アスリートの魂「今この一瞬を フットサル 久光重貴」 2015.03.19


はいお待たせしました。
(久光)おっ!いつもどおりの。
シゲちゃん特別メニューです。
フットサルの日本リーグFリーグでプレーする久光重貴選手。
昼食のあと必ずする事があります。
33歳。
今重い肺がんと闘っています。
肺に腫瘍が見つかったのはおととし5月でした。
既にリンパ節にまで転移し手術で治す事は難しいと告げられました。
(医者)大きさもまあ3センチぐらいですかね。
全盛期には日本代表にも選ばれたトップアスリート。
がんの告知を受けてもピッチに立つ事を諦めませんでした。
しかし自ら選んだ道は試練の連続でした。
肺がんの影響で…僅かな運動ですぐに息があがります。
筋力も衰えけがにも悩まされました。
更に体をむしばむがんの進行。
自分には時間がない。
最後の一秒まで闘い抜く覚悟を決めました。
今目の前の一瞬を全力で生きる。
人生の全てを懸けて闘ったアスリートの9か月の記録です。
フットサルのFリーグ湘南ベルマーレに所属する…取材を始めたのはリーグが開幕する去年6月。
肺がんの告知から1年がたち呼吸にも息苦しさを感じていました。
頑張って!心肺機能は著しく低下。
ウオーミングアップでも3分ほどで息があがります。
それ以上続けると体に深刻なダメージを与えかねません。
心拍数や酸素摂取量を何度も測り体の状態を確かめながら練習を続けていました。
フットサルは5対5で40分間ピッチを走り続ける過酷な競技です。
試合中は何度も交代ができ目まぐるしく選手が入れ代わります。
久光選手のポジションはフィクソと呼ばれる守備の要。
体を張ったディフェンスで相手の攻撃を封じます。
更にチャンスと見るや一気に…
(歓声)このプレースタイルでサポーターからは闘将と呼ばれ日本代表にも選ばれました。
がんを抱える今全力でプレーできる目安は…それでも交代が自由にできるフットサルならば自分にも貢献できると現役続行をチームに直訴。
チームもその決断を受け入れました。
開幕直前久光選手はがんの状態を確かめるため病院へ向かいました。
シーズンは翌年2月までの9か月間。
がんの進行や転移があれば最後まで戦う事は難しくなります。
いろいろね精密検査をしました。
脳転移がないかどうかというのをMRIを撮りました。
え〜大丈夫でした。
まあ試合に出る事が一番の目標なのでね本当に頑張って下さいね。
試合に出て結果を残す事を…。
そうですねはい。
いい報告がまたできるように頑張ります。
応援してますので頑張って下さい。
ありがとうございます。
じゃまた来月。
はい。
よろしくお願いします。
この日病状の悪化は見られませんでした。
久光選手は改めてシーズンを戦い抜く決意を固めていました。
7月久光選手はシーズン最初の出場を果たしました。
守備の要フィクソのポジションに入ります。
・久光!久光!・久光!久光!久光!しかし相手選手に当たり負けし本来のプレーができません。
ベンチに戻る度に体の状態を確かめます。
・ナイス声ナイス声!1点取ってくれるよ。
まず1点取ってくれる!出場時間は目安の3分を超えていました。
(観客)久光!久光!久光!突然久光選手が交代を申し出ます。
その直後思いも寄らない事態が起こりました。
倒れ込む久光選手。
吐血しました。
それは正直な話です。
自分の闘いが死と隣り合わせである事を思い知らされた久光選手。
それでも諦められない理由がありました。
久光選手はサッカーの指導者だった父慶重さんの影響で小学校の時にサッカーを始めました。
強豪帝京高校に進学。
夢はJリーガーでした。
しかしチームからの誘いはなく高校卒業後職を転々。
人生の目標を見失いました。
転機となったのは7年前父慶重さんの死でした。
生前父から送られた手紙。
久光選手は初めてその言葉をかみしめます。
「苦しみや行きづまりは成長へのメッセージ」。
父の言葉を胸に強く生きていこうと決意しました。
ちょうどそのころ新たにFリーグが創設されます。
フットサルとの出会いに再起を懸けた久光選手。
開幕戦大観衆の前で2得点。
沸き起こった歓声に心が震えました。
この場所なら目標を持って生きていける。
いつしかフットサルが人生そのものになっていました。
その後28歳で日本代表。
31歳でがんを告知された時もフットサルへの情熱は失いませんでした。
(声援)フットサル選手として最後まで生き抜く。
その思いが久光選手を支えています。
人生そのものをやっぱり懸けてきたものだし懸けていきたいものなのかな。
諦めないで…それをやり続けるっていう事が自分の中で一番大事。
10月久光選手は医師から重い事実を告げられました。
抗がん剤が効かなくなりがんが少しずつ進行している。
このままフットサルを続けるべきかそれとも治療に専念すべきか。
決断を迫られていました。
いつものように練習に現れた久光選手。
(取材者)おはようございます。
おはようございます。
体調大丈夫ですか?なんとか。
この日一つの決意を固めていました。
次の試合を最後に引退し治療に専念しよう。
監督やチームメートにも告げず胸に秘めていました。
最後にゴールを決めたいとシュート練習を繰り返す久光選手。
その時でした。
右太ももを押さえピッチに倒れ込む久光選手。
肉離れを起こしていました。
がんで状態の悪い体を無理に追い込んだ結果でした。
練習後のミーティング。
突然久光選手が語り始めました。
(監督)じゃ終わり。
それぐらいやっぱり思って。
監督に改めて自分の決意を伝えに行った久光選手。
返ってきたのは思いも寄らない言葉でした。
「自分らしく生き抜け」監督からの言葉でした。
こんにちは!こんにちは!今日は久光選手遊びに来ました。
ゴロゴロ動かして…。
足の裏でゴロゴロ動かして下さい。
はいかかと!爪先。
いくよせ〜の…。
(子どもたち)54321…。
0!はいOK!ありがとう。
何でももらうな。
(笑い声)久光選手のサインです。
後半戦に入りチームは12チーム中10位と低迷していました。
けがの状態がよくなってきた久光選手。
少しでもチームの力になりたいと考えていました。
再びけがをしないように誰よりも早くピッチに現れ入念にウオーミングアップを続けていました。
力強いディフェンスを取り戻すためがんの影響で衰えた筋肉も一から鍛え直しました。
持ち味の当たり負けしないディフェンスが少しずつ戻ってきました。
一方課題となったのはシュート。
長く試合を離れているためなかなか感覚がつかめません。
思いどおりにいかないプレー。
それでも悔いが残らぬよう全力で練習を続けました。
でメンバーね。
試合前日のメンバー発表。
でそのビブスと…晃都と晃。
あと冨田。
OK?監督はこの日も久光選手を選びませんでした。
よ〜お。
(手拍子)今のシュート力では戦力にならない。
アスリートとして厳しい現実を突きつけられました。
この日久光選手はある場所へ向かっていました。
亡き父慶重さんのお墓です。
人生に迷っていた時諦めるなと励ましてくれた慶重さん。
その言葉を思い返していました。
もう一度ピッチに立つ。
亡き父に誓いました。
シーズン終了まで残り3か月。
久光選手は試合に出場できない日々が続いていました。
体力に不安があるため遠征には参加できない久光選手。
出場のチャンスはあと4試合です。
練習ではこれまで以上に激しく追い込みシュートを打ち続けました。
残された時間たとえ一秒でも無駄にはできない。
シュートチャンスを増やすためチームメートと何度も連係の確認を行いました。
ヒサさんがワンフェイクした時こっち来るなと分かってたんであと俺がボールさえ受ければ…。
その姿にチームメートも心を動かされていました。
集合!試合のメンバー発表。
今度は選ばれるのか。
しっかりモチベーション保って…。
メンバーを選びました。
先発陽太!小野!ボラ!安藤!健!ついにメンバー入りを勝ち取った久光選手。
ゴールを決めて低迷するチームの起爆剤になってほしい。
強い願いが込められた起用でした。
進み続けるがん。
右太ももの肉離れ。
さまざまな困難を乗り越えようやくたどりついたピッチです。
3か月ぶりの出場。
チーム浮上のきっかけにするため負けられない一戦。
相手は例年上位に食い込む攻撃力が自慢のチームです。
(ホイッスル)久光選手はベンチからのスタート。
チームは開始早々先制します。
そのリードを守りたい場面。
監督がディフェンスの強い久光選手を呼びます。
(観客)久光!久光!出場時間の目安は3分。
最初のプレー。
久光選手がマークするエースストライカーにパスが入ります。
体をぶつけ奪い返しました。
得点を許しませんでした。
試合は1点リードのままこう着状態。
再び久光選手に声がかかります。
今度は自分が得点して流れを変える。
手を大きく広げパスを要求します。
そして久光選手にボールが。
相手ディフェンスとの1対1。
惜しくも正面でした。
その直後再びチャンスが巡ってきました。
相手のミスに反応しミドルシュート。
既に出場は3分を超えました。
刻一刻と過ぎる時間。
何としても1点を取りたい。
その時味方がパスカット。
一気に前線へ攻め上がります。
ラストパスの相手は久光選手でした。
仲間から託されたボール。
右足を振り抜いたこん身のシュートでした。
(観客)久光!久光!久光!久光選手の戦いが終わりました。
ピッチを離れてもチームメートに声をかけ続けます。
(ホイッスル)限られた時間の中で目の前の一瞬に全力を尽くしました。
試合後久光選手は一つの決断をしました。
がんはもはや選手生活を続けられないほど進行していました。
それでも来シーズンも生きてピッチに立つため新たな治療に踏み切る事にしました。
最後の残り1秒まで可能性を信じていれば勝つ試合もあれば残り1秒で負ける試合もあるし。
僕も…。
生きてる中でその最後の最後1秒のところまではやれる事を探し続けないといけないんだろうなって。
久光重貴選手33歳。
必ず生きて来シーズンも戦う決意です。

(観客)久光!久光!久光!2015/03/19(木) 02:00〜02:45
NHK総合1・神戸
アスリートの魂「今この一瞬を フットサル 久光重貴」[字]

フットサル元日本代表の久光重貴選手は、肺がんと闘いながらピッチに立ち続けてきた。支えるのはアスリート人生を全うしたいという思い。33歳。決意のシーズンを追った。

詳細情報
番組内容
久光重貴選手(33歳)は、フットサル湘南ベルマーレの守備の要。一昨年、肺がんを告げられたが、現役続行を直訴し復帰を果たした。しかし心肺機能の低下で3分ほどで息が上がる。それでも体を張って限界まで闘う。かつてJリーガーの夢を絶たれフットサルに生きがいを見出した久光選手を支えるのは、「人生に悔いがないよう、今を全力で生きたい」という思いだ。持てる全てを懸けて闘う久光選手の挑戦を見つめた。語り:萩原聖人
出演者
【語り】萩原聖人

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – スポーツ
スポーツ – その他の球技
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント

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