きょうの健康 増える血液がん「多発性骨髄腫」 2015.03.19


(テーマ音楽)知っておきたい健康情報を分かりやすくお伝えしましょう。
「きょうの健康」です。
今週は「増える血液がん」をお送りしています。
これまで白血病や悪性リンパ腫などをお送りしてきましたが今日はこちらです。
このがんはどういうがんですかね?ちょっとこちらをご覧下さい。
とてもゆっくり進行するというのが特徴なんです。
でも治りにくく再発が多いという事もあります。
また骨が痛むという事がよくあります。
ではこの多発性骨髄腫について分かりやすく教えて頂く事に致しましょう。
専門家をご紹介致します。
血液がん特に多発性骨髄腫の診断や治療がご専門でございます。
どうぞよろしくお願い致します。
今日取り上げて頂く多発性骨髄腫を患う方の年齢の傾向はいかがでしょうか?ほかの血液がんと同じように60歳代70歳代の方に多いのが特徴です。
40歳以下の方では非常にまれです。
多発性骨髄腫の治療というのは進歩しているんでしょうか?かつては診断後の余命が2年から3年といわれていましたが治療法が進歩した現在は大きく延びてきています。
骨の痛みなどのつらい症状も抑えられるようになっているんです。
随分進歩してきているんですよね。
それでは多発性骨髄腫も血液のがんの一つという事ですがどのような状態のがんという事なんでしょうか?血液は骨の中にある骨髄というとこで作られます。
骨髄の中にある造血幹細胞という細胞はさまざまに姿を変えまして赤血球や白血球や血小板を作ります。
このうちBリンパ球という細胞がありましてこの細胞は病原菌を見つけると形質細胞という免疫を担当する細胞に変化致します。
この形質細胞の一部は骨髄に戻って待機しますがその形質細胞ががん化したものが多発性骨髄腫と呼ばれる病気です。
戻ってきている形質細胞が骨髄でがん化すると…。
そうです。
そういう事なんですね。
これはどんな症状が現れる病気でしょうか?先ほどご紹介あったように自覚症状で最も多いのが骨の痛みなんです。
そして進行すると骨折を来す場合もあります。
このような骨の症状は骨髄腫の患者さんのおよそ8割の方が訴えられます。
特に腰や背中の痛みが多いんですが肋骨や手足の付け根などあちこちの痛みを伴うのが特徴です。
なぜ骨が痛むんでしょう?骨でどんな事が起きてるんでしょうか?正常な骨においては骨を作る細胞と溶かす細胞がありましてバランスよく働いています。
作っては壊して作っては壊してる。
循環してる訳ですね?そうです。
ところが骨髄腫細胞がございますとこのがん細胞が出す物質などによって骨を溶かす細胞の作用を促してしまいます。
骨を溶かす際に酸が分泌されますのでそれを骨の中の神経が痛みとして感じます。
だから骨が痛んでいるんですね。
またこのがん細胞は先ほどお話しした骨を作る細胞の働きを弱めてしまうという作用もあるんです。
それで痛みや骨折も起きてくるという事ですね。
この高カルシウム血症というのはどういう事ですか?骨が溶けて骨に穴が開きますとカルシウムが血液中に出てきまして高カルシウム血症という状態になりますがこれは食欲不振とか吐き気を催すあるいは脱水症状を来します。
ひどくなると意識がなくなってしまう事もあるんです。
血液中のカルシウムの濃度が異常に高くなるからそういう事が起こる訳ですね?そうです。
それではその血液ですが血液そのものにもこの病気でどのような異常が出ますか?骨髄の中のがん細胞は造血幹細胞の働きも妨げてしまいます。
そのために赤血球が減ってしまうと貧血が起こります。
白血球が減ると感染症を起こしやすくなったり病気やけがが治りにくくなったりします。
また血小板は血を止める血液ですのでこれが少なくなると出血しやすいという状態になります。
多彩な症状が出ますね。
ほかにどんな症状があるんでしょうか?形質細胞ががん化した場合はMたんぱくと呼ばれる有害な物質を大量に放出します。
正常な形質細胞というのは抗体を作り出して免疫を担当する訳ですががん細胞の作り出した過剰な多くのMたんぱくが有害物質として作用してしまいます。
すると巡り巡って悪さをするんでしょうか?そうです。
このMたんぱくのかけらが腎臓の尿細管という場所にこのように詰まってしまいまして腎不全が起きてむくみなどの症状が出てきます。
なるほど。
血液そのものには…?このMたんぱくが血液中に増えると血液が粘ってしまいまして頭痛めまい耳鳴りや物が見にくいといった症状を呈する方もあります。
本当にいろいろな症状を見てきましたがそうしますとこの多発性骨髄腫というのは主にこうした症状自覚症状から病気が分かるという事が多いんでしょうか?そうですね。
3人に2人ぐらいは骨の痛みとか貧血による動悸あるいは息切れといった症状がきっかけで診断されます。
特に腰の痛みが多くてぎっくり腰が長く続いていると言っていらっしゃったら多発性骨髄腫であったという患者さんもいらっしゃいます。
血液検査ではどうですか?この病気もできれば症状が出る前に見つけたい病気なんです。
実際に血液検査がきっかけで早く見つかるという患者さんもあります。
そういった場合は先ほどのようにMたんぱくが血液中に増えてきますので血液中の総たんぱくが増えたりあるいはZTTやTTTという検査値に異常が出てきます。
ただしこのZTTやTTTという検査値は肝臓が悪い場合も異常値を示しますので本当に骨髄腫によるものかどうかは詳しく調べる必要がございます。
血液のこうした異常も更に詳しく調べていって診断をつけていくという事ですね。
はい。
さあ多発性骨髄腫と診断されますと治療の考え方の基本はどうなるんでしょうか?実は多発性骨髄腫は非常にゆっくり進行しますのでがん細胞が見つかっても症状が全くない方がおられます。
こういった方をくすぶり型というふうにいうんですがこの場合は治療せずに経過を見ます。
くすぶり型骨髄腫の患者さんの3人に1人ぐらいはそのままずっと発症しないんです。
発症しないまま過ごしていけるという事ですか。
それ以外の方は数年のうちに徐々に症状が現れますので症状が現れかけた時点で治療を開始する事になります。
具体的にはどんな治療があるんですか?こちらをご覧頂きますと実際には年齢主に65歳を境にして治療法を替えております。
65歳未満の方はお薬の治療を3〜4か月間行ってがん細胞を十分減らしたあと自分の造血幹細胞を用いた自家移植という治療を行います。
それに対して65歳以上の方はお薬の治療を少し長くなりますが9か月から1年余り継続頂く事になります。
お薬の期間がちょっと長いですよね。
ただここで年齢によってこのように治療法を区別しているというこの考え方の背景はどういう事ですか?自家移植という方法は非常に効果の高い治療法ですが体に大きな負担を伴うもんですからこのように年齢で分けております。
実際に重い症状がある方は移植が難しいですし心臓や肺の働きがよくないと移植ができません。
ただし65歳を越える方であっても健康な方は自家移植が可能な場合もございます。
これが可能な場合もあると…。
これはおおよその目安という事です。
こうした治療に使われる薬の内容について伺いましょう。
どんなお薬でしょうか?最初はボルテゾミブという分子標的薬を使います。
これと従来の抗がん薬やステロイド剤を併用して用いる事が多いです。
このボルテゾミブという薬は2006年に登場した分子標的薬でがん細胞の増殖にブレーキをかける作用があります。
治療効果は従来のお薬に比べると非常に高いという事が特徴です。
これは内服…のむ薬ですか?ボルテゾミブは注射薬で従来薬は内服薬が多いと思います。
このボルテゾミブが効きにくい場合というのもありますか?まれにそういった場合もございますがそういった場合にはレナリドミドとかサリドマイドといったお薬を使う事になります。
このサリドマイドというお薬は古くからある薬ですが最近になって骨髄腫の患者さんに有効である事が分かってきました。
これは副作用はどうでしょうね?このボルテゾミブという薬は非常にまれですが間質性肺炎という重い副作用が現れる事があります。
また神経障害とか腸閉塞などを起こす事もありますから最初は入院で治療を行って頂きますがその後は外来で治療をさせて頂いております。
それでは続いて治療法のうちこちら。
自家移植がございますね。
この説明をお願い致します。
自家移植というのはドナーさんからの骨髄の提供ではなくて本人の血液を作る方法です。
手順としてはまずG−CSFというお薬を注射で投与します。
そうしますと骨髄の中の造血幹細胞が増えて末梢の血管の中に出てくるんです。
それを血管の中から幹細胞を採取して凍結する事ができます。
次に抗がん剤を大量に投与します。
これによって骨髄腫細胞だけでなくて正常な造血幹細胞もほとんど無くなってしまうんです。
そういったところに空になった骨髄に凍結しておいた幹細胞を注射で戻してやるという事に…。
空っぽになったところに戻す。
すると…?そうしますと10日から2週間しますと移植された造血幹細胞がまた骨髄に戻って新しく正常な血液細胞を作るようになるんです。
なるほどね。
こうした治療を伺いましたが薬や自家移植といった治療その効果はどうでしょうか?この図をご覧下さい。
縦軸はがん細胞の量を示しています。
横軸は治療の経過を示しています。
先ほど説明したような最初の治療を行う事によって腫瘍の量が…がん細胞の量がどんどん減ります。
ここより下ですね。
そうですね。
この時に骨の症状などがよくなって社会復帰できる方も大変多くいらっしゃいます。
この黄色い部分は症状がないゾーンですね。
この低いゾーン。
一般に移植をした場合には3年程度。
そして薬物療法薬の治療だけの時には2年程度こういった時期が続きます。
20人に1人ぐらいはこのまま再発しないという方もいらっしゃるんですが残念ながらほとんどの方は数年で再発を来します。
しかしながら再発をした場合もピンクのゾーンは症状が出る領域を表していますが症状が出る前にがん細胞が増えてきたら治療を施す事によって長くいい状態で頂くというのが治療の主眼になってまいります。
がん細胞の量をこの低いゾーン薄い黄色のゾーンに抑えておけば症状なしに長く元気に過ごせるという。
それが治療目標ですね。
そうすると放置しておきますとここへ来てしまうと症状が出てしまう訳ですね?はい。
これは治療の大事なところですね。
そして骨の痛みなどの症状がある時には何か対処法というのはありますか?骨の病変骨の痛みに対しては骨粗鬆症に用いるビスホスホネートという薬を使いまして骨病変の進行を抑えて骨の痛みにも効果がある薬です。
そして体重がかかる荷重がかかる部位の骨折を予防するためにコルセットやつえを利用して頂く事も重要な事になります。
骨折を防ぐ訳ですね。
はい。
また痛みのコントロールは非常に大切でありますが骨髄腫の患者さんの場合ではオピオイドという薬を用いて痛みをコントロールして頂く事が重要です。
通常の解熱鎮痛薬は腎臓を悪くしてしまう事がありますので骨髄腫の患者さんにはお勧めできません。
今日は多発性骨髄腫の治療法の進歩も伺ってまいりましたがこの病気に向き合う方のためにメッセージをお願いできますか?この領域は新しいお薬がどんどん登場してまいりまして骨髄腫の患者さんは長くお元気な状態を維持頂けるというような時代になってまいりました。
そしてまだまだこれから新しい薬も登場してまいりますのでもしこの病気と診断をされたとしても前向きに担当医とよく相談をして治療を受けて頂きたいと思います。
コントロールしながら長く元気でいられるという事ですよね。
お話どうもありがとうございました。
(2人)ありがとうございました。
2015/03/19(木) 13:35〜13:50
NHKEテレ1大阪
きょうの健康 増える血液がん「多発性骨髄腫」[解][字]

白血球が成熟した段階でがん化するのが多発性骨髄腫。骨の痛みや骨折がよく起こる。他の血液がんに比べ進行は遅いが再発しやすい。新薬の登場で生存率は延びている。

詳細情報
番組内容
白血球が成熟して免疫を担うようになった段階でがん化するのが多発性骨髄腫。骨髄にがんができるため、骨の痛みや骨折がよく起きる。正常な血液が作られず、貧血、感染症、出血も起こりやすい。有害なたんぱく質が大量に出るため、腎臓にも障害が起きやすい。分子標的薬ボルテゾミブや本人の血液を利用した自家移植で治療する。他の血液がんに比べて進行は遅いが再発しやすい。しかし新しい薬が次々に登場し生存率は上がっている。
出演者
【講師】名古屋市立大学教授…飯田真介,【キャスター】濱中博久,久田直子

ジャンル :
情報/ワイドショー – 健康・医療
福祉 – 高齢者
趣味/教育 – 生涯教育・資格

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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