子供にも教えたい!自転車の関する25の交通ルール
買い物や通勤、通学、レジャーなど、日常生活に欠かせない自転車。
通勤で街中を颯爽と駆け抜けたり、サイクリングを満喫したり、近年の健康志向やエコへの意識の高まりと相まって、自転車をライフスタイルの一部として楽しんでいる人も増えているようです。
そんな気軽で便利な自転車ですが、じつはその裏には大きな危険が潜んでいます。
そこで今回は、「自転車関連の交通事故」や「高額な損害賠償支払い」、知っておきたい「自転車の法律」などについてまとめてみました。
自転車に対して危険を感じる人は意外に多い?
まずは、あるアンケートの結果についてご紹介したいと思います。
自転車の危険運転に関する調査結果です。
質問)自動車を運転していて危険を感じる自転車の行動とは?
回答)
歩道からの飛び出し:33名
携帯電話の使用:25名
無灯火:19名
信号無視:11名
その他:12名
■調査地域:全国
■調査対象:年齢不問・男女
■調査期間:2014年7月20〜7月28日
■有効回答数:100サンプル
アンケートの結果、日常で遭遇する自転車の行動について危険を感じている人が多いことがわかりました。
・「特に学生の自転車に多いのですが、歩道から前後を確認せずにふらっと車道に出てくることがよくあり、ひやっとします」(30代・男性・会社員)
・「子供たちが脇道から飛び出してきたり、横並びで走っている自転車は本当に迷惑」(20代・女性・アルバイト)
・「高齢者の人が、ふらつきながら自転車に乗っているのは心配にもなるけど、怖い。以前、ぶつかられたことがあるから…」(40代・女性・主婦)
飛び出しの次に多かったのは、携帯電話やスマホの使用でした。
・「スマホになってから、さらに危険度がアップしています。前も見ないで自転車運転するなんて法律違反じゃないんですか?(30代・女性・家事手伝い)
・「スマホを楽しむのは自分の権利、車が注意して自転車を避けるは当然だとでもいうような空気に腹が立ちます」(50代・男性・自営業)
その他にも、「自転車の信号無視は予測できない行動だから怖い」、「無灯火の自転車は暗闇にまぎれていて超危険」という意見も。
自転車による交通事故は増えている?
ここでひとつ、みなさんに質問です。
新聞やテレビ、ネットなどでは毎日のように交通事故のニュースが報道されていますが、
実際、自転車に関する交通事故は増えているのでしょうか?それとも減っているのでしょうか?
正解は……警察庁が2012(平成24)年10月に公表した統計データ「自転車の交通事故の実態と自転車の交通ルールの徹底方策の現状」と、2014(平成26)年2月公表の「平成25年中の交通事故の発生状況」から見ていきましょう。
2011年の全交通事故件数は69万1,937件で、
自転車関連事故件数は14万4,018件。
全交通事故に占める自転車関連事故の割合をみると約20.8%でした。
一方、2013年は全体で62万9,021件、
自転車関連の事故は12万1,040件で、自転車事故の割合は19.2%でした
つまり、全交通事故件数と自転車関連事故件数は、ともに年々減少しているのですが、およそ5件に1件が自転車関連の事故だということです。
さらに、自転車対歩行者の交通事故件数は10年前の1.5倍に増加していること、自転車乗車中の死傷者の約3分の2に、信号無視や安全義務違反などの何らかの交通法令違反があったことなどがわかりました。
ちなみに、平成26年度の統計では、自転車による死亡事故の約78%に自転車側に法令違反があったということです。
自転車事故が多いのは子供?高齢者?それとも…
次に、自転車に関連する交通事故死傷者数を年齢層別にみてみます。
もっとも多いのが、16〜24歳で死傷者数3万1,667人(22.0%)、
次いで、15歳以下が2万6,245人(18.3%)、
65歳以上が2万5,006人(17.4%)の順となっています。(2012年統計)
さて、これらのデータから、以下のことがわかります。
・すべての交通事故も、自転車に関連する交通事故も件数は減少している。
・しかし、交通事故の中で自転車に関する事故の割合は20%前後で推移している。
・死傷者は、15歳以下の子供と65歳以上の高齢者で全体の35%以上も占めている。
・自転車による交通事故の死亡者の約65〜80%に法令違反があった。
これらの数字は多いと思いますか? それとも少ないと感じますか?
こんなにある!自転車に関する法律と罰則
ところで、みなさんは自転車に関する交通ルールや法律、罰則についてはどのくらい知っているでしょうか?
まさか、「そんなのあったの?」という人はいないと思いますが、交通ルールや法律を正確に知っている人は意外に少ないのかもしれない、というのが正直なところです。
というのも、学校で交通ルールや法律を教える授業はないでしょうし、自動車の免許を取得するために教習所に通って、初めて学んだという人も多いのではないかと思われるからです。
しかし、交通ルールや法律はとても大切です。
前述のように、自転車による死亡事故の約8割に何らかの交通法令違反があったことを考えれば、万が一、最悪な結果が起きる前に大人はもちろん、子供もしっかりと交通ルールや法律を学ぶべきでしょう。
そこで次に、自転車に関係する法律について解説したいと思います。
「こんなことまで法律違反なの?」と、びっくりするかもしれません。
「道路交通法とは?」
道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、道路の交通に起因する障害を防止することを目的としたものです。(第1条)
1960(昭和35)年に、それまであった「道路交通取締法」が廃止されて道路交通法が施行されました。
その後、1978年に自動二輪者のヘルメット着用義務化、1992年に運転席と助手席のシートベルト義務化(一般自動車道)、1999年に運転中の携帯電話の使用禁止、2000年に6歳未満の幼児に対するチャイルドシート義務化などが行われ、その他、飲酒運転やひき逃げなどの罰則強化等を経て、現在に至ります。
「自転車とは?」
・道路交通法上、自転車は車両の一種である「軽車両」です。
・ペダル又はハンド・クランクを用い、かつ、人の力により運転する二輪以上の車であって、身体障害者用の車いす、歩行補助車等及び小児用の車以外のものです。
・車体の長さは190センチ以内、幅は60センチ以内。(内閣府令)
・ブレーキが、走行中容易に操作できる位置にあること、など。
・一般の自転車の乗車人員は、16歳以上の運転者の場合、幼児用座席を設けた自転車に6歳未満の幼児を1人に限り乗車させることができます。
「自転車でやってはいけない行為とは?」
先日、2015年6月施行に向けた新たな「改正道路交通法」の施行令が閣議決定されました。
この施行令は、自転車運転による違反の取り締まり強化と事故抑制を目指して、悪質な自転車運転者に対して安全講習の義務化を盛り込んだものですが、この中で自転車の悪質運転・危険行為について14項目を規定しています。
・信号無視
・酒酔い運転
・通行禁止違反
・歩道での徐行違反
・一時停止違反
・通行区分違反
・歩道での歩行者妨害
・路側帯の歩行者妨害
・交差点での右折車優先妨害
・遮断機が下りた踏切への立ち入り
・交差点での優先道路通行車の妨害
・環状交差点での安全進行義務違反
・ブレーキなし自転車の運転
・携帯電話を使用しながら運転するなどの安全運転義務違反
交通違反には、「青キップ」と「赤キップ」があります。
簡単に説明すると、青キップを切られても反則金を払えば済みますが、赤キップを切られれば「略式起訴」されて「前科」がついてしまいます。
たとえば、信号無視をした場合、青キップだと反則金は9,000円。
ところが、今回の法改正によって安全講習を受けることになると赤キップで「3ヵ月以下の懲役又は5万円以下の罰金」になってしまうわけです。
そこで今回は、この14項目を中心に、大人から子供まで自転車に関する「やってはいけないこと」を罰則が重い順に解説していきます。
<5年以下の懲役又は100万円以下の罰金>
〇飲酒運転(第65条)
※もちろん子供はお酒を飲んではいけませんが、大人も自動車と同様に飲酒運転は違反行為です。
なお、「酒気帯び運転」なら口頭での注意指導、「酒酔い運転」であれば刑事処分の対象になる「赤切符」が交付されます。
<1年以上の懲役又は30万円以下の罰金>
〇徹夜や過労などで自転車に乗ってフラフラと走行する(第66条)
<3ヵ月以下の懲役又は5万円以下の罰金>
〇信号無視(第7条)
〇通行禁止道路の走行(第8条)
※道路標識等によって禁止されている道路や場所は通行してはいけません。
〇右側通行(第17条の2)
※自転車は、道路の左側に設けられた路側帯を通行しなければいけません。
〇遮断機が下りた踏切への立ち入り(第33条2項)
〇交差点での右折車優先妨害(第36条4項)
※反対側から進行してきて右折する車両を妨害してはいけません。
〇交差点での優先道路通行車の妨害(第38条2項)
※交差道路が優先道路の場合、通行する車の妨害をしてはいけません。
〇横断歩道での歩行者優先(第38条1項)
※横断歩道で歩行者がいる時は、その直前で一時停止して、歩行を妨げてはいけません。
〇歩道での歩行者妨害(第63条の4の2項)
〇一時停止違反(第43条)
※道路標識のある場所では一時停止しなければいけません。
〇整備不良車の運転(第62条)
※壊れているなどの整備不良自転車を運転してはいけません。
〇環状交差点での安全進行義務違反(第37条の2)
<5万円以下の罰金>
〇無灯火運転(第52条)
※夜間(日没から日出まで)は灯火して運転しなければいけません。
〇ブレーキなし、もしくは故障したままでの自転車運転(第63条の9)
詳しい解説はこちら⇒
「こんなことで逮捕とは…ブレーキなし自転車(ピスト)で全国初逮捕」
http://taniharamakoto.com/archives/1208
<2万円以下の罰金又は科料>
〇路側帯の歩行者妨害(第17条2項)
※路側帯では歩行者の通行を妨げないような速度と方法で進行しなければいけません。
〇並走の禁止(第19条)(第68条)
〇歩道での徐行違反(第63条の4の2項)
〇2人乗り運転(第55条)
※ただし、16歳以上の運転者が安全基準を満たした幼児2人同乗用自転車を運転する場合は、その幼児用座席に幼児2人を乗車させることができます。
〇ベルを鳴らしながら走って歩行者を退かせようとする行為(第54条2項)
※むやみに警報器を鳴らしてはいけません。
なお、道路交通法第71条6号に基づく各自治体の「道路交通規則」では、次の行為が禁止されています。
(ここでは東京都道路交通規則から抜粋)
違反した場合は5万円以下の罰金です。
〇傘をさしての片手運転
〇携帯電話・メールをしながらの運転
〇ペットを連れての運転
〇イヤホンをつけたままでの運転
〇警音器の整備されていない自転車の運転
道路上でやってはいけない行為とは?
次に、路上でやってはいけない行為についても簡単に触れておきます。
「こんなことでも法律違反?」というものもあるかもしれませんが、道路交通法では、以下の行為は禁止されています。(第76条4項)
〇道路で酒に酔って交通の妨害となるような程度にふらつく。
〇道路で交通の妨害となるような方法で寝そべる、座る、立ち止まる。
〇交通のひんぱんな道路で球戯やローラー・スケートをしたり、これらに類する行為をする。
〇道路で進行中の車両等から物件を投げる。
お酒に酔って道路で寝たり、サッカーをしたり、車からタバコをポイ捨てしたり、あなたもやっていませんか?
注意してください! その行為、犯罪になるかもしれません……。
以上、自転車に乗ってやってはいけないことや道路での禁止行為などを解説してきました。
自転車事故で高額賠償金を請求される?
ところで最後に1点、気をつけてほしいことがあります。
それは、自転車事故による高額な賠償金請求についてです。
近年、子供による自転車事故が多発しています。
「子供のしたことだから」とか、「自転車だったらたいしたことないだろう」、などと思っていると大変なことになります!
たとえば、30歳の専業主婦が子供の乗った自動車に衝突された被害で死亡したと仮定して計算してみます。
概算ですが、支払わなければいけない損害賠償金は、およそ7,400万円にもなってしまいます。
実際、2013年には15歳の中学生が乗った自転車が、67歳の女性に衝突した事故で、女性は寝たきりで意識が戻らないことから、約9,500万円の損害賠償金が認められたケースもあります。
自転車保険に加入していなかったとしたら、これほどの金額を払える人はどのくらいいるでしょうか?
考えるだけで怖くなります……。
便利で気軽な自転車ですが、同時に使い方を間違ってしまえば犯罪者になってしまったり、事故による高額賠償金を支払わなければいけない事態にもなり得ます。
ぜひ、自転車に関する法律を学んで、交通違反や事故のないように自転車ライフを楽しんでください。