東北Z「まちのうた」 2015.03.14


(「soma」)・「思い出はもう消えそうだよ消えそうだよ」あの日いろんなものを失った町に届けられた一つの歌。
その歌の名前は「soma」。
歌が呼び起こすのは忘れかけていたかつての町の風景。
その風景を頼りに人々は町のこれからを思い描く。
思いが響き合い町じゅうに広がり続ける。
これはそんな「まちのうた」の物語。
・「潮騒の浜」
(波音)目の前に広がるのは太平洋。
沖合に豊かな漁場がある港。
そして自然がつくりだした美しい風景。
ここは3万6,000人が住む風光明美な町。
物語の始まりは町ただ一つのCDショップ。
店の広さは僅か3坪。
主の森田さんは30年近く町に音楽を届けてきた。
・なに?なになに?・なになに?あああ…。
・あいいや。
なに?・この日忙しいのにはわけがあった。
はいそうなんです〜。
はいすいません。
実は森田さんが店を開けたのは2週間ぶりの事。
休んでいた日は東北各地のライブ会場でCDの販売をしていた。
町の人が減りCDの売り上げも落ち込む中この町で店を続けるためだ。
それでも町の人はこの店を頼りにしている。
またかよ!
(取材者)この店はどんな店?ハハハハッ。
え?なになんて答えればいいか分かんない。
(取材者)来やすい。
なんでだろ?店先には「ハッピー」と書かれた看板。
(取材者)昔から「ハッピー」ってついてたんですか?
(取材者)いつから?
(森田)ハハハハッハハハッ!
(取材者)なんでそれつけようと思ったんですか?
(取材者)どんな紆余曲折あったんですか?8年前森田さんは不況のあおりで一度店を畳み僅か3坪で再出発した。
(取材者)更にそのあと震災まで来て。
まあね…。
不況も震災も乗り越え守り続けてきたこの小さな店。
その事がのちに「まちのうた」を生む事になる。
きっかけとなったもう一つの場所は「えんどう豆」。
南相馬市にある障がい者の作業所だ。
あれは震災直後の6月原発事故で避難していた利用者がやっと作業所に戻ってきた頃の事。
原発事故の影響でそれまでやっていた畑仕事が全くできなくなった。
「給料が払えない」。
所長の佐藤さんは頭を悩ませる。
(取材者)佐藤さんは?外に出なくてもできる仕事として始めたのが缶バッジ作り。
この缶バッジが思いがけない出会いを生み出す事になった。
バッジを注文してくれる人を探そうと佐藤さんはあの3坪のCDショップを訪ねた。
話を聞いた森田さんは仕事で関わりのあるミュージシャンに缶バッジを注文してもらえないかと依頼する。
その時に声をかけたのがくるりだった。
独特の歌詞とメロディーで多くの若者から人気を得ているくるり。
数々の映画音楽も手がける日本を代表するバンドの一つだ。
缶バッジの制作を快諾したくるり。
1,000個のバッジをえんどう豆に注文する。
バッジは彼らが主催するイベントで完売。
その時できたくるりとえんどう豆の縁は今も続いている。
震災から半年後の出会い。
相馬に来た事がないというくるりに二人は町がどんな状況にあるのかを話した。
地震と津波と原発事故。
当時この町にはいくつもの苦難が降りかかっていた。
森田さんもまた津波で多くのものを失った。
自宅近くのこの海岸はいつもの散歩道。
(取材者)森田さんちってどこなんですか?ここにあった森田さんの自宅は津波で流された。
家々が立ち並んでいたかつての風景はもうどこにもない。
この場所に来るとよみがえってしまう震災の記憶。
森田さんは好きだったこの浜から足が遠のくようになった。
そんな暗い気持ちを洗い流してくれる出来事が起こった。
秋田でのくるりのライブの時の事。
森田さんはいつものようにライブ会場でCDの販売をしていた。
ライブ終了後ボーカルの岸田さんから声をかけられる。

(「soma」)秋田から相馬への帰り道。
森田さんは何度も何度もこの歌を聴いた。
・「息子よ君はどこまでもどこまでも」日が昇る前気付くといつも散歩していた浜へと車を走らせていた。
それから3か月後の2012年9月「soma」が収録されたアルバムが発売される。
・「思い出はもう消えそうだよ」・「消えそうだよ」この歌はそれまでくるりを聴いた事のない人たちの心にも届いた。
時折店でこの歌を流している人がいる。
靴屋を営む…この歌を聴いた人たちが思い浮かべるという松川浦。
長い時間をかけてつくられた砂州のある美しい場所だった。
でもその面影はない。
松が生い茂った砂州は津波によって流されてしまった。
傷ついた町見えない未来。
町の人に再び未来を思い描くきっかけを与えてくれたのもこの歌だった。
松川浦が大好きでよく通っていた主婦の齋藤恵美子さん。
くるりのファンだった息子さんからあの歌が入ったCDをプレゼントされた齋藤さん。
その最初の歌詞にハッとさせられた。
・「思い出はもう消えそうだよ消えそうだよ青い空」
(郡)全体朝礼を行います。
(一同)はい。
(郡)おはようございます。
(一同)おはようございます。
郡さんもまたこの歌に励まされた一人。
はいどうぞいらっしゃいませ!スーパーで水産主任を務める郡さん。
原発事故直後は地元の港から船が出なくなりその影響を肌で感じてきた。
今は試験的に漁も行われ魚の量も種類も少しずつ増え始めた。
郡さんがこの歌に惹かれたのはある言葉。
かつての記憶を呼び起こし未来への思いを抱かせてくれたまちのうた。
この歌は人々のはざまに漂っていた重い空気を取り除いてくれた。
この歌が縁となってくるりと相馬の距離は更に近づいていく。
くるりはそれまで来た事がなかったこの町を訪ねる。
缶バッジを作っているえんどう豆にもやって来た。

(ギター)一人で訪れ歌う事もあった。
・「故郷の歌ブレーメン君が遺した歌」・「楽隊のメロディー照らす街の灯」・「夕暮れの影を」たびたび足を運び多くの人と出会い時には地元のスーパーで放射能検査を見て町の事を知っていった。
何度も通ってくれる事。
それが町にとって何よりの力となっていく。
(拍手)
(取材者)通う事で分かろうとしてるっていう…。
去年の11月くるりから森田さんのもとに電話がかかってきた。
電話から3日後相馬にやって来たくるりは町の人たちと一緒に撮影に臨んだ。
・じゃあ皆さんよろしくお願いいたします!・「いつまで経っても雪が止まないこの街のラプソディ」・「通り過ぎる人の波にのまれて家路を急ぐよ」・「溜め息凍る街を歩けば」・「merrychristmasforyou&happynewyear」クリスマスプレゼントを贈りたい相手は誰だろう。
そんな言葉からくるりが思い浮かべたのが相馬の人たちだった。
えんどう豆のみんなやスーパーで働く人たち。
くるりと町の人たちとの関係はますます深まっていった。
そして今年もくるりが町にやって来る。
ライブを前にえんどう豆の所長佐藤さんはあるものを作っていた。
くるりのライブのためののぼり。
ちょっと硬いね。
いっか。
佐藤さんはある思いを込めてのぼりを作っている。
ライブ当日の朝。
会場となるのは地元のスーパーが所有する蔵。
クリスマスソングの撮影が行われたあの場所だ。
準備のために一番最初にやって来たのは森田さん。
相馬にはライブハウスがない。
この場所に一から会場を作る。
この時森田さんはある事に気付いた。
偶然にもこの日はくるりがメジャーデビューをしてちょうど16周年の日だった。
すみませ〜ん。
よろしくお願いいたします。
失礼します。
はい。
今年も相馬にやって来たくるり。
被災地としてではないこの町の魅力と出会っている。
この日くるりの3人が店で目に留めたのは地元の祭り「野馬追」で使われる騎馬武者の衣装。
野馬追はこの町の人たちが大切にしている古くから伝わる神事だ。
・すごい。
ハハハッ!すごい。
・かっこいいっすね。
どうなってるのか…。
・自分で見てみたい?ハハハッ。
毎年祭りに参加している若旦那が衣装を着けてくれた。
似合いますよ。
マジすか?相馬に来るたびこの町を知り新たな知り合いが増えていく。
午後1時過ぎ会場に到着。
ライブに向けて準備が着々と進められていた。
あらこんにちは。
えんどう豆のみんなとは1年ぶりの再会。
ありがとうね。
こんにちは〜。
お久しぶりです〜。
久しぶり〜。
こんにちは〜!久しぶり!元気?元気?みんなから手渡されたのは缶バッジ。
くるりとライブに来たお客さんへのプレゼント。
元気やったの?アハハッ。
久しぶりやもんね。
(佐藤)ねえ久しぶりだね。
(佐藤)アハハッ泣かなくていいから。
泣いちゃっても〜。
なあ忙しいよなあ。
(岸田)写真撮ろか。
ほんまやほんまや。
・はい撮りま〜す。
はいチーズ。

(トランペット)
(取材者)待っててくれる。
うん。
午後6時。
(取材者)喜んでくれますかね皆さん。
ねえ。
あっプレゼントで〜す。
プレゼントで〜す。
あっありがとうございます。
「いざなう」という歌詞にこの町の未来を思った郡さん。
家族3人であの歌を聴きに来た。
チケットは完売。
若者もお年寄りもたくさんの人がライブを見にやって来た。
はいじゃいきますか。
(一同)はい!よろしくで〜す。
よろしくです。
(拍手)
(拍手)
(拍手)ありがとう。
(拍手)そして16周年のお祝い。
え〜っ何これ!わ〜!
(拍手)あ〜すごい!おめでとう!ありがとうございます!すご〜い!
(拍手)せ〜の…。
(拍手と歓声)いきますよ〜皆さんこちらです!3・2・1!もう1枚3・2・1!まちのうた「soma」。
歌がある限りこの物語は続いていく。
きちんとお座りしている犬のリリちゃん。
でもちょっと眠そう。
おっとっと…。
2015/03/14(土) 02:22〜03:05
NHK総合1・神戸
東北Z「まちのうた」[字]

日本を代表するロックバンド・くるりが作った歌「soma」。福島県の相馬・南相馬のことを歌ったうたに慰められ、励まされる人々の想いを見つめる。

詳細情報
番組内容
日本を代表するロックバンド・くるりが2年前に作った歌「soma」。その名の通り、福島県の相馬・南相馬のことを歌った曲だ。作詞作曲したのは、ボーカルの岸田繁。岸田が行ったこともなかった相馬のことを想像して書いた歌詞にも関わらず、相馬の人たちは今もこのうたに慰められ、励まされている。あの日から3年半、相馬の人たちと、この「まちのうた」の軌跡をたどる。
出演者
【ゲスト】くるり,【語り】瑛太

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
音楽 – 国内ロック・ポップス

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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