ミャンマー:「仏像にヘッドホン」の広告…宗教侮辱で実刑

毎日新聞 2015年03月19日 19時21分(最終更新 03月19日 21時34分)

 【ヤンゴン春日孝之】ミャンマーでヘッドホンをした仏像のイラストをバーの広告に使ったとして、宗教侮辱罪に問われたニュージーランド人経営者(32)ら3人に対し、裁判所は17日、懲役2年6月の判決を言い渡した。国際人権団体は「表現の自由の侵害だ」と反発しているが、仏教徒が大半を占める世論の大勢は判決を支持しており、民政移管(2011年)以降の仏教ナショナリズムの高まりを反映した形だ。

 経営者は昨年12月、最大都市ヤンゴンで開店したばかりのバーで「ドリンク割引」を宣伝しようと、自身のフェイスブックにイラストを掲載。直後から強硬派の仏教グループが猛抗議したのを受け、警察は経営者とともに店のオーナーと従業員のミャンマー人2人も逮捕した。

 逮捕翌日、店側はイラストを削除し「いかなる宗教を侮辱する意図もなく、無知だった」と謝罪文を載せた。裁判所は17日の判決で、「宗教を侮辱する意図的な企てだった」と断罪した。

 ミャンマーでは、司法機関が政権から独立しているとは言い難く、判決の背景について「今年後半の総選挙に向け、(政権与党が)仏教徒の票を獲得するため政治利用した」との指摘も出ている。

 ネット上では世界各地から「ミャンマーは寛容な仏教国ではなかったのか」「罰金や寺院の清掃奉仕で済む話では」といった批判が噴出。だが、国内では「より重い罪にすべきだった」との強硬論も根強い。

 ミャンマーでは昨年、仏像のイメージを入れ墨にしているとして、カナダ人やスペイン人の観光客が相次いで強制送還される事件も起きている。民政移管以降、仏教徒とイスラム教徒の対立が先鋭化し、暴動が頻発したことから、政権も世論も「宗教」に対し過剰反応する傾向が続いている。

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