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【政治】

海外で武力行使、法案に 安保法制 自公あす合意

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 自民、公明両党は十八日午後、それぞれ党の会合を開き、午前の安全保障法制に関する与党協議で示された中間とりまとめに向けた合意案を大筋で了承した。これで、安保法制の大枠が固まった。歴代政権が「憲法上許されない」としてきた他国を武力で守る集団的自衛権の行使を、安倍政権が憲法解釈の変更で容認した閣議決定から八カ月。二十日の与党協議で正式合意後、政府は閣議決定を具体化する関連法案を条文化する。 

 合意案は、与党協議座長の高村正彦自民党副総裁、座長代理の北側一雄公明党副代表が示し、「安全保障法制整備の具体的な方向性について」と題された。自民党は安保法制整備推進本部で了承。公明党も安保法制検討委員会を開き、北側氏に対応を一任した。

 合意案では、集団的自衛権行使に関する法改正について、昨年の閣議決定が示した「武力行使の新三要件」を武力攻撃事態法や自衛隊法の条文に「過不足なく」盛り込むとした。

 国際貢献を名目とした他国軍の戦闘支援では「新法を検討」として、公明党が難色を示してきた恒久法制定に踏み込んだ。公明党が自衛隊派遣の要件として例外のない国会の事前承認を求めた結果、事前承認を「基本とする」と表記した。

 日本の安全確保を目的とした他国軍への戦闘支援では、周辺事態法の「目的規定を見直す」と明記。「周辺事態」の考え方を撤廃し、自衛隊派遣の地理的な制約を取り払う抜本改正を検討する方向性を示した。米軍以外の他国軍にも支援を拡大する方針を示した。

 国連平和維持活動(PKO)以外の国際的な復興支援活動に自衛隊が随時参加できるようにするPKO協力法改正、武力攻撃に至らない侵害が発生した際に米国などの他国軍を防護できるようにするための自衛隊法改正も盛り込んだ。

 政府は条文案を四月中旬以降に与党協議に提示。両党の了承を得て、五月に関連法案を一括して国会に提出する方針だ。

◆立憲主義 軽視のまま

 <解説> 自民、公明両党の安全保障法制に関する合意案は、他国を武力で守る集団的自衛権の行使を認めた昨年七月の閣議決定内容をそのまま踏襲した。憲法九条の平和主義を変質させかねない重大な問題を、改憲せずに一内閣による憲法解釈の変更で決めた安倍政権。憲法が国家権力を縛るという立憲主義の考え方を否定しているとの批判を顧みないまま、法案化を認めた自公両党の責任は重い。

 安倍晋三首相は集団的自衛権の行使について「武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな場合」に限って許されると説明。直接的な戦闘への参加は否定している。だが、中東危機が発生し、ホルムズ海峡の封鎖で石油の輸入が長期間にわたり滞れば、集団的自衛権を行使する要件を満たす場合もあると強調している。

 今回の与党合意案は、こうした解釈の余地を排除していない。経済危機で武力攻撃と同じ被害を受けたと判断できるなら、海外での武力行使が次々と拡大していきかねない。今回の憲法解釈や法制に、将来にわたって政権を縛る歯止めがあるとは言い難く、安倍首相が抑制的に対応したとしても、次の首相や将来の首相が引き継ぐ保証はない。だからこそ、戦後の歴代政権は憲法の平和主義を尊重し、集団的自衛権は行使できないという解釈を堅持してきたのではないか。

 与党協議は二月中旬に始まり、十八日でまだ六回目。自公が対立したため、当初は長期化の観測も流れたが、途中から明らかに合意を急いだ。「平和の党」を自負する公明党が今月二十六日から始まる統一地方選を意識し、延々と安保の議論を続ける姿は見られたくないと考えたのが大きな理由だ。だが、党内からは「こんな大転換を短い議論で決めて良いのか」と自省の声も出ている。 (大杉はるか)

 

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