NHK映像ファイル あの人に会いたい「大佛次郎(作家)」 2015.03.14


(テーマ音楽)大正から昭和にわたり人気を集めた作家大佛次郎さん。
嵐寛寿郎主演の映画で知られる「鞍馬天狗」は代表作の一つです。
理不尽な事を嫌い弱い者を助けるヒーローとして老若男女から愛されました。
一方で自由を求めるフランス市民の闘いを描いた「パリ燃ゆ」などのノンフィクション作品でも知られます。
日本や海外の歴史をテーマにしながらもその視点は常に日本の今を意識していました。
大佛さんは明治30年横浜に生まれました。
早くから英語やフランス語に親しみ伸び伸びと育ちます。
将来は外交官にという父の希望に応え東京帝国大学政治学科へ進学しました。
大学時代大きな影響を受けたのがフランスの作家ロマン・ロランです。
その自由の精神に魅了された大佛さんはロランの小説を次々に翻訳し劇作家を志すようになります。
しかし25歳の時に関東大震災が起こります。
翻訳の作品を寄稿していた雑誌が廃刊になり収入の道を絶たれました。
生活に窮した大佛さんは翌年娯楽雑誌で大衆小説「怪傑鞍馬天狗」を書き始めます。
舞台は幕末。
神出鬼没の志士が正義を貫き民衆の味方をして活躍する物語です。
冷静に社会を見つめ弱者を守る鞍馬天狗の姿が人気となり作品はシリーズ化されていきました。
「鞍馬天狗」を書き続ける一方で大佛さんは昭和5年全く異なるジャンルの作品を発表します。
舞台は19世紀末のフランス。
実際に起きたユダヤ人の冤罪事件を詳細に描きました。
フランスの軍人ドレフュスがユダヤ人という理由で国粋主義者からスパイの罪を着せられた事件です。
大佛さんは海外の歴史的事件を通して当時日本を包んでいた軍国主義へ警鐘を鳴らします。
この翌年満州事変が勃発。
日本は長きにわたる戦争への道を歩み始めます。
次第に言論や思想の自由が奪われていく中でも大佛さんは社会へ向けてさまざまな形で慎重に警告を発し続けました。
昭和10年のコラムではトルコ人の目を借り外から見た日本というスタイルで書いています。
「日本のリベラリズムは生活的根拠が薄弱である。
闘争の経験すらないリベラリズムだから縁日の植木より根がもろい。
市民権といっても名ばかりなものである」。
戦後も書き続けた「鞍馬天狗」にも日本の社会を批評する大佛さんの目が受け継がれていきました。
例えば昭和22年の「新東京絵図」。
攘夷を唱えていた人々が維新後一変して文明開化を叫び始めた事を批判的に描きます。
そこには敗戦で価値観を一変した日本人への思いが重なっていました。
その後も多くの作品を書き続けた大佛さんは昭和39年文化勲章を受章します。
70歳を迎えた大佛さんは最後の仕事を始めます。
連載「天皇の世紀」。
日本の歴史を描く大作でした。
明治天皇から市民農民まで激動の時代を生きた人たちの姿に迫り日本の歴史と日本人の精神構造を描くという壮大な仕事でした。
膨大な資料をひもとき骨身を削って書き続けますが6年後病の中で連載は力尽きます。
2週間後「皆さんの幸福を祈ります」と記したのが絶筆となりました。
作家大佛次郎さん。
時代を見つめ今この国がいかにあるべきかと作品の中で問い続けた生涯でした。
2015/03/14(土) 05:40〜05:50
NHK総合1・神戸
NHK映像ファイル あの人に会いたい「大佛次郎(作家)」[字]

作家・大佛次郎(おさらぎじろう)。大正13年に発表した『鞍馬天狗』は人気を集め、40余年にわたり書き続けられた。希少な映像・音声とともに足跡をたどる。

詳細情報
番組内容
小説、ノンフィクション、批評など多岐にわたって活躍した作家・大佛次郎(おさらぎじろう)。大正13年に発表した『鞍馬天狗』は人気を集め、40余年にわたり書き続けられた。70歳を過ぎてから取り組んだ『天皇の世紀』は、幕末以降の日本人の歴史を振り返り、透徹した歴史認識と批評精神で、流されやすい日本の国民性に警鐘を鳴らした。大佛次郎の希少な映像、音声とともに足跡をたどる。
出演者
【出演】作家…大佛次郎,【語り】井上あさひ

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
ドキュメンタリー/教養 – インタビュー・討論
情報/ワイドショー – 芸能・ワイドショー

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:26814(0x68BE)

カテゴリー: 未分類 | 投稿日: | 投稿者: