2013年5月28日(火)

ネット選挙運動解禁で…

大越
「7月21日に行われる見通しとなった、参議院選挙。
今回は歴史の転換点になるかもしれません。
いえ、選挙結果について、予測をして言っているわけではありません。
変わるのは、その選挙運動の方法です。
初めて、インターネットを使った運動が解禁になります。」

井上
「これまで選挙期間中、ネットを使って、直接投票を呼びかけることは、規制されていました。
有権者は、ネットから最新の選挙情報を得るのは、難しいのが現実でした。
しかし、先月(4月)、『改正公職選挙法』が成立したことによって、政党や候補者は、ネット上で自由に政策を訴えたり、投票を呼びかけたりすることができるようになりました。
ホームページやブログ、ネット上でつぶやく『ツイッター』や、交流サイトの『フェイスブック』。
それに、動画の投稿サイトなどが、選挙運動に全面的に解禁されます。
また、政党や候補者には、電子メールの利用も認められています。
ネット選挙運動が解禁され、初めて行われる国政選挙。
各党はどう臨もうとしているのでしょうか。」

ネット選挙運動解禁 自民党は…

先月、国内最大の動画サイトが開いたイベントに出席した、安倍総理大臣。

安倍首相
「ネットを活用して、日本を、世界を、一緒に変えていきましょう。」



去年(2012年)1月からフェイスブックを活用し、夫人との写真から成長戦略まで発信。
フォロワーの数は、35万人を超えています。
ネットを組織的に活用しようとする、自民党。
参議院選挙に向けた、ネット対策チームの態勢が整いつつあります。

先週、開かれたネット選挙対策の会議です。
安倍政権が高い支持率を維持する中で、ネット上で、政策がねじ曲がって伝わることなどを危惧する声が上がりました。



自民党 平井ネットメディア局長
「ネットメディアがどのように使われるか、どのような影響があるか、わからない。」





また、短い選挙期間中に批判が集中する、いわゆる「炎上」という状況になれば、候補者は大きな打撃を受けかねません。
このため、自民党は、選挙期間中のすべての候補者に対する書き込みをチェックするよう、データの分析業者に委託することにしました。
ツイッターやブログの書き込みを、常時監視。
問題があれば速やかに反論し、削除を要請することにしています。

自民党 小池広報本部長
「選挙中に、この候補者はおかしいと言われると、大変なダメージになる。
党として、そのことを察知し、対応する。」




核心:ネットを制せ

ネット選挙運動解禁 民主党は…

今月(5月)、政権与党時代を総括する大反省会を開催した、民主党。

民主党 枝野元官房長官
「国民の皆さんに過大な期待を与えた。
マニフェストについての精査、足りなかった。
結果的に、うそつき批判をうけるようになってしまった。」

その様子をネットで中継。
25万を超えるコメントが寄せられました。

調査員
「日頃、理不尽と感じているものにチェックお願いいたします。」

生の声とネット上の声の両方を吸い上げ、党としての政策立案に反映させようとしています。
3か月前から、本格的にツイッターを始めた細野幹事長。
フォロワーは1万7,000人を超え、移動の合間も書き込みをチェックします。

民主党 細野幹事長
「いろいろと情報発信しやすくなっている。
皆さんの声が聞けるようになっているので、いろんな人から意見をもらいながら、我々も議論していく形で活用していこうと。」

ネット選挙運動解禁 日本維新の会は…

日本維新の会は、業者を使うなど、大がかりなネット対策は行わない方針です。
一方で、ツイッターを駆使する、橋下共同代表の発信力が武器です。
フォロワーは100万人を超え、その影響力は群を抜いています。
ネット選挙への対応については、ほかの党の出遅れを指摘。

日本維新の会 橋下共同代表
「ネット解禁といっても、実際に有効活用できる政党は少ない。
政党は、広告代理店の餌食になるのではないか。」




ツイッターの書き込みは、多い時には、1日に数十件。
憲法改正や、道州制などについても、発信を繰り返してきました。
ところが、従軍慰安婦問題などを巡る一連の発言を内外から批判され、防戦に…。
橋下氏のネットを使った発信力に、どこまで頼ることができるのか、党として、戦略の練り直しを迫られています。

ネット選挙運動解禁 “拡散”の効果は…

井上
「『ネット選挙』で各党がねらっているのは、情報の『拡散』です。
ツイッターやフェイスブックなどの、SNS=ソーシャルネットワーキングサービスの仕組みを通して、説明します。
政治家がSNSを使って、情報を投稿します。
この読者の中で、『いい情報だ』と思った人が、自分とつながっている人に投稿を紹介します。
さらに紹介が繰り返されることで、候補者と直接つながっていない人たちにも情報が『拡散』することになります。」

大越
「安倍総理のフォロワーが35万人、そして、橋下さんのフォロワーが100万人ということでしたので、そこから、さらに拡散していくとなると、その影響力というのは、本当に計り知れないということになりますね。」

井上
「そうなんですよね。
しかも、ツイッターやフェイスブックは、基本的に費用はかかりません。
多額の費用がかかるテレビCMやポスターなどの宣伝媒体に比べ、政党の資金力に左右されずに活用できるため、小さな政党でも、大きな発信力を得ることが可能になるんです。」

ネット選挙運動解禁 公明党は…

公明党は、ネットを使った、新たな支持層の掘り起こしをねらっています。

公明党 山口代表
「参院選まで2か月というタイミング。
全力で勝ちましょう。」

中央幹事会の様子は、10分後には、党の職員によって、ネット上に公開。
また今月、スマートフォン向けの、独自の「アプリ」を開発。

党が発信する動画や、候補者のサイトも、簡単に見られるようにしました。
そして、参議院選挙の候補者全員に、実名が分かるフェイスブックの活用を促しています。
支持者の周りにいる友人などに拡散させ、票の獲得につなげたい考えです。


公明党 山口代表
「機関紙や、口づてだけでは限界がある。
これまで公明党が手の届かなかった人々、有権者に伝える手段を持った。」

ネット選挙運動解禁 “ビッグデータとは”

情報の拡散効果とともに、もう1つ注目されているのが、ネット上を行き交う膨大な情報、いわゆる「ビッグデータ」の活用です。
ネット上のやり取りから、有権者の思考や関心などを詳細に分析することで、正確な民意をつかみ、票の上積みにつなげようというのです。
去年のアメリカ大統領選挙で、オバマ陣営は、所有している車などから有権者の支持政党を分析し、効率的な選挙運動を展開しました。

ネット選挙運動解禁 みんなの党は…

そのビッグデータを積極的に生かそうとしているのが、みんなの党です。

みんなの党 渡辺代表
「みんなの党は、いち早く、ネット選挙解禁を訴えてきた政党。」

この日は、データの分析業者と打ち合わせを行いました。



データの分析者
「ソーシャルデータ上に現れる民意がどっちを向いているのか。
ポジティブな反応をしているのか、ネガティブな反応をしているのか、そういうところを定点観測していく。」

有権者の関心に寄り添った、的確な政策の発信を目指しています。

みんなの党 松田広報委員長
「ビッグデータの中にいろんな情報、いろんな民意が入っている。
データを活用して、戦略的な発信につなげていきたい。」

ネット選挙運動解禁 生活の党は…

党勢の拡大にネットを生かしたい、生活の党。
今月、小沢代表は、動画サイトの生放送に出演しました。

生活の党 小沢代表
「僕の場合も、全部ねつ造で。」

発言を編集されないネットの生放送を、主張や政策を発表する場として、たびたび活用してきました。
しかし、小沢代表が高い知名度を持つにもかかわらず、「生活の党」が広く認知されていないことが課題だとしています。

生活の党 森代表代行
「生活の党という名前が浸透するように、もう一回、政策とともに拡散していきたい。」

ネット選挙運動解禁 共産党は…

共産党は、支持層の高齢化が課題となっている中、ネット選挙への対応を急いでいます。

共産党 志位委員長
「すべての同志がツイッターやフェイスブックなどSNS、さらにはホームページやブログに挑戦しよう。」

これまでSNSを利用したことがないという志位委員長でしたが、今月からツイッターの投稿を始めました。

共産党 志位委員長
「あれ、失敗しちゃった。
分からない、初心者なものですから。
うまくいきません。」

共産党の党員は、全国に、およそ32万人。
ネット選挙を展開する、大きな力になると見込んでいます。

共産党 志位委員長
「草の根の力でインターネットを上手に活用して、選挙やりたい。
つながりのなかった若い方にも、直接入っていける声を聞けるのが大きい。」

ネット選挙運動解禁 各党の戦略は…

全国に地方組織があることに活路を探る、社民党。
地方の党員に対し、選挙運動にツイッターなどを積極的に活用するよう、促しています。
みどりの風は、無料の動画投稿サイトに、脱原発など、党の主要政策を説明する動画を掲載し、有権者に訴えていく方針です。
新党改革は、ネット選挙の解禁を、小政党の弱点を補うチャンスと捉え、新たに作る会員登録制のサイトを通じて、支持を呼びかける戦略です。

ネット選挙運動解禁 有権者は…

有権者は…。

女性
「今まで新聞とかニュース見ないと分からなかったが、携帯は絶対使っているので、見るようになると思う。」

男性
「興味の無い人でも身近になれば、少しは関心持って、選挙とか投票率上がるのでは。」

男性
「政治家の人が何を言うか、それを受ける側がしっかり判断しないと。」

ネット選挙に、どう向き合っていくのか。
政党や候補者とともに、有権者の対応も問われることになります。

ネット選挙運動解禁 時代の必然

大越
「選挙運動というのは、正に情報の発信ですから、選挙にインターネットを使うことが解禁になったというのは、これはある種、時代の必然だというふうに思います。
大事なのは、有権者が主体的に政治に参加をする、選挙本来の姿に高めていくことだと思います。
そのために、ネットが有効、そして不正のない形で使われるようにしなければならないと思います。」

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