紀伊國屋とDNP、アマゾンに対抗する意図

大手書店グループのライバル両雄がタッグ

出版流通イノベーションジャパン設立の記者会見に臨む、紀伊國屋書店の高井社長(左)と大日本印刷の北島常務(撮影:尾形文繁)

大手書店グループのライバル同士が出版流通市場の活性化に向けてタッグを組む。紀伊國屋書店と、丸善・ジュンク堂書店・文教堂を傘下に持つ大日本印刷(DNP)の両社が、4月1日に折半出資で合弁会社を設立することを、3月19日の共同会見で発表した。電子・ネット書店のシステム共同運営や、ポイントサービスの統合、仕入れ・物流システムの共有化などを検討していく。具体化すれば、アマゾンや楽天「kobo」などのネット専業大手と対峙する、リアルとネットの一大”ハイブリッド書店”陣営が誕生することになる。

4月に設立する合弁会社は「出版流通イノベーションジャパン」。国内大手書店としてはライバルの両社だが、出版販売金額の低迷(1996年2.6兆円から2014年1.6兆円へ)、書店の減少(1999年2万2300店から2013年1万4000店へ)、返本率40%の異常事態といった出版流通市場の落ち込みや、外資系ネット書店の隆盛などを背景にしたリアル書店の危機感を認識し、1年前から両社で共同事業の検討を重ねてきた。

合弁会社は出版流通市場活性化のための調査・研究、新規ビジネスの立案を行う企画会社で、各親会社に施策提言を行う。資本金は1億円。両社の折半出資で、代表取締役には紀伊國屋書店から高井昌史社長、DNPから北島元治常務が就任する。新会社社長には高井社長が就く。両社からメンバーを募り4月から協議を開始する。具体的な事業のサービスインは早ければ年内から順次始める意向だ。

新会社で着手する企画・検討テーマは5つ。

電子・ネット書店強化に物流統合も

第1に電子・ネット書店のサービス強化。両社の電子書店ブランド(紀伊國屋の「Kinoppy」、DNPの「honto」など)は当面維持したまま、コンテンツの仕入れ業務の一本化、システムの共同運営を検討していく。地方にある他のリアル書店も参入できる拡張型のシステム構築を狙い、アマゾンなどに対抗できるリアル書店のためのシステムインフラを目指す意向。また、書籍や雑誌以外の商品も扱えるeコマースサービスの拡充も狙っていく。

第2に両社の会員向けポイントサービスの共通化を目指す。両社間でネットとリアル相互に利用可能なポイントサービスを検討していく。ポイントサービスのシステム構築が困難な地域の書店などの参入も呼び掛け、書店業界のデファクト・スタンダードにする計画。第3には仕入れ・物流システムの構築だ。電子・ネット販売分も含めた仕入れ・物流システムの共有化、物流倉庫の統合化、仕入れ・物流業務の効率化を目指す。共同化で仕入れ機能を拡大させ、販売・在庫データを活用した売り伸ばしも可能となる。

第4に両社が保有する海外リソースを生かしたビジネス構築を目指す。紀伊國屋は海外8カ国に27店舗を持ち、DNPも海外拠点が多い。日本文化の海外発信や海外における販売強化を共同で検討していく。第5にはリアル書店とネット書店の相互連携による読者サービスの向上だ。アマゾンなどネット専業大手にはできない、リアルの集客サービスを検討する考えで、他業態との協業も含め、「子供から高齢者までが楽しめる知のテーマパークとしての書店モデルを構築したい」(高井社長)としている。

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