デザインの梅干 第4回「価値のデザイン」 2015.03.19


グラフィックデザイナーの佐藤卓です。
今日もデザインを勉強しに来ました清水富美加です。
佐藤さんの助手を務めますアンガールズ田中です。
(2人)よろしくお願いします。
今日もよろしくお願いします。
「デザインの梅干」第4回目になりますね。
前回の「なじむデザイン」どうだったですか?感覚はすごい研ぎ澄まされてきてます僕もう。
そうですか。
何見てももうデザインとつなげてお笑いも最終的にデザインしていきたいと思ってます。
いや十分に関係してますよねお笑いもね。
そうですよね。
言葉のデザインなど言い方のデザインとかね。
言ってる感を出してるんじゃないですか?もう自分で。
眉毛クッと上げて。
そう。
だから眉毛1回上げるか上げないかで全然。
あっ表情のデザイン?そう。
コントの顔芸もね入れるか入れないかで全然ウケが変わってくるから。
そういう事を考え始めてる。
なるほど。
これは…
講師を務めるのはグラフィックデザイナーの佐藤卓さん
Eテレで放送中の子ども向けデザイン番組「デザインあ」では企画と総合指導を担当。
日常に潜むデザインの面白さを伝えています
前回はTシャツを入り口になじむデザインについて考えました
ほとんどもう無意識にやってるものの中にすごい技術と人の知恵とが折り重なってる訳だよね。
デザインっていうのは不特定多数に普遍的に心地よくとか滑らかにとかいう事もとても大切。
では今日も梅干のように五感を刺激するデザインマインドのエクササイズを始めます
3つのステップを通してデザインで考える力を活性化していきましょう。
スタジオに集まってもらったのはさまざまなジャンルで活躍する20代の若者たち。
佐藤さんの生徒として一緒にデザインマインドのエクササイズをしてもらいます。
佐藤さん今日考えるデザインのテーマは何でしょうか?
テーマ「価値」という事にしました。
価値です。
(2人)価値?価値がある価値がないっていう言い方をしますよね。
価値。
今日は100円を入り口にしたいと思います。
100円硬貨ここから入っていって価値って何なんだろうなっていう事を考えていきたいと思うんですね。
日本で使われている通貨です。
今日は100円硬貨を入り口に価値とデザインの関係を考えていきます。
デザインマインドのエクササイズ…
最初は見た目から価値を考えます
まずその硬貨のデザインというものがねどんなふうに出来てるのかというのを解剖してみたいと思うんですね。
100円ってデザインとして見る事ってふだんありますか?ないですね。
ないですよね。
ちょっとここではねまずそのデザインがどんなふうに出来てるのかっていうのをねちょっと見てみたいと思う訳ですね。
100円硬貨の図柄を見てみましょう。
刻印されているのは日本を象徴する桜です。
ちなみに桜の方が表面で数字で100と書いてある方が裏面です。
現在使われている硬貨は全部で6種類。
100円はその中で2番目に価値の高い硬貨です
やっぱちっちゃい頃100円もらった時のうれしさねお母さんから。
10円の時よりやっぱだいぶテンション上がったその記憶が…。
硬貨だと日本では500円があって100円があって50円があって10円があって5円があって1円があるという。
このね硬貨のデザインというものがねそれぞれの価値が感じられるように出来てないとおかしくないですか?あ〜そうですね。
例えば500円がねアルミで一円玉の素材でね500円が出来てたらどんな感じしますか?ちょっと嫌だな。
重みが欲しいっていうか。
軽すぎるでしょ。
一円玉ってもうあの軽さね。
あれが1円って感じすんだよね。
分かります分かります。
500円はやっぱ大きさと重量が「500円!」っていう。
色と大きさでやっぱちょっと大事にしちゃう感じっていうか。
重みみたいのがありますよね。
それからご存じのように50円硬貨と5円硬貨には穴が開いてるとかね。
何で穴が開いてるかって考えた事ありますか?何で?ない!考えた事ない!藤原さん何で?50円と100円はやっぱ色がちょっと似てるから区別するためかな。
なるほど!思うんですけどでもそうなると5円は全然色が違うのに何で穴が開いてるかは分かんないです。
そうだよね。
言われてみれば。
今おっしゃったみたいに隣の硬貨と差別化するという事もどうもあるようです。
それから当然穴を開けるとその部分の材料を使わなくて済む訳ですよね。
言ってみれば硬貨のコストダウンにつながってるっていう事は言える訳ですよね。
なるほど。
サイズだったり穴だったりね縁だったりいろんな所でみんなが分かるようになってるっていう。
そのバランスでねこの6つの硬貨が差をつけられてるっていう。
1円から500円まで硬貨に施された価値のデザイン。
でもその工夫は見た目だけではありません
材質もその一つです
まあ金属でね全部が金属で出来てますけど5円以上のものに使われていて1円には使われていない素材があるんですね金属の。
何でしょうね?
1円以外の硬貨に共通して使われている金属の素材。
皆さん分かりますか?
銅とか?お〜っと!当たりですね。
すばらい!一発ですね。
銅って何となく十円玉はね赤金の色してますから銅が入ってそうだなと思いますけどそのほかにも銅が入ってて100円硬貨って75%も銅なんですよね。
え〜っ!それであんな色になるんですか?やっぱり銅っていうのはさびにくいっていう性質を持ってるそうです。
ですからそうやって素材を変えてみたりとかっていう工夫がこういう硬貨の流れの中に実はあったりする訳ですよね。
銅が一番多く含まれているのは10円の95%。
銅はさびにくくしかも金や銀よりも安く手に入れる事ができます。
そのため大量生産する硬貨の素材としては最適なんだそうです
ここでちょっと私から情報を。
実は日本には幻の陶器で出来たお金があったんです。
陶器?こちらご覧下さい。
すごくないですか?これ。
これ陶器ですか?陶器なんです。
造られたのが第2次世界大戦の末期戦争の軍備のためにお金を造るための金属が無くなってしまったんです。
実際に発行される前に終戦を迎えたために世の中に流通する事がないまま粉砕破棄されたといわれてるんですね。
これ幻の硬貨ですよ。
どうですか?もしこの陶器が硬貨として流通していたら。
壊れやすい。
財布に持ち歩けなさそうな気がします。
まず陶器っていうのは割れるっていう事がありますよね。
実は金属って当たり前のように使っててね小銭入れとかにジャラジャラジャラジャラ入れてね我々って使うけどもし陶器になってったら相当大切に扱うようになる。
だからお財布も変わってくるかもしれない。
全部小部屋に一個一個…。
小部屋になってるかもしれないっていう。
お財布でお金払おうとして「あ〜っ!」みたいな感じでひっくり返してチャリンチャリンチャリンチャリ〜ンみたいになっちゃうじゃないですか。
これが流通してたらその瞬間に全財産を失うって事ですかね。
だから素材一つこういう違う素材を見ると当たり前に目の前にある金属の硬貨っていうものがある意味ではよく出来てるというのが分かりますよね。
次はお金の機能について考えてみます
佐藤さんはスタジオにあるものを用意しました
2013年に「デザインあ展」っていう子どものためのデザイン教育番組が私参加していてそれを展覧会にした時がありましてその時に展示した展示物の一部を持ってきました。
ここに並んでるものは100円で一応手に入るものなんですね。
例えばティッシュで言うと358枚。
こんなもんか。
でもタダで街角で配られてるから…。
そしたら100円分結構もらうの大変ですね。
この辺はちょっとね非常に小さいものになりますけどキャビア。
これしか買えないの?0.4g。
えっ少なくないですか?キャビアですから。
そしてこれが六本木の土地。
六本木の土地の面積0.4。
六本木高いね!100円分どうですか?要らな〜い。
要らないよね。
でも持ってたら「俺六本木に土地持ってんだよね」とか言える。
もう面白い事言うね。
言う事はねうそじゃない。
どうですか?六本木の土地これだけとしょうゆ替えてって言われたらどうする?ちょっと要らない。
要らない?何か100円って一見同じだけどこうやって並べるとでも自分にとって欲しいものかどうかって…。
そうだね。
今必要かとかいう…。
そう。
何か違うなと。
人によって価値の感じ方はバラバラ。
実はこれ大昔の人にとっては大問題でした。
お金が誕生する前人は欲しいものを物々交換によって手に入れていました。
でもこの交換いつもうまくいく訳ではありません
欲しいものを持っている相手が自分の持っているものを欲しがるとは限らないからです
この問題を解決してくれたのがお金でした
やっぱお金っていうものがねその間に入ってくれる事によってそれがまあ比較的スムーズになるように。
そういう仕組みを作ってきた訳ですよね人はね。
100円硬貨っていうところから入ってお金の価値っていう事についてね考え始めた訳ですけどお金っていうとね何となくすぐお金の事ばっかりとかそれから経済が最優先してる世の中になっちゃってるのでお金がまるで悪者のようにお金お金って言うなみたいなねこうにも言われるんだけれどもお金っていうのは実は人の営みにとっては血液みたいなものでお金っていうのがやっぱり世の中で流れないといろんな物事が進んでいかなくなっちゃうと。
だからそんなふうにもちょっとお金っていうのを考えてみてもいいんじゃないかって思いますよね。
デザインマインドのエクササイズできてきましたか?
続いては…
皆さんが今日お持ちの荷物をお手元に持ってきてもらいましたけども。
ちょっとここで自分にとっての価値っていうものを考えてみたいと思うんですね。
今日皆さん持ってる荷物の中で一番高価なものを机の上に出してもらって…。
高いものって事?値段ですね。
ふだん持ち歩いている高価なもの。
何が出てくるのでしょうか?
あっ携帯っていうのがあったか。
携帯でしょうみんなやっぱり。
うわ〜何か高そうなの持ってるな田中さん。
これはまあまあしました。
あっ皆さん出ましたかね?もう全員分出た。
改めて見てみてどんなふうに思われますかね。
高価な割に大切にしてないなという感じはちょっとしました。
共感します。
じゃあ続いて…続いてですよ今持ってきてるものの中で自分にとって一番価値があるもの。
これを出して頂きたい。
自分にとって価値のあるもの。
ですから金銭は関係なく金額も関係なく自分にとってとても価値のあるもの。
値段ではなく自分にとって価値のあるもの。
皆さんはどんなものですか?まずは田中さんの持ち物です
僕はもう家の鍵駐車場の鍵とか。
こんなん無くなられたら今日嫌だもん。
最悪こっちはねまあいつか復活できるけど。
あとキーをつけてるこれが俺の学生ズボンをリメークっていう。
これズボンなんですよ高校の時の。
それを使って作ったやつだからいろいろ価値がこれ相当詰まってる。
なるほど。
超個人的ですよね。
だって私田中さんの学生ズボンで出来た鍵ケース要らないですもん。
そりゃそうだよ!
続いては杉本君にとって価値のあるものです
これは?
(杉本)ノートとプロッキーですね。
あんまりいいのも描いてないんですけど。
そんなにきれいには描いてないですね。
だって自分のためのね。
でもアイデアみたいなのがザ〜ッと書いてあって結構まとめる…。
…っていうか勉強してるな。
このイラスト何なの?これ。
俺が本を読む時の姿勢です。
え〜うそでしょ?
(杉本)僕ダンスやってるんですけど柔軟しながらやろうかなと思って。
並行してやるにはどうするだろうと思って脚開きながらこう読んだりとか。
自分の描いたものに価値があるっていうかこれを無くしたらここに書いたアイデアが全部なくなるっていう。
書き留めたものって記憶に全部完全にある訳じゃないのでそれが消えたら嫌だなっていう。
でもまあ本当無限にここにアイデアがまた出てくる。
これからも出てくる可能性のあるメディアな訳ですね本人にとっては。
続いてはこちらのペンです。
持ち主は宮崎さん
えっそれ価値ないでしょう!うそ!うそでしょう!?ひどい事言うよね。
どこでも転がってる!どっかの事務室行けば何本でもあるよ。
何の変哲もない100円ぐらいでそれこそ買えるペンなんですけど何かこう文字を書く姿勢を大事にしようって思った時に買ったボールペンなんですよ。
なるほどなるほど。
なのでそのものの価値というよりもそれを書いてる自分の姿勢も含めて。
凜とするペン…。
凜とするボールペン。
だから自分がある意味では変わる瞬間に非常に重要な意味を持っていたっていうか。
あなたにとってはねこれが一生重要な存在かもしれないね。
身の回りのもの一つ取っても価値の考え方はさまざまです
何か価値ってお金じゃないんだなって思いました。
こうやって見ると。
そう。
人の価値があるものを見る時のこの「何だ?それ」っていう…。
そういうのがまた面白いです。
多くの人にとってその価値を共有できるというものもあれば自分にとって特別な価値があるっていうね。
交換できない価値っていうものがあるっていう事がね身の回りのものでちょっと明らかになったと思いますよね。
ここで佐藤さんも自分にとって価値のあるものを取り出してきました
こういうものですね。
何だこれ?何だろう塩コショウ?触って頂いて結構です。
いいですか?あれ?底が穴開いてる!
こちらは佐藤さんがアンティークショップで見つけたもの。
陶器やガラスで出来ていて上の方には溝がついています。
そして中はこのように空洞です。
これ何だか分かりますか?
これ変でしょう?変ですよ。
何なのか分かんない全く。
用途も不明だし。
でもきれいだよね。
電球とかをこうやって。
カバーじゃないけど。
あ!これは無理ですけど。
そうだよ。
陶器なんて意味ないじゃん。
下がさ電気つながってないと。
確かに。
何に使われてたのか全然分かんないんだけど何かこう引き付けられるもの。
それを自分なりに思いついた使い方で使ってみるっていうね。
まあある意味で見立て。
「見立て」っていう言葉がありますけど。
例えばここに使わない輪ゴムを留めておく。
よくほら輪ゴムどうしようかとか思うじゃない?アンドペーパーウエイト。
(一同)あ〜。
ちなみにこの謎の物体の正体は…碍子と呼ばれる電気部品。
電柱などについています
電気を通さないようにするためにガラスや陶器で出来ていたんです
言ってみればね本当にこういう何に使うか分からないものに対して僕は見立てる事によってとても価値を感じてる。
そしてそこに価値を見いだしてる訳ですね。
本来の価値ではなくてね自分で価値を見いだす事がすごくうれしくて。
見立てとはものの中に潜む隠れた価値を見つけ出す事
それでは皆さんにも見立てのエクササイズに挑戦してもらいます
これから見立てについてちょっとワークショップをしますけども皆さんの手元にこのボードとこの書く道具があります。
簡単に見立てるっていう事をね経験してもらいたいと思うんですね。
これから始めるのは誰でも簡単にできる見立てのワークショップです。
テレビの前の皆さんも紙とペンを準備して一緒にやってみて下さい
まずは紙を横向きにします。
そして自分の好きな線を紙の端から端まで1本描きます。
直線でも曲線でも構いません
まあ実にね本当にいろんな線を描いてくれるもんです。
線が描けたらそれを隣の人に渡して下さい
これから見立てのちょっと楽しい実験をしますけどもね。
ここから自分の絵を何かスケッチを仕上げてみて下さい。
この線をどうやってそれぞれの人が見立てるかという事ですね。
見立てのワークショップ。
1本の線から想像力を膨らませて絵を完成させます。
さあどんな絵が出来上がるのでしょうか。
長屋さんが描いた線を田中さんが見立てました
何?これは。
鍾乳洞。
山根と鍾乳洞に行ってペアで?「やっと着いた〜!」みたいな。
石灰岩のとこだから下にもちょっと出てる。
「つながるね」みたいな話してるのもうちょっとしたら。
なかなか思いつかないもんですげえ足しちゃった。
下にも線もう一本描いたし。
さあ続いての作品です。
市川さんが描いた線を長屋さんが見立てました
お〜!うお〜何だこれ!?ネッシーのような湖からゾ〜ッと大きい未確認生命体がたくさん出てくるような…。
未確認生命体いっぱい出てんだ?ここの頭が不思議な生き物の頭みたいだなと思って…。
もとの線どこだったの?もとの線はこう…この線でここの線がすごい恐竜の頭みたいだなと思って。
すごい発想ですね。
すご〜い!どうですか?自分の描いた線がそんなんなって。
波っぽいなと思ったんですけど恐竜になるとは…。
恐竜でもない。
もう化け物だから。
続いては藤原さんの描いた緩やかな曲線
宮崎さんは何に見立てたのでしょうか?実はこれ横ではなく縦に見るんです
(一同)お〜!あ〜面白い!すごいシンプルな線だったんだよね。
とても美しいね。
何か滑らかな線で少し大人っぽいセクシーな感じがしたのでジッパーかな。
いや見事です。
いや私横で描いたし横で使うと思ったらこういう縦もあったんだと思って。
しかもすごい最小限のプラスアルファだけで。
恐れ入りましたっていう感じ。
すばらしいすばらしい。
「笑点」だったら座布団ものですね。
ほかにも1本の線から個性的な見立てが生まれました
めちゃくちゃ楽しい!これは子どもとやった方がいい家族で。
やった方がいい!いいと思いますよ。
こういう人の作ったものを見て刺激受けないですか?
(2人)受けますね。
自分が作ったものじゃないものを何かに見立てるっていうのはね日常生活だってね自分でいろいろ工夫する事もできるし生活がやっぱ面白くなってくるなと思うんですね。
何かあれですね。
これやってると要らなくなったものとかでも何か使えるようになってものを大事にするみたいな事につながりそう。
だから当たり前の日常をちょっと見立ての視点でね何かに使えるななんて思うとね結構いろいろアイデア出てくる訳ですよ。
人の想像力を引き出す見立て。
それを使ったデザインがあります
佐藤さんが選ぶグッドデザインを紹介します。
今回佐藤さんが選んだのはプラスチック製のブロックのオモチャです
一つ一つはとてもシンプルな形をしてるんですけれども人のアイデアによってあらゆる造形に変化する事ができると
2つのピースだけでも何通りもの組み合わせができるこのブロック
更にピースを増やせばその組み合わせ方は無限に広がります
一つでは価値がはかれない。
遊ぶ人によってまた価値がそこで発見されていくっていうすばらしい可能性を持ったオモチャだと思います
想像力を使ってその人にとっての価値を見つけ出すオモチャ。
これが今日の梅干なデザインでした
それでは最後のエクササイズです
未来のデザインのヒントをくれる梅干な人にお話を伺います
今回の梅干な人は茶人の千宗屋さんです。
よろしくお願いします。
(拍手)どうも。
よろしくお願いします。
茶道三千家の一つ武者小路千家の次期家元です。
今日は茶の湯の世界の見立てについてお話を伺います
お招き頂いてありがとうございます。
せっかくなのでまずちょっとお茶を一服差し上げながらお話をさせて頂きたいと思います。
よろしくお願い致します。
所作がきれいですね。
あららららら…。
シ〜ッ!いい音ですね。
うん。
さあどうぞ。
どうぞそのまま口から召し上がって下さい。
いきましたね。
器をね。
はい。
まあこの器を見るという事がお茶の一つの楽しみ。
これを媒介にしてコミュニケーションをするんですがお茶会というのはその時の会のテーマに合わせてその器を季節とか招く人とかに合わせてテーマを選ぶんですが実は今回見立て。
あるいは価値を。
どうやって価値が生まれるかみたいなお話だって聞いたものですからちょっとそれに合わせたものを選んできたんですね。
佐藤さん今召し上がって頂いたお茶わんですけれどもこれ私はいくらで求めたと思われますか?うわっ難しい!こういうのね高く言いすぎても低く言いすぎても失礼になっちゃうからドキッとするんだよね。
こここの辺のねこの辺の風合いね。
美しい。
ここはもう佐藤さんにズバリ。
いやいやいや…!いや私想像できないですね。
今答えを言ってしまうとこの茶わんの原価言ってみれば私がこれをいくらで買ったかというと…100円ちょっと。
え〜っ本当ですか!?100万じゃないんですか?じゃないですね。
あっ買います?でも言われたらもう100万でも。
そう見えちゃうもん。
実はこれ日本のものじゃなくてまさにその見立てのものでもあるんですがこれイタリアで僕が求めたんですよ。
イタリアの蚤の市で。
何かないかなと思って探してたらどれでも1ユーロっていう籠があって。
その中にこれと実はこの今お湯を入れたポット。
これも実はそうなんです。
え〜っうそ!1ユーロ?はい。
1ユーロでした。
まあ5〜6年前だからね。
でも170円ぐらいとかですかね。
でもこういう事はなにも今に始まった事ではなくてお茶の世界ではずっと常とう的に行われてて。
まあ千利休という私の15代前の先祖なんですけれども千利休の時代にお茶の道具っていうのはほとんど国産のものはなかったんです実は。
え〜!中国あるいは朝鮮半島。
あるいはいわゆるインドネシアとかベトナムとか。
そういう外国のものを当時珍しいといって持ち込んでそういう珍しいもので見どころのあるものをどんどん取り入れてそういうものを楽しむ場としてお茶っていうものを作り上げてきた。
ところがだんだんものに対して意識が行き過ぎてきて何か一種のマネーゲームの場みたいになってきてしまったんですね。
それに対して千利休という人が日本人のための日本のお茶という新たな価値観を作る。
そのために職人に命じて全部自分の好みの器を今度は作るようになった。
利休によって初めて器のためのお茶から茶のための器になったっていうところが利休っていう人のお茶や日本の歴史の中での大きな功績なんですね。
利休は独自の美意識でそれまでの茶の湯の世界の価値観をガラリと変えてしまいました。
この籠も利休ならではの美意識を表す一例です
これは利休がたまたま川べりを歩いてた。
そしたらアユ釣りの漁師がいて漁師が腰から提げていたいわゆる魚籠ですよね。
魚を取るための籠。
それをこれは姿がいいといって持って帰って洗ってそこに筒を入れて水を張って花を生けて床の間に飾って花入れにしたっていうんですね。
でも当時の茶室の床の間に飾る花入れっていうのはそれまでは中国とかいわば外国から伝わったりした非常に珍しくて経済的にもそして更には政治的な権威も乗っかった非常に高い価値を持ったもの。
それを飾る場所にこの漁師の籠を置く。
一歩間違ったらお前天下人をおちょくってんのかというふうに信長や秀吉に責められてもしょうがないですよね。
それを大胆に自分の目と美意識と価値観を信じて利休はそれをやってのける。
例えばこれなんかでもね利休さんが切った竹の花入れですけどこれ道端にコロンと転がってたらね何か青竹踏みみたいな。
これ要するに茶室に持ち込まれた花を生けて初めて美しい。
それまでは器を見る事が目的だったところからやっぱり器じゃなくて花だろっていう。
器じゃなくてお茶だろと。
更にはそこにいる人だろという。
人と人が交わるのがお茶の場の一番じゃないかっていうのが多分利休が目指したお茶の世界だったと思うんですけども。
そうやって利休はお茶そのものをデザインし直したと思いますよね。
日常にある何気ないもの。
利休は見立てを使ってそこにある隠れた価値を見いだしました
見立てを楽しむ茶の湯ですが見立てるのは道具だけではないそうです
今日皆さんここでいろいろお話いろんな講義を聴いてられますけど香りを感じられませんでした?何か…。
しますよ。
さっきまでしてなかったような。
それだけで何か気持ちが改まりませんか?何か違う場所にいるような。
はい。
いや実は今僕はこの場を瞬間的に茶室に見立てようと。
皆さんが今まで話を聞いてた場ですけれども違う場だよと。
ここはいっぺん仕切り直して今お茶の空間だっていう。
それを一番手っとり早く演出するのに必要なのは匂いですよね。
これだけは嗅覚っていうのは意識するしないにかかわらず入ってくるから誰でも気付く。
だから強制的にある種スイッチを変えられるっていうのかな。
だから私はいつもお茶じゃない所でお茶をする時にその場をまず茶室に見立てるという作業を意識するんですね。
その時に照明を落とすとかちょっとロウソク1本立てる。
それだけでも雰囲気変わるんですよ。
喫茶っていうねお茶を飲むという行為自体は日常的じゃないですか。
特に日本人は「日常茶飯」っていうように茶と飯。
茶を飲む飯を食べるっていうのはもう日常なんですよね。
でもその日常的なお茶を飲む。
あるいはお菓子を頂くという事をいかに非日常の行いとしてやるか。
最も非常的な行為だから違う場でやる事で特別感が際立つんですよね。
だからお茶を飲む時には普通だったらお菓子つまみながらお茶飲んでだべるところをあえてお茶の時は先にお菓子を食べてお茶を飲む時はお茶を両手でお茶わんを両手で持ってお茶を飲む事だけに集中して頂く。
そうする事によって日常に使ってない感覚がどんどん研ぎ澄まされていって非日常に心を遊ばせてそこで相手と自分の関係を見つめ直したりあるいは自分自身を振り返ってしばし心を静める。
そしてまた日常に戻っていくっていうのがお茶の一番の効用だと思うんですけど。
茶室で膝突き合わせてしゃべってるとやっぱり日常離れた場だからいくらでも相手の本音がね出てきたりする事あるんですよね。
お茶会終わると何かすごく気持ちが明るくなったと言って帰っていかれる方もおられますし。
決して何となく作法だったりとか何か堅苦しかったりとかみんな思い込んで誤解してられる部分があるんですけどそうじゃない。
デザインっていう概念は近代になって入ってきたんですけどねヨーロッパの方から。
だけどそこから日本の茶の湯の世界とか遡っていくと実は日本に脈々とすばらしいデザインが潜んでるっていう事がね分かってくる訳ですよね。
皆さんもこれを機にお茶に親しんでもらえたらと思います。
今日はどうもありがとうございました。
今回もやってまいりましたけども富美加ちゃん。
そうですね一番最初はお金から入ってってやっぱり値段が高いものは価値があると思うんですよ。
でもそれはなぜ高いかっていうと目に見えない価値につながってるからだと思うんですよ。
価値っていうのは値段で表す事もできるけど本質的には価値っていうのはお金では代えられなくて言葉とか形では表せないものなんじゃないかなって思いました。
私もやっぱり元気がない町とか地方都市とかって既にとてもポテンシャルがあるとか何か持ってると思うんですけどとかくそれにじゃあこういうふうにしてお客さんを呼ぼうとか付加価値じゃないですけどプラスアルファしようとするんだけどそうじゃなくてもっと人の営みとか町とかの中には既に本質的な揺るがない何かいいものが眠ってると思うのでそれをこうその周りのモヤモヤを取り払って見いだす。
それを伝えるっていうのをすごく…。
何だろううまく言葉にできないですけどそれを自分の仕事として今後もやっていきたいなというのがすごくあるので今日の話はすごい刺激的でした。
面白かったです。
刺激になってますね。
ふだんグラフィックデザインの作品を作ってる時にかっこいいとかかわいいとか価値をペタペタくっつける作業ばかりしていたなっていう事を気付かされました。
このお話を通して価値って何だっていう事をもっと本質的に考える方法を学んだような気がするので4月からデザイナーとして働く上で生かしていけたらなと思います。
いいですね。
授業料もらっちゃいますね。
そうですね。
出世払いでね。
今日はお金っていうものを入り口にして価値というものがどういうものであるかっていうものを考えてきました。
価値っていうのは見いだすものであって付加するものではないと。
私はやっぱり「付加価値」っていう言葉はとてもよくないって思っています。
価値はやっぱりよ〜くそこを見ていくと既にそこにあるものでそれに気付けるかどうかという事がねとても重要だと。
外側から足すっていうふうな考え方で価値を考えると本来そこにあるものが見えなくなっちゃうんですよね。
今ある状況を見ないで何かをくっつけちゃうとそれはすぐにバレてしまう。
残らないっていうものになるかもしれないですね。
次のまた「デザインの梅干」楽しみにして頂きたいと思います。
第4回は「価値」をテーマにさせて頂きました。
どうもありがとうございます。
(2人)ありがとうございました。
2015/03/19(木) 00:00〜00:45
NHKEテレ1大阪
デザインの梅干 第4回「価値のデザイン」[字][再]

「デザインで考える力」をエクササイズする番組。4回目は100円硬貨を入り口に「価値」について考える。見立てのワークショップから茶の湯まで、幅広くアプローチする。

詳細情報
番組内容
▽デザインの解剖:100円硬貨の材質・デザイン・買えるもの=お金としての機能に着目して解剖▽デザインの体感:手軽にできる「見立て」のワークショップ。1本の線を紙に描いて、参加者どうしで交換。描かれた線が何に見えるか?創造力が刺激される▽梅干な人:武者小路千家の若宗匠・千宗屋さんが登場。テーマにあわせて見立てたという「茶碗」を披露。ズバリ、いくらで買ったものか?という質問にスタジオでは驚きの声が…。
出演者
【ゲスト】茶道(武者小路千家若宗匠)…千宗屋,【講師】グラフィックデザイナー…佐藤卓,【出演】田中卓志,清水富美加,【語り】BIKKE

ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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