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最終更新:2015年3月18日(水) 19時47分

ベア「過去最高」大手で相次ぐ、賃上げ非正規にも広がり

 ホワイトボードに次々と書きこまれていく景気の良い数字。春闘の集中回答日の18日、大企業を中心に去年を上回るベア=「ベースアップ」の回答が相次ぎました。

 「ぎりぎり限界(の額)。将来への投資。今回の結果で日本経済全体が好循環に回り、会社の中も競争力をより一層高める」(トヨタ自動車 上田達郎常務)

 業績が好調な自動車業界では、トヨタが去年を上回る過去最高の4000円を回答。日産自動車は、大手製造業としては最高水準となる月額5000円となりました。

 家具や日用品の製造・販売大手のニトリも、正社員を対象に去年の倍以上となる月額5222円のベースアップを実施しますが、「賃上げの波」は、正社員以外にも。

 ニトリの店舗でパート従業員として勤務する安岡裕子さん。主に、レジ担当として正社員並みの週40時間シフトに入り、新人教育まで任される立場ですが、正社員ではない安岡さんにとって、消費税増税や食料品などの値上げが家計の負担になっていると言います。

 「消費税が上がって大変。賃上げしてくれれば、とてもありがたい」(「ニトリ」でパート 安岡裕子さん)

 非正規の従業員の期待に応え、ニトリは今回、1万6000人にのぼるパート従業員たちの時給も引き上げることを決めたのです。3%を超える賃上げで、上昇率は正社員を上回りました。

 「すごくうれしい。パートにもやっと裾野が広がってきた」(「ニトリ」でパート 安岡裕子さん)

 自動車など製造業とは違って、円安の影響で輸入コストがかさみ経営環境は厳しい中であえて決断した賃上げの意義とは。

 「現場の最前線で働いている方に賃金や働く環境含め、より良く活躍してもらい、結果、生産性につながる」(UAゼンセンニトリ労働組合 小野正行中央執行委員長)

 「パートも社員と同じくやりがい、生きがいを感じるようにしたい」(ニトリホールディングス 似鳥昭雄社長)

 人手不足の中、パート従業員の定着率を高めようという狙いもあります。

 大企業では非正規にまで広がりつつある賃上げ。残るは、日本企業全体の99%を占める中小企業ですが・・・

 「高収益の企業は、賃上げ・設備投資に加え、下請け企業に支払う価格も配慮を求めたい」(安倍首相)

 安倍総理自ら主導してきた「官製」とも言われる春闘。安倍政権が大企業に対して、下請けの中小企業に部品などの取引価格の値下げ要求を見送るよう要請したことを受けて、トヨタ自動車は値下げ要求を見送り「下請けへの配慮」を決めましたが、中小の現場では・・・

 「(平成)23年は(帳簿が)厚いでしょ。どんどん薄くなっている。とても(賃金を)上げられるような状況じゃない。できれば下げたいぐらいの気持ち」(石川金属機工 石川義明社長)

 埼玉県内で船舶の部品などを製造する社員40人余りの会社。取引先である大手造船会社は業績が好調な一方で、大手からの受注量は7年前と比べて半分近くまで落ち込みました。さらに、原材料である銅の価格が上昇しているにもかかわらず、大手は部品の取引価格を引き上げてくれないといいます。

 「原材料が高くなっていて、大手が(取引の)値段を上げない。円安でもうかったものも、我々に還元しないで、内部留保と(大手企業社員の)賃上げ。ますます大手と中小の賃金格差ができちゃう」(石川金属機工 石川義明社長)

 部品製造会社の社長は大企業の賃上げが実現した結果、逆に「下請けの中小企業への恩恵は小さくなる」と不安を口にします。

 来月4月にも物価の上昇分を差し引いた実質賃金が、マイナスからプラスになっていく可能性もあると期待する安倍政権。しかし、賃上げが大手と中小の間の「格差の是正」につながるのか、「広がり」にはまだ限界があるようです。(18日17:51)

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