強力な武士団の統率者は他の武士団を配下に従え武士の棟梁となった。
歴史に対する憧れと深い知識を持ったアイドルの養成所。
それが日本史研究の殿堂高橋歴史女学館である。
日本史研究の殿堂高橋歴史女学館へようこそ。
館長の高橋です。
皆さんご承知のように私はたくさんの時代劇に出演しています。
今まで60人にも及ぶ歴史上の人物を演じてまいりましたがその中に今回学ぶ時代の重要人物がおります。
それがこのお方。
1992年にテレビドラマで私が演じましたけれども。
若いですね。
かっこいい。
館長に似てます。
似てる?兄弟です。
いや親子ですね。
(込山)ああ館長なんだ。
フフフフ。
ところで館長。
後白河法皇ってローマ法王みたいな人が日本にいたんですか?耳で聞くと同じですよね「ほうおう」。
後白河法皇の法皇実は…分かりやすく言うと社長の上に会長がいるとこういった感じですかね。
へえ天皇より偉い人がいたんだ。
それではここでいつものあれを見てみよう。
今回の時代は…この時代皇位を譲った天皇が上皇や法皇となり新たな権力として君臨します。
その経済的な基盤となったのが荘園という大土地所有でした。
こうした流れの中力をつけていったのが武士です。
今回押さえるべき「三つの要」は…武士の時代はどのようにして始まっていったのでしょうか。
前回は武士の登場を学びましたが今回は貴族から武士の時代へその移り変わりを学ぶ訳ですね館長。
そのとおりです。
そこに関わったのが私の演じたこの後白河法皇ですね。
皇位を譲った天皇が上皇となり上皇が出家すると法皇と呼ばれるんですよ。
天皇の位を譲ったあとも政治を行ったという事ですか?館長。
そのとおりなんです。
それはこの時代に院政というシステムがあったからなんです。
こちらをご覧下さい。
私の演じた後白河77代の天皇でした。
そこから遡る事5代。
後白河のひいおじいちゃんに当たります白河天皇。
こちらから院政が始まったんですよ。
では白河天皇の時代から「三つの要」に沿って見ていこう。
その一。
1086年白河天皇は実の子堀河天皇に位を譲りました。
白河は上皇になって政治の実権を握り続けます。
これが院政の始まりです。
この院政実は個人的な理由から始まりました。
白河天皇の父後三条天皇が決めた皇位継承順位では白河の次の天皇は弟の実仁親王になっていました。
白河は自分の子供を即位させるために天皇の位を譲ったのです。
院政とは院が天皇の父や祖父である事を根拠に国の政治を行う事です。
国の制度上は天皇がトップだとしても天皇家の内部では上皇の方が上となり大きな権力を持つのです。
院政の下では旧来の秩序慣習にとらわれず院の近臣と呼ばれる上皇お気に入りの側近貴族や武士などが政治の実権を握りました。
また院直属の軍事力として北面の武士が置かれました。
後に平氏や源氏がここから台頭してきます。
院の近臣や武力を利用しながら上皇が柔軟に国政を運営し社会状況の変化に対応していくのが院政です。
院政はこのあと鳥羽上皇そして後白河上皇と1世紀以上にわたって続いていきます。
天皇を頂点とするピラミッドが律令国家のはずだったのに院政って何かおかしくないですか?込山君の言うとおりなんです。
あなた正しいんです。
こちらをご覧下さい。
この時代院のほかにも貴族寺社お寺とか神社ですねそして前回学んだ武士などさまざまな権力が台頭しつつありました。
つまり権力が分立していたんだね。
何でそんなにたくさんの権力が台頭したんですか?その理由はですねいいですか?めくりますよジャン。
それぞれが荘園という大土地所有を行いましてそれが経済的基盤を作っていったからなんです。
富と権力。
いつの世も結び付いてるっていう訳なんですよ。
(込山)なるほど。
そっか。
いや「そうか」ってこみはる荘園って何か分かる?うん!分かる。
うそでしょ絶対。
分かる?では荘園については次の要で説明しましょう。
「三つの要」その二。
平安時代中期…こうして広げた農地や農村を含む地域が荘園です。
こちらは現在の和歌山県にあった荘園…山に囲まれた集落には神社や寺街道などがあり荘園が人々の生活の場になっていた様子が分かります。
田荘は9世紀に開発が始まり崇徳上皇領として成立。
その後有力武士や後白河法皇そして神護寺という寺社に寄進されています。
荘園はそれらの権力の経済的基盤となり権力の分立を助長する存在となりました。
ところでせっかく開墾した農地をなぜ寄進してしまうのでしょうか?それは寄進する事で有力な貴族や寺社などから荘園の権利を保護してもらうためでした。
更に中央の有力者は不輸・不入の権を持っていたからです。
特権です。
このような荘園は増え続け平安時代の11世紀半ばには各地に広がりました。
不輸・不入という特権があったからこそ院などが多くの荘園を所有し大きな力を持つ事ができたんですね館長。
そのとおりなんです。
後白河法皇も最大で100に及ぶ荘園を所有していたといわれております。
ちょっと待って下さい館長。
荘園は私有地ですよね。
天皇だった上皇や法皇が私有地を持ってもいいんですか?土保君鋭いね。
公地公民の原則の中では天皇が私有地を持つなんて矛盾してますよね。
でも院政なら話は別なんです。
それというのも上皇の地位は法律や手続きなどから自由になっていたからなんだね。
院政は白河天皇が自分の子供を天皇にするために始まったものでしたよね。
でもそんな利点があったんですね。
院政は白河天皇のわがままで始まった訳ですからやりたい放題を続けていたら偶然そうなったってところですかね。
まあ私も後白河のようにあんな事そんな事こんな事…。
まあまあ落ち着いて落ち着いて。
ああ失礼しました。
さてこのように院だけではなく荘園によって経済的基盤を整えた権力は分立致しました。
もう一度図を見てみましょう。
これらの権力の中で誰がこの後の実権を握っていくのかと言えばもうお分かりですね込山君。
はい!武士ですよね館長。
そのとおりです。
ではその移り変わりを見ていこう。
「三つの要」その三。
1156年鳥羽法皇が崩御すると間もなく崇徳上皇と後白河天皇は政治の主導権を巡り対立を深めます。
頂点に立つ2人の権力争い。
その下に位置する摂関家も崇徳派後白河派に分裂します。
この問題を解決するために貴族たちが利用しようとしたのは武士の力です。
後白河天皇は平清盛。
そして源義朝を動員しました。
崇徳上皇側も源氏と平氏の武士を集めます。
後白河天皇側が崇徳上皇の御所に夜討ちをかけ保元の乱が始まります。
乱は短時間で終わり後白河天皇側が圧勝しました。
貴族社会の争いを武力で解決したこの事件は武士の時代の到来を実感させました。
ある貴族の日記には「ムサノ世」つまり武士の支配する時代が始まったと書かれています。
保元の乱から3年後都で再び権力闘争が起こります。
保元の乱に勝利し上皇となった後白河。
その院の近臣たちが内部分裂を起こしたのです。
後白河上皇から厚い信任を得政治の実権を握った信西こと藤原通憲。
これに対し藤原信頼が敵対しました。
信頼は源氏の棟梁となった源義朝と兵を挙げ朝廷に対しクーデターを起こします。
1159年義朝の軍勢は信西一族のいる屋敷を襲います。
平治の乱の始まりです。
義朝は二条天皇と後白河上皇の身柄を押さえ内裏に軟禁します。
そこに登場したのが平清盛です。
乱のさなか京を離れていた清盛は軍勢を整え都に戻ります。
そして二条天皇の奪還を企てます。
内裏を出る牛車。
その中に乗っていたのは女官に変装した二条天皇でした。
この清盛の計らいで脱出に成功します。
皇室を奪還された源義朝は平氏の軍勢と対決。
これに勝利したのは平清盛率いる平氏でした。
保元の乱に続き平治の乱を収めた事で武士の力は更に大きくなりました。
平清盛は後白河上皇の信任を得て高位高官に上り1167年武士としては初めての太政大臣となりました。
そして平氏がリードする政権が行われていきます。
平氏の歴史がつづられた「平家物語」にこんな言葉が残っています。
平家でなければ人ではないという事です。
一族の権力の強さがよく分かります。
この平氏の台頭に危機感を抱いたのが出家して法皇となった後白河です。
1177年後白河法皇とその院の近臣らが平氏打倒の計画を相談します。
しかし計画は清盛に漏れてしまいます。
1179年清盛は武力で後白河法皇の身柄を閉じ込めその院政を停止。
自らが政権を握ります。
日本で初めての武士による政権が誕生したのです。
院と天皇摂関家という三つどもえの争いを収めたのが武士による武力だったという事ですよね館長。
そのとおりなんです。
後白河法皇さん恐らく武士を利用しようとしただけだと思うんですが結果的には武士が台頭する世が来る。
そのお膳立てとして院政の始まりと荘園の発達があったんだという事ですね。
だから世の中って自分が思ってる以上に違う方向へ進んでしまう事ってあるんだなって事ですね。
今回は平安時代について学んできましたがここで特別講師の本郷先生に更に趣のある深いお話をお聞きしましょう。
僕はすごく興味があるのは後白河法皇ですね。
あれ高橋さん演じてらっしゃった時にどういうふうな感情をお持ちになりましたか?私は演じる時には誰かをモデルとして想像したりしてこういう人物だったんじゃないかなってそのモデルになるべく近い人物を演じようと考えるんですけど後白河法皇はあまりにも偉すぎてモデルになるような人がいないんですよ。
確かにそうですね。
その時だけ初めて喜怒哀楽をなくした人物像として演じました。
だから怒ろうと思う時も怒らず悲しい時も悲しまず笑う時も笑わずに何もない無の状態にして演じてみようと。
逆に難しそうですね。
でもその時にその演じ方は非常に監督に褒められまして私は後白河法皇を演じた事によって随分役柄が広がりました。
そうですか。
それからもう一つ僕が興味を持つのは後白河上皇っていうと平清盛っていう…。
ライバルがありますよね。
やっぱり平家政権っていうのはあの時代にとってみると非常に面白いものだったんだろうと思うんですけれども平家政権についてはどうお感じになります?後白河という人物がいたからこそ逆に清盛が出てくるという。
そういう感じですね。
ですよね。
なるほど。
なぜぬきんでて繁栄していったのかというのはやっぱり経済力ですか?それは絶対あったと思うんですよ。
当時平家っていうのは中国大陸の宋というものと貿易をしますね。
そうなるともともとは船のおもしとして銭を敷き詰めていたらしいんですけどその銭が日本に大量に来る。
そうすると貨幣経済が発達していく元を作ったのは平家なんですよ。
それまでは絹であるとかそれからお米であるとかそれから布であるとかそれが貨幣の代わりだったんです。
物を買う時に布か何か払ってもらってきたと…。
そうです。
ところが銭が使えるってなったらこれは便利ですよね。
それを全部掌握していたのが…。
清盛なんです。
日銀ですね。
あっすごい!そうかもしれません。
ほう〜。
そうなると後白河上皇と戦えるだけの実力を持ってたんですね。
武力だけじゃなくて経済力っていうのが…。
武士の台頭の原因になった。
はあ〜面白いね。
そのほか結婚で何か固めていきますよね。
それはやっぱり藤原氏に学んだんでしょうね。
だから天皇家と結び付くために一番直裁に一番効果的なのは婚姻ですものね。
ああ〜。
本郷先生ありがとうございました。
(一同)ありがとうございました。
ところで後白河法皇はこのあとどうなるんですか?館長。
みんなどうなると思います?殺されちゃうかな…。
実は後白河法皇さんなかなかにしぶとい男です。
続きは次回のお楽しみです。
じらすんですか?じらすんですよ。
天皇を頂点とする律令制が崩れ…2015/03/19(木) 14:20〜14:40
NHKEテレ1大阪
NHK高校講座 日本史「院政と荘園」[字]
日本の今は、誰が、どのように作り上げたのか? 日本史研究の殿堂、高橋歴史女学館がその謎に迫る。出演:高橋英樹・AKB48(向井地美音、土保瑞希、込山榛香)
詳細情報
番組内容
今回の舞台は平安時代の後半。この時代、皇位を譲った天皇が上皇や法皇となり、新たな権力として君臨した。天皇を頂点としたピラミッド型だった古代の権力構造は、院、天皇、貴族、寺社、そして武士というように分立を始めた。それぞれの権力の基盤となったのが荘園だった。そして分立した権力同士の争いを制した武士は中世の政治の主人公となっていく。古代から中世へ、時代の一大転換期の日本の姿を見つめる。
出演者
【講師】東京大学史学編纂所教授…本郷和人,【出演】土保瑞希,向井地美音,込山榛香,【司会】高橋英樹,【語り】杉村理加
ジャンル :
趣味/教育 – 中学生・高校生
趣味/教育 – 大学生・受験
趣味/教育 – 生涯教育・資格
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