どうもありがとうございました。
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(出囃子)
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(柳家権太楼)よろしくおつきあいのほどを願っておこうという訳でございますけどもね。
「江戸っ子の生まれ損ない銭を貯め」なんてぇのがあるぐらいでございまして「宵越しの銭は持たねえ」なんてぇところを江戸っ子とされておりまして。
「どうしたんだよ?どうしたの?」。
「うん。
200ばかり余っちゃった」。
「ばかな野郎だな〜。
江戸っ子だろ?お前。
宵越しの銭持たねえってんだ江戸っ子はお前。
捨てりゃいいんだそんなものは」。
「捨てちゃうかい?江戸っ子だから」。
(笑い)「ピャ〜ッ。
捨てちゃった」。
「どうだい?お前気持ちいいだろ?」。
「気持ちいいよ江戸っ子だから」なんて朝一番で取りに行ったりなんかして。
ええ。
(笑い)「ちょいと遊びに行きてえな」。
「行きたいね〜。
行きてえけど銭が無えんだ」。
「なんとかなるよ。
どうにかなるよ。
向こうへ行きゃ」なんてんでね。
それがどうにかなったんだそうでございまして。
というのはね付け商売でございましたからね。
うん。
私の家なんかでもそうでしたよええ勝手の所でもってねええ御用聞きなんかが来て「付けときますよ」なんてね帳面にこうやってつけたりなんかして。
それを月末でもって支払うというふうな事を。
うん。
そういうふうなものが溜まり溜まってどうしても駄目だてぇのがね二月ばかりありますわ。
何時かってぇとお盆の月でございましてね。
うんこの時には半月でございますから半月の溜まった分を取ろうという訳でございますけどここでどうするかってぇとみんなお山に逃げるってぇ事がある訳でございましてね。
ええ。
「父は山母は家で言い訳し」なんていうふうな川柳がございますけれども。
「すみません家のねお山へ行っちゃってるんですわ。
分からないんでねちょいと勘弁して下さいな」なんてんでもって。
そりゃ「大山詣り」なんて落語にもあるぐらいで決して神信心で登ってる訳じゃない。
借金取りから逃げようってんでもってねお山へ行こうなんていうふうな事がある訳でございますんで。
もう一つはと申しますってぇと大晦日でございますんで。
まぁ今の大晦日とはまた全然違う当時のそういうものがあったんでございましょう。
「大晦日箱提灯は怖くなし」なんというふうな川柳がございますが。
箱提灯という物はお侍の持ってる提灯でございますから大変にまぁねふだんは怖い提灯でございますわ。
無礼打ちなんてのがありますけどもところがその日ばかりはねそんな物よりもうん掛け取りの持ってくる弓張り提灯のほうが怖かったというふうな事でもって「大晦日箱提灯は怖くなし」なんてぇのがあるぐらいでございますが。
「どこ行ってたんだ?お前さん」。
「どこってさブラブラッと」。
「ブラブラッっとじゃないやね本当にもう。
ええ?どうするつもりだったんだ?」。
「どうするったってさできねえんだからしょうがねえだろ銭がさ。
いやみんな忙しそうでね大晦日だなと思ってさ」。
「何言ってんだよ本当にのんきな事言ってさ。
借金取りがたくさん来てさお前さんいなくなっちゃってるからさええ?しょうがないからさ『夜分には間違いなくお届け致します』っつってねみんな追っ払っちゃったけどさ」。
「まずいよそりゃそりゃまずいよ」。
「何が?」。
「何がじゃねえやなそれを言うんならお前『夜分には出来ましたら間違いなくお届け致します』ってこうやって言わなきゃ駄目よ」。
「同じゃねえ」。
「同じじゃねえよ。
間に『出来ましたら』って言葉が入ってんだから」。
(笑い)「出来りゃ持ってく。
出来なきゃ持ってかねえ」。
「そうはいかないよ本当にまあ〜。
なんだね〜。
お前さん私の知らないとこで借金してるんだね。
ええ?どうするんだ?」。
「どうするったってしょうがねえだろうにさ。
首くくる訳にいかねえんだからさ。
ええ?」。
「こんばんはこんばんは」。
「来たよ。
黙ってろ。
返事しねえ。
黙ってろ」。
「こんばんは。
お忙しゅうござんす薪屋でござんす。
こんばんは。
お忙しゅうござんす」。
「どうなってんだ?この家はよ〜。
何遍足運ばせりゃ済むんだよ。
ここがあるから他所行けねえんだこっちはさ〜。
本当にもう。
居ねえのかな〜?ええ?エエ〜ッ。
あらっ?いらしたんですか?」。
「うん。
居たよ」。
「エエ〜ッあの〜今表でねお声かけたんでございますけどねいやご返事が無かったもんでね」。
「ええ。
そりゃ返事なんか無いよお前。
お前『お忙しゅうござんす』っつうんだもん。
俺ん家じゃねえなと思って」。
(笑い)「『お暇でござんす』っつわれりゃね俺ん家かなと思ってさ」。
「アハハハそりゃまぁお片づきになりまして結構なこってございまして」。
「結構でも何でもないよ薪屋さんそんな所に突っ立ってられたらさ寒くてしょうがねえだろ。
中へ入ってさそこ閉めてくんねえかな。
何だよ?」。
「何だよってあの〜お勘定」。
「くれるの?」。
「いえ」。
(笑い)「そうじゃねえんですよ頂きに来たんでございますよ」。
「あっそうか。
何だよ〜勘定取りに来たのか。
もう口の中でグジュグジュグジュグジュ言ってるからよ分からないじゃねえかさ。
ああ。
『貸したものを取りに来た』とそういう事か?」。
「ええええええええ左様でございます。
よろしくお願いします」。
「だからさな?貸したものを取りに来た。
こっちもね借りたもんなんざぁねそっくり返して新しい春を迎えようとこういうこった」。
「ええええええええよろしくお願いします」。
「いやだからさええ?貸したものを取りに来た借りたもんなんざぁ返そうここまではごく話は穏やかだ」。
(笑い)「無えんだ。
逆さに振っても鼻血も出ねえ。
サバサバしちゃってる。
だからね?しょうがねえね?アハッ無えんだからね?お帰り」。
「あのね〜無いから帰んなってねええ?子供の使いじゃねえんだよ。
ええ?今日はね普通の月と違うんだよええ?大晦日で大晦だ」。
「何の晦だって無えんだからしょうがねえじゃねえか。
お前だってねえんだろ?無理やり無え所からふんだくろうってさ〜。
そこまで図々しくねえ…」。
「おいおいおい。
何を言ってる親方。
ええ?商人が貸したもの取りに来るのは当たり前のこったこれさぁ。
ね?親方さ〜うん?これ…あのね『無えからしょうがねえ帰んな』『はいそうですか』って訳にいかねえよ。
ね?だからさ例えば『薪屋さんの前だけどすまねえ』と。
うん?『今年はもうどうする事もできねえんだ』と。
『春になったらいの一番で薪屋さん所へ持っていくから今日のとこは勘弁してくれ』とかさ何何…。
いやこれ嘘でもいいんだよ。
嘘でもいいんだけどさそうやって言ってくんねえかな。
じゃなかったらお前帰りにくいじゃねえかさ」。
「あ〜あ〜そうか。
あっじゃあ今のでいいや」。
「あっああ〜っ」。
(笑い)「何だ?その今のでいいや」。
「この野郎上がった」。
「上がるよ〜。
冗談じゃねえよ。
ええ?親方図々しいよ。
図々しすぎるよそれ。
ええ?『人間ふだんだ』ってけど全くじゃねえかさ〜。
この間往来で会ったでしょう?ええ?何だってこうやって他所向くの?こっちにねええ?借金があると思ったらうん?言葉の一つかけなくたっていいよ。
頭の一つくらい下げたって罰当たらねえでしょう?それ何だってこうやってそっぽ向くんですか?なんですか?私の所の勘定踏み倒そうってえの?いやそうしか思えねえでしょう?ええ?冗談じゃねえ本当。
あっこうなりゃしゃあねえ。
ええ?今日勘定もらうまではねここ動かねえからそのつもりでいてくれ。
こちとら江戸っ子だよ。
ええ?言い出したらからには5分だって後に引かねえお兄ぃさんだ。
エイッ勘定をもらうまではここを動かねえからそのつもりでいてくれ」。
「いいね江戸っ子だね。
『言い出したら5分だって後に引かねえお兄ぃさんだ』。
いいセリフだい。
因果と俺も同じような性分してんだ。
俺は言い出したらね5分どこじゃねえよ。
1分だって後に引かねえお兄ぃさんだ。
お前勘定もらうまでは動かねえっつったんだな?動くなよ。
俺もお前に勘定渡すまではお前動かさねえからそのつもりでいろ」。
「早くしろぃ」。
「早くしろって言い方無え」。
「いやじゃあ早くしておくれよ」。
「おくれよったってそうはいかねえよお前ええ?お前動かねえっつってんだろ?そこにジッとしてろぃ。
おっ嬶。
薪ざっぽ持ってこい。
いや。
ゴツゴツしてるほうがいいね。
いいから持ってこい」。
「何でぃ。
そんな物が怖えか!俺ん家来てみろ!束になってあらぁ」。
「当たり前だ。
お前の所薪屋なんだから。
これだって当たったら痛えよ。
ええ?お前勘定もらうまでは動かねえっつってんだからな動くなよ。
ちょっとでも動いたらねこれでもってお前の向こう脛かっ払う本当に。
見てろ!今ここにズラ〜ッと勘定並べてやるから」。
「早くしろぃ」。
「そうはいかねえっつってんだろさっきから。
ええ?今から俺が勘定集めようってんだからそうだねどう早く見積もっても三月?」。
(笑い)「三月かかるよ。
その間お前そこへ座ってろよ。
腹へったってしらねえよ。
俺の所はご覧のとおり貧乏なんだから炊き出しなんかできやしねえんだから。
まぁな餓死しちゃったらね知らねえ仲じゃねえからさ死骸だけは届ける」。
「そんなばかな冗談…」。
「あっこの野郎チョチョチョ…」。
「待った待っとくれ本当に」。
「何言ってんだこいつは。
ええ?お前はね図々しいよ。
図々しすぎるよ。
『人間ふだんだ』ってけど全くだよ。
この間往来でお前と会ったろう?何だってお前他所向く?」。
「嘘だ」。
(笑い)「嘘だよそりゃ親方…」。
「俺が向いたかどうか知らねえ。
よしんば俺が向いたにしたって何でグルッと回って俺の目の前へ立たねえんだお前。
いやがおうでも顔が合うだろ?『こいつには貸しがある』と思ったらええ?言葉の一つかけなくたっていいよ頭の一つ下げたって罰当たらねえだろ。
何だって他所向くんだよ。
お前はなにか?俺から勘定をもらわねえつもり…」。
「ななそんなそんなばかなそんな…」。
「この野郎また立ちやが…」。
「よせ。
本当にもうよしてくれよもう。
じゃあもういいよ〜。
ええ?じゃあもうもらったつもりで帰るから」。
「嫌だよ」。
「ええっ?」。
「嫌だよ。
俺つもりなんか大っ嫌えなんだ俺は」。
(笑い)「お前勘定もらうまでは動かねえっつうんだ。
動くなよ。
もっともなお前がどうしても帰りてえっつうんならよ帰りやすいようにして帰れ」。
「何だい?」。
「だからさ勘定をもらったとかもらわねえとかはっきり決めて帰れ」。
(笑い)「何だよ〜。
もらわねえってたらまた薪ざっぽ振り回そうってんだろうによ。
ま〜にゃ〜。
じゃあもういいやもう。
もらったよ」。
(笑い)「何を?」。
「何をって…勘定だよ」。
「いつ?」。
「いつ?今だよ」。
「どこで?」。
「どこで?この辺?」。
(笑い)「この辺で!もらった!」。
「この辺で?渡した?待ってくれよ。
俺頭悪くなっちゃったのかな?お前だってもらってねえのもらったってぇの嫌だもんな〜。
あ〜あげたな?」。
(笑い)「もらったな?」。
「どうでもいいよ」。
「オオ〜ッ?お前勘定もらったんだろう?商人は愛想が大切だお前。
『毎度ありがとうございます。
また来年もよろしくお願いします』ってニッコリ笑って帰れ本当に。
薪屋さん。
ええ?まだ受け取りもらってないよ」。
(笑い)「いや親方本気で言ってんの?」。
「当たり前だろうに勘定払ってんだお前に。
受け取り置いてけ」。
「ケッどうでもいい。
一軒潰したと思えば。
それっ」。
「おっこの野郎叩きつけやがってコンチクショーもう。
ええ?『金8円20銭右まさに受け取り申し候』。
薪屋さ〜ん。
このぐらいの勘定すぐ取りに来てくれよ〜。
俺だって忙しいんだからさ。
ええ?あっ駄目だこれ。
ええ?駄目だこれ。
ほら判が押してないもん。
判押して」。
「それ本気で言ってんの?」。
(笑い)「当たり前だろうにさ」。
「分かった。
コンチクショー。
判押しゃいいんだろ?判押しゃ。
本当に冗談じゃねえ。
勘定ももらわねえで受け取りに判押して。
ばかばかしくって他人に言えやしねえ。
こんな事してるんなら家でもって『紅白』見てるほうがいいや」。
(笑い)「ばかばかしい。
このごろの『紅白』も分からない団体ばっかり出てくるから…」。
(笑い)「誰が誰だか分からねえ。
昔ゃよかった。
出てくる団体だってダーク・ダックスとか…」。
(笑い)「こまどり姉妹だとかすぐに…」。
「何をお前グジュグジュグジュグジュ言ってんだ」。
「いいだろうによ本当…」。
「この野郎コンチクショー真っ赤になっちまった。
ウ〜ン?帰るのか?」。
「帰りますよ」。
「お前ね『帰りますよ』なんてね口とんがらせてね怖い顔してね誤魔化そうったってそうはいかねえよ?お前に渡したのは確か十円札だろう?」。
(笑い)「まだ釣りもらってねえ」。
「何言ってやんだコンチクショー」。
「帰っちゃった」。
「帰っちゃったじゃないよもう。
かわいそうだあんな事言ったら薪屋さんに」。
「しょうがねえもう。
ええ?いいよ春になったらさ〜『この間はどうもすみませんでした』っつってさ銭持ってきゃいいんだからさ。
ええ?」。
「だけどさまだまだ借金取りたくさん来るんだよ?どうするつもりなんだよ?」。
「どうするつもりったってさしょうがねえだろうにそんな事言ったってさ。
ええ?」。
「エエ〜借金の言い訳しましょうエエ〜借金の言い訳しましょう」。
「おっ嬶。
変な奴が表通るよ。
借金の言い訳するってさ」。
「駄目だよそんなのそんなばかな話は…」。
「聞いてごらんよ」。
「本当だね。
ええ?」。
「ちょいと言ってこいよ」。
「何つってさ?」。
「言い訳屋さんとか何とか言ってさ」。
「嫌だね貧乏したくないね」。
「言い訳屋さん言い訳屋さん」。
「お前さん。
来てもらったよ」。
「おうおうおうお〜寒い寒いから火にあたって火にあたって。
あの〜聞き間違いかもしれねえけどさ今何か借金の言い訳するってぇけど本当か?」。
「ええ。
左様でございます」。
「ホ〜ッどういうふうな事になってんだ?」。
「ええこれ時間でございまして1時間2円というふうな事になっておりまして。
いいえいいえお高いようでございますけどね決してお高い事はないんでございますよ。
ええ。
その間中にねどんな借金取りが来てもみんな私が追っ払っちゃうんでございまして。
そのかわりなんです1人も来なくてもこれは喧嘩にならないってぇ事になっておりまして」。
「そんな来ねえなんて事は無えんだよ。
ええ?でえれえ事になってるんだから。
じゃあ2両でいいのかい?あ〜分かった分かった。
ちょっと待ってくんねえ。
おうおうおっ嬶おっ嬶その辺包んでよなんとか番頭の所談じ込んでねええ?それ持ってって2両な。
いや早く支度してさ」。
「ハア〜大変でございますね。
じゃああの〜気持ちで1割を…」。
「いや。
いい。
そんな1割まけてもらったってどうする事もできねえんだ。
まぁまぁまぁそれでもっていいからさ。
できたかい?それ先生に渡してさどういうふうな事になってる?」。
「ええ受け取りは出しませんのでそのつもりで。
ええ。
で時間でございまして今この時間で。
ええ。
これから1時間というふうな事でございますんで。
ええ。
その間中は私がどんな事があっても万事引き受けるというふうな事になっておりまして。
それからおかみさんすみませんけどそこにえ〜煙草盆をこちらへ頂きたいと思いますんで。
ええ。
それからですね誠に申し訳ないんでございますがお二人がここに居られると仕事がやりにくいもんでございますんですみませんけど次の間は…。
無いですね。
お宅は一間ですね。
ええ。
それじゃすみませんけど押し入れへ入って頂きまして。
ええ。
あの〜なんでございます咳払い一つされても困るんでございましてええ。
そうして頂ければ大丈夫でございますんでね。
いや狭い所でしょうけどもしばらくの間でござい…。
まだ開けといてよろしゅうございますよ。
借金取りが来たらスッと閉めて頂きたいと思いますんで。
ええ大丈夫でございますんでね。
ええ。
まだ開けといてよろしゅうございます」。
「こんばんはこんばんは。
米屋でございますこんばんは」。
「こんばんは。
米屋でございます。
こんばんは」。
「あの〜米屋なんですけどおかみさんいらっしゃらないですか?昼間来たらあの〜夜分には間違いなくっつうんでズ〜ッとあの〜お待ちしてたんでございます。
いらっしゃらないもんで番頭さんが『お前行って勘定受け取ってこい』ってんで私が来たんです。
あの〜米屋なんですけどお勘定を受け取りに来たんでございますけど」。
「パッ」。
「アア〜ッ。
米…。
アア〜ッ。
米屋なんですけどあの〜お勘定…。
アア〜ッ」。
「お勘定を頂き…。
昼間来たら夜分には間違いなく…。
番頭さんが『お前がもらって…。
もらってくるまで帰って来るな』。
で私が来た。
あの〜米…。
ア〜アア〜ッ。
ア〜ッ怖い」。
(笑い)「米屋なんですけど」。
「ア〜アア〜ッ」。
(笑い)「米屋なんです。
お…。
アッア〜アア〜」。
「アア〜ッ。
ハ〜ハ〜ッまた来ます。
さいなら〜っ」。
「帰りました」。
「オ〜ッったね〜。
お前さん何か喋らねえんだね?」。
「睨み返した」。
「あっそう?いやいや何だか知らねえけどね最初にパ〜パ〜言ってるうちにさ黙りこくっちゃったからねどうしたのかと思ったらあっ睨み返しちゃうの?」。
「ええ。
左様でございますんで。
私に任せて頂ければ大丈夫でございますんで」。
「いや〜本当に。
いやいやすまねえ」。
「いやいや…」。
「こんばんはこんばんは」。
「お宅は随分借金ありますね。
そこ閉めて」。
「パッ」。
「え〜魚屋で〜。
さようなら〜」。
(笑い)「今の早かった」。
「ええ。
ああいう者は雑兵端武者でございますんでね何人来たって大丈夫でございます」。
「そんな事言うけどね先生ねええ?まだまだ手強いのがたくさん来るんで」。
「いやいやいえいえ私に任せて頂ければええ誰が来てもみんな変わった事はありません。
任せて頂ければ大丈夫でございますんで」。
(戸を叩く音のまね)「ごめんごめん」。
「パッ」。
(笑い)
(戸を叩く音のまね)「ごめん。
オ〜ッ。
間違えたかな?名札が無いね。
八五郎君宅だね?あ〜私は斎藤氏から依頼をされた者でな諏訪圭介と申す者だがな昼間来たところ細君によれば夜分には間違いなくと言うんでもって来たんだが細君は居らんようだな。
また亭主も居らんようだがな『誰が居なくても話はつけておく。
分かっている』と言っておったがなうん?君で話がつくのかな?うん?君で話が分かるのかと聞いておるのだよ!」。
「何だ?妙な顔しおって。
私に喧嘩を売ろうというのかね?ふざけるんではないよ〜っ!私はこう見えてもな刃の下を何度となくくぐり抜けてるんだ。
人の一人や二人殺しても何とも思っておらんのだ〜っ!」。
「ウッいやいやそう言ったらそう言ったら話が穏やかではないがな。
君はなにか?この家から依頼をされた者か?うん?そこはどうだ?ええ?お互いに依頼をされた同士膝とくだんごうというておる。
君もいいこの僕もいいというふうにそういうふうに話を…。
エエ〜イッ失礼だろう!私にばっかり話をさせて。
何とか言え〜っ!貴様〜っ。
バア〜ッ」。
「プウ〜ッ」。
「いやいやいや暴力はい…暴力はいかん。
ア〜ア〜誰も居らんようだから今日は今日はこのまま帰る。
ごめん」。
「帰りました」。
(笑い)「ヘエ〜ッ今のは手苦しかった。
こっちは手が傷んで。
ええ?」。
「いやいやちょいと歯応えがございましたかな。
あ〜15分ほど過ぎましたんでこの辺でもって…」。
「いや。
待ってくれ待ってくれ。
あと30分居てくれ。
ちょっとなんとか…。
おい嬶。
1両な何か都合つけて…。
あと30分居てくれねえと困る」。
「いや。
そうはいきません。
これから家へ帰って自分のを睨みます」。
(拍手)
(打ち出し太鼓)2015/03/14(土) 04:30〜05:00
NHK総合1・神戸
日本の話芸 落語「睨(にら)み返し」[解][字][再]
落語「睨(にら)み返し」▽柳家権太楼▽第666回東京落語会
詳細情報
番組内容
落語「睨(にら)み返し」▽柳家権太楼▽第666回東京落語会
出演者
【出演】柳家権太楼
ジャンル :
劇場/公演 – 落語・演芸
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
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