チュニジア銃撃:日本人と協力、床に伏せ20分…伊の男性

毎日新聞 2015年03月19日 20時54分(最終更新 03月20日 00時54分)

博物館で銃撃された負傷者を搬送する救急隊員=チュニスで2015年3月18日、AP
博物館で銃撃された負傷者を搬送する救急隊員=チュニスで2015年3月18日、AP

 【ローマ福島良典、チュニス宮川裕章】「見ず知らずの日本人と協力して隠れた」−−。19日付のイタリア紙コリエレ・デラ・セラは、チュニジアの首都チュニスで起きた国立バルドー博物館襲撃事件に巻き込まれた男性観光客、アルベルト・ディポルトさん(71)=ローマ在住=の証言を掲載した。ディポルトさんは妻アンナさんの誕生日に地中海クルーズをプレゼント。途中寄港したチュニスで事件に遭遇した。

 博物館では爆発音が聞こえた後、「警官の制服」を着たグループが観光客に向かって発砲しながら博物館に入ってくるのが見えた。「とんでもない事が起きているわ。隠れなければだめよ」とアンナさんにせかされた。

 夫妻らは博物館の窓からバルコニーに脱出。「部屋の中から見られないように、窓の隙間(すきま)を指でふさいだ。見知らぬ日本人観光客が手伝ってくれた」と言う。ディポルトさんを含むイタリア人グループ5人と日本人4人、別のイタリア人1人がそこに隠れた。

 バルコニーに隠れた人々は泣きながら「(見つからないように)黙っていようとお互いに合図した」。ディポルトさんの目に焼きついたのは隠れる前、博物館の展示室で男性が倒れ、血が流れていく場面。「何も考えられなかった。ただただ生き延びたいとだけ思った」と振り返った。

 襲撃は少なくとも20分間続き、3回の爆発音が響いた。「床に横たわって、手をつなぎ」息をひそめた。中庭に駆けつけた治安部隊に合図され、窓の隙間からのぞくと、血の海となった床に2人が倒れていた。

 治安部隊が窓から武装集団に銃撃を始めた。「部屋の中では全てが壊れ、叫び声が聞こえた。その後、急に静かになった」。突然、窓が内側から開いた。「けがはないか?」。声をかけたのは救出に来た治安部隊員だった。「日本人は人質であるかのように両手を上げていた」

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 事件後、バルドー博物館の前には200人を超える世界各国からの報道陣が詰めかけ、警備車両が門の前で警戒するものものしい雰囲気が続いた。

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