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もう「ポップス」でなくてもいい (((さらうんど)))インタビュー
インタビュー・テキスト:加藤直宏 撮影:永峰拓也(2015/03/19)
「ポップスに対して関心がなくなったというか、諦めたというか」。取材の冒頭で、鴨田潤から飛び出したその言葉は予想していないものだった。2012年の結成以来、1stアルバムの『(((さらうんど)))』にしろ、2ndアルバムの『New Age』にしろ、これまで(((さらうんど)))が発信してきたサウンドには「ポップス」というコンセプトが一貫してあったように感じていたし、最新作『See you, Blue』もそうした延長線上にある作品だと予測していたからだ。
だからといって、『See you, Blue』がこれまでの(((さらうんど)))の音楽性から劇的に変わり、例えばノイズやドローンの沼地と化しているのかというと、まったくそんなことはない。素晴らしい歌ものであることは変わらず、砂原良徳のマスタリングが施されたトラックはより輝きを増していて、むしろポップスとしての強度は高まっているようにすら感じられる。だが、彼らは言うのだ。「もうポップスに用はないのだ」と。
今回の取材では、そうした彼らの心境の変化にフォーカスしつつ、『See you, Blue』というアルバムの背後にある想いやメッセージについて、大いに語ってもらった。
(((さらうんど)))
イルリメこと鴨田潤(Vo,Gt)、Traks BoysのCrystal(Key)、Kenya Koarata(PC,Drum Machine)の3人により結成されたポップスバンド。2010年夏にシングル“サマータイマー”をフリーダウンロード配信し注目を集め、2012年に1stアルバム『(((さらうんど)))』を発表。それまでにメンバーがいたシーンやジャンルを越えて多くの好評を得る。2013年4月には12インチシングル“空中分解するアイラビュー”(B面は砂原良徳氏のRemix)、そして7月に2ndアルバム『New Age』を立て続けにリリースし、代官山UNITにて行われた『New Age』のリリースパーティー(((ぱれいど)))は、(((さらうんど)))初のワンマンLIVEとしてチケットもSOLD OUTに。2014年11月には自主企画『(((House Party)))』もSTART。
(((さらうんど)))
「もうポップスでなくてもいい」という結論に達しました。ポップスに対して関心がなくなったというか、諦めたというか。(鴨田)
―『See you, Blue』が3枚目のフルアルバムになりますが、これまで(((さらうんど)))として活動を続けてきて、結成当初と現在で変わったことってありますか?
鴨田(Vo,Gt):2012年に1stアルバムを作った頃は、自分たちなりのポップスを作りたいという憧れがあって、実験にも近い感覚でやっていたんですけど、本作を作り始めるタイミングでは「もうポップスでなくてもいい」という結論に達しました。ポップスに対して関心がなくなったというか、諦めたというか。
―それはどうしてでしょう?
Crystal(Key):本作を作り始めるくらいのタイミングで、他のアーティストへの楽曲提供の話があったので何曲か作ってみたんですけど、「なんか違うな」っていう感覚があって。既存のポップスに近づいていくという行為が、(((さらうんど)))にはあまり向いていないことに気づいたというか。
鴨田:まあ、疲れたんですよね(笑)。それで、こんなことをやっている場合じゃないなって。
Crystal:例えば山下達郎さんもジャニーズに曲を提供しているし、そういう職人的な仕事もできる人に憧れがあったから、一度はチャレンジしてみたくて。でも、結局向いていないという結論でした。楽曲提供にチャレンジしてみた経験は、ポップスから離れようと思った理由の1つですね。
―(((さらうんど)))が結成当初から目指していたポップスは、オリコン上位のアーティストとも対等に戦っていくことも含んでましたか?
鴨田:いや、そこまでは……だってカクバリズムからリリースしている時点で、ねえ(笑)。地べたでポップスをやってみたいという感じでした。
―「地べた」というのは?
鴨田:これまで自分たちが活動してきたフィールドのこと。ヒットチャートに向かってポップスを投げるということではなくて、あくまで自分たちのフィールドの中で好きなポップスを作っていこうって。
Crystal:今作に関しては、ポップスに関心がなくなったという言い方もできるし、別の言い方をすれば、自分たちの好きな音楽により集中しているとも言えると思う。
―ポップスから離れようと思った他のきっかけについても教えていただきたいです。
Crystal:制作の過程で、今聴いている音楽とか「あの新作が良かった」という話をメンバーでメールしあっていて、その盛り上がりが今まで以上にあったんですよね。そういうやりとりの中で生まれた音楽を聴いたり発見したりする楽しさを、自分たちの曲に投入するということが、間違いなく今回のアルバムの軸になっていると思います。
―自分たちの音楽性を既定してきたポップスという概念から解き放たれて、純粋に好きな音楽から得た感動を作品に注入したと。これまで(((さらうんど)))が語られる時に「ポップス」という言葉が頻繁に使われてきたイメージがありますが、それに違和感を感じていた部分もあるんですか?
鴨田:いや、これまではむしろ自分たちも「ポップス」という言葉を意識的に使っていたし、そういう自己暗示もかけてました。
Crystal:あと、自分の中でポップスという概念の枠組みが広がりすぎて、ポップスの定義自体が消えてしまっているのかもしれない。声が乗っているものをポップスとすれば、Liaisons Dangereuses(1980年代前半に活躍した、ドイツのニューウェーブバンド。エレクトロニックミュージックのパイオニア)もポップスに入ることになると思うし。
―なるほど。ちなみに先ほど言っていた、今回のアルバムの制作過程中にメンバーの間で盛り上がった音楽とはどういうものなんでしょうか?
鴨田:ハウス全般。前からハウスは好きなんですけれど、今はそれしか聴かなくなりました。
Crystal:最近だとFour TetとFloating PointsのDJミックス(Floating PointsのSoundCloudにて視聴可能)とか、盛り上がったよね。
鴨田:うん。あとさっきも出たLiaisons Dangereusesもそうだし、ジェームス・ホールデン(イギリス・オックスフォード在住のDJ)の『The Inheritors』というアルバムは、Crystalがお薦めしていて聴いたらめちゃよくて。それでポップスの自己暗示が解けたのかもしれない。