?…そうです。
(ざわめき)
(記者)はい!はいはいはい!
(ため息)
(ノック)
(看護師)失礼します。
笛吹さん。
はい。
順調ですよ赤ちゃん。
諦めずに戦ってるお母さんの強い気持ちが赤ちゃんにも通じてるんだと思う。
よく頑張ってますね。
まだまだ楽観は出来ないけど笛吹さんならきっと大丈夫ですよ。
待ち望んでる彼のためにも私は負けるわけにはいかないんです。
そりゃ問題発言だな。
実行するとは言ってません。
カイトくんほどの腕っぷしもありませんし。
この仕事してたら悔しい思いはしょっちゅうだ。
捕まえるだけじゃ飽き足らないその場でぶちのめしたい連中も山ほどいるがそれをやったらおしまいだからな。
馬鹿野郎だなあいつ。
ああ。
確かに馬鹿野郎だ。
馬鹿野郎か。
馬鹿野郎ですな。
(咳払い)にわかに状況が飲み込めないとは思いますがあくまでこれは被疑者帯同の実況見分ですから。
はい?
(芹沢)こいつずうずうしく親父さんに便宜を図らせました。
じゃあごゆっくり。
…と言いたいところですがゆっくりされても困るので手短に。
当分会えなくなりそうなのでどうしても…。
もはや愛想が尽きたとは思いますが…。
愛想尽きかけというならばええ…いささか自分に愛想が尽きかけています。
えっ?いえこっちの事。
しかるべき時が来ればまた会えますよ。
また会ってもらえるんですか?もちろん。
2人はまだ途中じゃないですか。
待っています。
あんた…。
いいですか!?我々は殺人事件の捜査をしていたんですよ。
人が人を殺すんですよ。
そのような事件で私情を挟む事は決して許されません。
私はやるべき事をやっただけだ!わかんねえよ!カイトくん!いいですか?我々警察官は自らの過ちによって簡単に人の人生を狂わせる事があるんですよ。
そんな事もわからない警察官と他の警察官たちを一緒にしないでもらいたい!
(飛城雄一)捜しに来てくれる人がいるようですね。
約束を守って誰にも言わずに来たのですが僕には相棒がいるものですから。
(飛城)甲斐享ですか?ノーサンキュー。
ひとつつかぬ事をお伺いしますが…。
隠蔽とおっしゃってましたよね?
(銃声)
(根津誠一)どうせパパの七光りでデカになれたんだろうが!ふざけた事抜かすんじゃねえぞこの野郎!かってこい!この野郎!カイトくん!この野郎…。
カイトくん!2015/03/18(水) 20:00〜22:09
ABCテレビ1
[終]相棒 season 13 最終回2時間スペシャル #19[字]
第19話 最終回2時間スペシャル「ダークナイト」
ついに甲斐享(成宮寛貴)、最終章。
詳細情報
◇番組内容
犯罪者だけを狙った連続暴行事件。犯人の名は『ダークナイト』。彼は一体なにを成し遂げようとしているのか?
それは正義か? 悪か?『ダークナイト』とは一体何者なのか?
右京(水谷豊)と享(成宮寛貴)、相棒としての3年の月日が問われる最後の事件!あなたが目にするのは、相棒始まって以来の“衝撃の真実”。
◇出演者
水谷豊、成宮寛貴、鈴木杏樹、真飛聖、神保悟志、石坂浩二
川原和久、山中崇史、六角精児、山西惇、小野了、片桐竜次
【ゲスト】鈴木裕樹、瀧川英次
◇スタッフ
【脚本】輿水泰弘
【監督】和泉聖治
【エグゼクティブプロデューサー】桑田潔(テレビ朝日)
【ゼネラルプロデューサー】佐藤凉一(テレビ朝日)
【プロデューサー】伊東仁(テレビ朝日)、西平敦郎(東映)、土田真通(東映)
◇音楽
池頼広
◇おしらせ
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ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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