福島を取材で訪れた主人公が鼻血を出す描写が大バッシングを受けた『美味(おい)しんぼ』鼻血問題。
騒動から10ヵ月がたった先月、原作者の雁屋哲氏が沈黙を破り、ついに反論本を出版した。タイトルはズバリ『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』(遊幻舎)。鼻血は決して風評ではないとする著者に、じっくりと話を聞いた。
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―鼻血騒動の時はどんな感じでしたか。
雁屋 僕はシドニーの自宅にいたので、日本の騒ぎを最初はよく実感できませんでした。だから、小学館のマンガ雑誌『ビッグコミックスピリッツ』誌の編集者から連絡を受けた時には「フーン」くらいの感じで聞いてました。
―そんなに大ごとではないだろうと。
雁屋 でも話を聞いていくと、編集部に20回線ある電話が朝9時から夜10時まで抗議で鳴りっ放しで、仕事にならないという。そのうち石原環境大臣や安倍首相までが発言し始めた。正直、「なんだこりゃ」って感じでした。
―意外でしたか。
雁屋 きちんと段階を追った議論がありませんでしたから。いきなり「鼻血は風評被害だ」「雁屋哲は風評被害をまき散らして福島県民に害を与えた」って決めつけてる。
―雁屋さんは福島を取材した後、どういう状況で鼻血を出したのですか?