訃報:桂米朝さん89歳=上方落語復興の立役者 人間国宝

毎日新聞 2015年03月19日 22時59分(最終更新 03月19日 23時17分)

桜に手を差し伸べる桂米朝師匠=京都市東山区の安井金比羅宮で2007年3月31日、森園道子撮影
桜に手を差し伸べる桂米朝師匠=京都市東山区の安井金比羅宮で2007年3月31日、森園道子撮影

 戦後の上方落語復興の立役者で、落語家として初めて文化勲章を受章した人間国宝の桂米朝(かつら・べいちょう、本名・中川清=なかがわ・きよし)さんが19日午後7時41分、肺炎のため亡くなった。89歳だった。合同葬儀は25日午前11時、大阪府吹田市桃山台5の3の10の公益社千里会館。喪主は長男で落語家の桂米団治(中川明=あきら)さん。

 1925年、中国・大連生まれ。現大東文化大在学中に落語評論家の故正岡容(いるる)氏に入門した。だが、演じ手が少なくなり、存亡の機にあった上方落語界の現状を見て、評論家としての道には進まず、自ら演じ手になろうと決意。47年、四代目桂米団治に入門した。

 古典を現代にマッチさせるため、細部に工夫を凝らした“米朝落語”は「わかりやすい」と定評があり、幅広い層の人気を集めた。一代で大きくした米朝の名で生涯を通した。

 弟子の育成にも熱心で、月亭可朝さん、故桂枝雀さん、桂ざこばさん、故桂吉朝さんら、数多くの人気落語家を育てた。長男明さんも落語家として活躍し、2008年10月には小米朝改め、五代目米団治を襲名した。

 落語研究の分野でも、埋もれていたネタの発掘、再演や文献研究などに功績を残した。著書に「落語と私」「上方落語ノート」「米朝ばなし・上方落語地図」「米朝落語全集」(全7巻)「桂米朝集成」(全4巻)など。CDの「桂米朝上方落語大全集」は全40集に及ぶ。さらに落語だけにとどまらず、能、狂言、文楽、歌舞伎など広く上方の芸能文化への造詣も深かった。

 紫綬褒章、芸術選奨文部大臣賞などを受章(賞)。96年に、重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定され、02年には文化功労者として顕彰された。09年、落語界では初の文化勲章を受章した。

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