みんなもきちんとおはなしできるといいぞ!じゃあな!にんぎょはみなみのほうのうみにばかりすんでいるのではありません。
きたのうみにもすんでいたのであります。
ほっぽうのうみのいろはあおうございました。
あるときいわのうえにおんなのにんぎょがあがってやすんでいました。
そのにんぎょはこどもをみごもっておりました。
「わたしたちはもうながいあいだこのさびしいはなしをするものもないうみのなかでくらしてきたけれどこれからうまれるこどもにこんなかなしいたよりないおもいはさせたくないものだ。
にんげんはこのせかいのうちでいちばんやさしいものだときいている。
いちどにんげんがそだててくれたらけっしてむじひにすてることもあるまい」。
にんぎょはそうおもったのでありました。
かいがんにちいさなまちがありました。
おみやのあるやまのしたにちいさなろうそくやがありました。
あるよのことでありました。
ろうそくやのおばあさんはおじいさんにいいました。
「このおやまにおみやがなかったらろうそくがうれません。
わたしたちがこうしてくらしているのもみんなかみさまのおかげです。
そうおもったついでにおやまへあがっておまいりをしてきます」。
「おおわたしのぶんもよくおれいをしてきておくれ」。
おみやへおまいりをしておばあさんはやまをおりてきますといしだんのしたにあかんぼうがないていました。
「おおかわいそうにかわいそうに」。
そのこはおんなのこであったのであります。
そしてどうからしたのほうはさかなのかたちをしていましたのでおじいさんもおばあさんもはなしにきいているにんぎょにちがいないとおもいました。
「これはにんげんのこじゃないが…」。
「しかしなんというやさしいかわいらしいかおのおんなのこでありましょう」。
「かみさまのおさずけなさったこどもだからだいじにしてそだてよう」。
こどもはおおきくなるにつれてくろめがちなうつくしいおとなしいりこうなことなりました。
むすめはおおきくなりましたけれどすがたがかわっているのではずかしがってかおをだしませんでした。
おくのまでおじいさんはせっせとろうそくをつくっていました。
むすめはじぶんのおもいつきであかいえのぐでしろいろうそくにさかなやかいやまたかいそうのようなものをじょうずにかきました。
おじいさんはびっくりいたしました。
だれでもそのえをみるとろうそくがほしくなるようにそのえにはふしぎなちからとうつくしさとがこもっていたのであります。
「うまいはずだ。
にんげんではないにんぎょがかいたのだもの」。
「えをかいたろうそくをおくれ」といってあさからばんまでこどもやおとながこのみせさきへかいにきました。
するとここにふしぎなはなしがありました。
このえをかいたろうそくをやまのうえのおみやにあげるとどんなおおあらしのひでもけっしてふねがてんぷくしたりおぼれてしぬようなさいなんがないといつからともなくみんなのくちぐちにうわさとなってのぼりました。
「ほんとうにありがたいかみさまだ」。
「ありがたいありがたい」。
「なんてありがたいかみさまだ」。
けれどだれもてのいたくなるのもがまんしていっしんにろうそくにえをかいているむすめのことをおもうものはなかったのです。
あるときみなみのほうのくにからやしというあやしいおとこがやってきました。
「たいきんをだすからそのにんぎょをうってはくれないか?」。
「このむすめはかみさまのおさずけですからどうしてうることができましょう」。
「ふふんむかしからにんぎょはふきつなものとしてある。
いまのうちにてもとからはなさないときっとわるいことがあるぞ」。
としよりふうふはついにやしのいうことをしんじてしまいついかねにこころをうばわれてむすめをうることにやくそくをきめてしまったのであります。
「わたしはどんなにもはたらきますからどうぞしらないみなみのくにへうられていくことをゆるしてくださいまし」。
つきのあかるいばんのことであります。
いつかのやしがいよいよむすめをつれにきたのです。
おおきなてつごうしのおりをくるまにのせてきました。
「さあおまえはいくのだ!」。
むすめはせきたてられるのでろうそくをみんなあかくぬってしまいました。
むすめはあかいろうそくをじぶんのかなしいおもいでのかたみに2〜3ぼんのこしていってしまったのです。
ほんとうにおだやかなばんでありました。
(とをたたくおと)「どなた?」。
するとひとりのいろのしろいおんながとぐちにたっていました。
おばあさんはびっくりしました。
おんなのながいくろいかみがびっしょりみずにぬれていたからであります。
おんなはあのまっかなろうそくにじっとみいっていましたがやがてぜにをはらってあかいろうそくをもってかえっていきました。
そのよのことであります。
きゅうにそらのもようがかわっておおあらしとなりました。
ちょうどやしがむすめをふねにのせておきあいにあったころであります。
「このおおあらしではとてもあのふねはたすかるまい」。
そのよなんぱしたふねはかぞえきれないほどでありました。
ふしぎなことにあかいろうそくがやまのおみやにともったばんはどんなにてんきがよくてもたちまちおおあらしになりました。
それからあかいろうそくはふきつということになりました。
しかしだれがおみやにあげるものかまいばんあかいろうそくがともりました。
それをみただけでもそのものはきっとうみにおぼれてしんだのであります。
もはやだれもやまのおみやにさんけいするものがなくなりました。
いくねんもたたずしてそのしたのまちはほろびてなくなってしまいました。
2015/03/19(木) 09:10〜09:20
NHKEテレ1大阪
おはなしのくに「赤いろうそくと人魚」[解][字]
ろうそく屋の老夫婦に育てられた人魚の娘。しかし悪者にそそのかされた老夫婦は娘を売り飛ばしてしまう。後には娘が真っ赤に塗ったろうそくが残され…【語り】篠井英介
詳細情報
番組内容
世界の名作を一流の語り手が表情豊かに読み聞かせる「おはなしのくに」。ろうそく屋の老夫婦に拾われた人魚の娘は、大切に育てられ美しく育った。彼女が赤い絵の具で絵を描いたろうそくは、山のお宮に供えると海難事故に遭わないと評判に。しかしうわさを聞きつけた香具師にそそのかされ、老夫婦は人魚を売り飛ばしてしまう。人魚の娘が最後に残したのは真っ赤なろうそく、それを取り戻しにきた人魚の母は…【語り】篠井英介
出演者
【語り】篠井英介
ジャンル :
趣味/教育 – 幼児・小学生
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
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日本語(解説)
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